しるてっく (書き手:くさなぎ)
【くさなぎ】が【しるてっく】を紹介します。
―――――――――――――――
この「しるてっく」とは如何様なものか。会社名か? 新しい電化製品か?
なんにせよ、複雑な電子部品のような匂いがする!
ひらがなで誤魔化したって無駄だ!
面倒くさそうな匂いがプンプンしているではないか!
名前1つでそこまで思われたあなたは安心して良い。諸葛亮もかくやと思われる、非常に鋭い読みである。しかし他方で、丸みを帯びたひらがなの羅列にまかり間違って思わず″カワイイ″などと思った諸君は、海より深く反省していただきたい。ものは見た目ではないのだ、ということをよく知るべきだ。私も、諸君も。
前置きが長くなってしまった。「しるてっく」なる人物を紹介しよう。
彼は爽やかであった。
朝方のまだ湿り気の抜けない冷たい風のように、吸い込むと胸の隅々にまで行き渡り、浄化され、私のような下賤なものは体ごと溶けてなくなってしまうのではないかというほどに、爽やかであった。そしてそこにはいつも、気配り、態度、言葉、どれをとってもイギリス貴族が裸足で逃げ出す優美さを伴う。
が、しかし、彼を爽やかなだけと思ってはいけない。ただの優男と片付ける勿かれ。少々でも場を共にした者になら分かるだろうが、その軽やかな爽やかさと優美さの中には、古き良き近代日本の匂いを濃く漂わせた誠実さがあるのだ。彼の文学を目にした者は「大正浪漫が服を着て歩いている」と異口同音に感嘆する。試しにこちらを読んでいただければ、諸君らにも分かっていただけるだろう。
さて、物書き仲間の紹介としては彼のこうした類まれな活躍の話で締めくくるのが正しいのであろうが、諸君らにはもう少し私の愚痴にお付き合いいただきたい。冒頭でも一言申し上げたが、彼の爽やかさの裏には、もう一つ大事な要素が隠れている。
暴挙と呼ばずして何と呼ぼう。
いつも、それは愛ゆえに行われた。
そう、彼はライトとオーディオの虜であった。
彼のライト自慢を聞いた者は皆一様に「ああ、はじまった」と目を伏せ、有り余るオーディオ愛の餌食となった者は、ひたすらに、その叱咤を受け入れるしかない。それなのに、いったいどうしたことだろう。いずれの反応を耳にした場合も、彼は嬉々として話を続けるではないか! これでは対処のしようがない。我々に為す術はないのか。
そして今日も、Lightでないライトの話が始まるのだ。
「ようし、じゃあ、ライトの話するぞお!」
―――――――――――――――
(紹介した人:くさなぎ)