ファッション用語化したY2Kの定義 Y2Kファッションとは? くわしく考察してみる【1】
昨年あたりから日本国内でも耳にする機会の増えたY2Kという言葉。シンプルなY2Kファッションの紹介は、トレンドファッションに少しでも興味があれば雑誌やらSNSで情報を仕入れているかなぁと思うのですが、そこそこ細かく、ながなが~と日本語で説明する文章があまり見当たらなかったので、あってもいいかなぁと思い、記事にしてみる試みです。
章立ては以下
Y2Kの言葉の由来
Y2Kで定義されるスタイルとは
Y2K≠2000sファッション?
リバイバルしたY2Kファッション(ネオY2K)
ファッションサイクルからトレンド予測
Y2Kの言葉の由来
一応説明しておくとYはYearで2kは2キロ=2000を意味してます。フォロワー数1万人を10K followersと表示したりするのと同じです。
Y2K=Year2000ということですね。
ここから多分普通のZ世代向けのトレンド記事なら、Y2Kファッションとは2000年前後、2000年代に流行したファッションのこと!になるんですが、もう少し遠回りします
この表記自体はここ数年で生まれたものではなくて、90年代に日本語では2000年問題、と呼ばれたコンピュータバグに関する用語として使用されてきました。このあたりは逆に90年代すでに物心ついてた世代は、そうだったな~、という感じかと。
90sリバイバルが広まった2010年代の後半から徐々に次の2000年代に目をむける文化的な動きが欧米では起きていました。話題になったトピックでいうと以下のようなものが。
・VETEMENTS 2017SS Pret-a-Porter (2016)
2000年代前半から半ばにかけて流行したJUICY COUTUREの象徴的なアイテム、ラインストーン装飾されたベロアのトラックスーツがコラボレーションアイテムで登場。ちなみに2016年当時はまだやや早かったのかこんな記事もありました。
・Charli XCX & Troye Sivan / 1999 (2018)
90年代後半のポップカルチャーを参照、パロディー化したMVで話題となった。サムネイルは映画「タイタニック」(1997)の象徴的なシーンのパロディー。ジャケットは映画「マトリックス」(1999)のパロディー。その他すべての参照元は以下の動画に。
・Charli XCX - 1999 (All 23 References to the '90s, Mtv TRL)
・Ariana Grande / thank u, next (2018)
過去のある世代以上にとっては懐かしいポップカルチャーをパロディーしたという構成は上記と共通しているが、こちらでは曲の趣旨に寄せて2000年代前半のティーン向け映画を参照。サムネイルは映画「ミーン・ガールズ」(2004)のパロディー。その他すべての参照元は以下の動画に。
・A guide to the movie references in Ariana Grande’s ‘thank u, next’ video
・Anne-Marie / 2002 (2018)
上記と同じ2018年では上半期とわりとはやい段階で公開された。サムネイルでは2000年代初めに流行したDiorのOblique jacquardモノグラムを使用したアイテムを身に着けている。MVだけでなく歌詞も1999~2003年頃のヒット曲を参照している。すべての参照元は以下の記事に。
・Anne-Marie on how Britney Spears, NSYNC, and Jay-Z inspired her summer anthem '2002'
そんな中でY2K Aesthetic Instituteが90年代後半から2000年前後にかけて特有の文化的特徴をY2Kと称しました。Y2Kという言葉をファッションを含めポップカルチャーやビジュアルコミュニケーションに関する用語として使用するここ数年の動きはここに端を発していると思います。検索エンジンで確認したところ、2019年以前はY2Kと調べても先程の2000年問題に関する記事しかほぼ引っかかりませんでした。
・Y2K Aesthetic Institute Twitter Tumblr
いつの時代もリバイバルファッションやレトロカルチャーを若者が率先して取り入れていくという繰り返しが起きます。それは現価値観のカウンター、オルタナティブな存在が常に次世代には新鮮、魅力的に移り、手本になるからなわけですが、この90年代後半〜2000年代前半のカルチャーへの回帰も欧米ではコロナ禍を通して大きく進展しました。SNSでの浸透を通して、この象徴的なスタイルムードを指し示す言葉としてインフルエンサーたちも自身のリバイバルレトロスタイルをY2Kとタグ付けするようになりました。
Y2Kで定義されるスタイルとは
上記のY2K Aesthetic Instituteで定義されている90年代後半から2000年初め頃のムード感の中で、Y2Kと認識されるスタイルの大きな軸は
・未来感
・VR(ゲームなどの仮想空間・3DCG)
・ダイバーシティ
この3つに集約されると思います。
90年代は主にテクノロジーの発展がトレンドと結びつき、さまざまな分野に影響を及ぼしていました。主にパーソナルコンピューターや通信デバイスなどの進化によって、デジタルな世界がより身近になりました。
またインターネットやゲームを通し、人々が年齢や性別、地位、人種などにとらわれず平等に、フラットに交流することが可能になりました。当時はダイバーシティとは呼ばなかったのかもですが、ムード感は現在のダイバーシティに似ているかと。
ドットコムバブルと呼ばれるIT産業の興隆という、そのような社会的背景から、90年代後半から特に、ファッションを含めたポップカルチャーの世界にも、未来的でデジタルなビジュアルが流行しました。そのようなビジュアルの影響下にある商業デザイン(プロダクト・グラフィック・内装・広告)、映像、建築、ファッション、音楽などをY2Kと定義しています。
・Y2K Aesthetic / CARI | Consumer Aesthetics Research Institute
・Y2K / Aesthetics Wiki
こういった特徴ゆえにもともとIT用語として使用されてきたY2Kという表記方法をスタイルの名称にとってきたんだな、と思います。
上記のような特徴がファッションの分野においてはどのように現れたかというと、以下のような特徴をあげれるかなと。
・クリーン・スリークなイメージ ←未来感
・アシッドカラー・つや消しシルバー ←未来感
・人工的な素材の多用(ナイロン、ラバー、メタリック、PVC、 シアー、フェイクファー、フェイクレザー等) ←未来感
・ミニマル、ユニセックス ←未来感・ダイバーシティ
・ユーティリティー、スポーティー ←未来感・ダイバーシティ
・アジア・中東・トライバルモチーフ ←ダイバーシティ
・ゲームキャラ・アバター風デザイン/ロゴ・キャラクター ←VR
・ハウス・ミュージック、レイヴカルチャー、クラバーなどの音楽やクィア由来のサイバーパンクファッション ←ダイバーシティ・VR
画像のように比較的穏健で広くマスに浸透したミニマルで未来的、スポーティーなスタイルと、ストリートカルチャーよりのカラフルでサイバーなスタイルに二分できると思います。ただどちらも断絶したスタイルではなくて、中間にあたるようなファッションも多かったようです(デザイナーズブランドやアーティストのMVスタイリングなど)。
しかし実際に現在Y2Kファッションとして提示されているものとは少し趣が異なっているように感じるかと。それについて、【2】の記事でくわしく書けたらなぁと思っています。
ヘッダ画像:TLC / No Scrubs (1999) ミュージックビデオより
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