【短編小説】ゴミの丘-Garbage hills- エピソード3
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毎月1日は小説の日という事で、
12月も投稿いたします。
本日はゴミの丘の続編となります。
1話完結ですので、
この回だけでも楽しんでいただけます。
今回もプロットレベルの小説となりますが、
お楽しみいただければ幸いです。
本日は約6000文字です。
お時間のある時にお読みください。
今までのお話は以下記載しました。
お読みいただけるとうれしいです。
ちょっと誤字だらけで読み難いです。
ご容赦ください。
エピソード1
エピソード2
決死の思いで4000km離れた日本を往復し、
無事にケイトの命を救ったクリス達が、
ゴミの丘に結成した医療チーム。
ドクターミールを中心にゴミの丘の人達の、
命を繋いでいたのですが、
クリスとケイトの心にだんだんと隙間が開いて
しまうのでした。
ゴミの丘で生きる事の意味、決意。
それは、いずれ訪れる私達の未来であり、
私達が選択しなければならない事実なのかも
しれませんね。
さて、
エピソード3ではどんな話になるのやら、
どうぞお楽しみくださいませ。
ゴミの丘-Garbage hills エピソード3
プロログ
2030年
カーボンニュートラルのターニングポイント
となる、2013年比45%削減目標すら、
達成できなかった人類が、
くだした結論は。
地球の破棄と工場化、
人類は宇宙への移住に、
その頭脳とエネルギーを費やす事にした。
人類は、NASAの調査から、
火星に第二の地球を創るべく動いていた。
国連は、国境や国家権力をはく奪し、
フラットなルールを決め、
各国の協力を仰いだ。
反対する国、反対勢力もあったが、
すでに体力も財力の限界に達し、
生きていくためには、
国連の言いなりにならざるをえなかった。
それは一部の国家権力を握っている人や、
富裕層を救うための結論でしかなかった。
国連により、
火星移住において厳しいルールが
決められた。
国連が建てたCO2フリーの家に住む事。
食材も、自動で配達され、
容器回収やゴミ収集も自動の、
パイプラインが整備されていた。
排出物はすべて、食物工場の肥料となり、
移動は全自動運転の、
電動ビークルを使う事だった。
不自由はあるが、
完全循環型経済圏が形成され、
快適な生活が送れる場となるよう
設計、計画されていた。
2030年から、
実験的に第一次移住が始まったが、
火星行のシャトルに乗る事ができるのは、
一次移住に選別された、富裕層だけだった。
そして、地球では2030年から
年号もカレンダーも時間も、無くなった。
残された者たちは、
火星へ移住する人類のための物資や、
シャトルを作製するための工場に雇われ、
シャトルを生産するラインでは、
人力による組立が行われていた。
奴隷制度とまではいかないが、
強制的な労働を強いられていた。
しかし、
国連に近い場所で働くことによって、
いつか自分も火星への移住を夢見て、
残された者たちは必死で働いていた。
クリス達一部の人間は、
そんな国連のやり方に異議を唱え、
ゴミの丘と言われる地域に住み着いていた。
ここは2030年までに出されたゴミ
今でも工場から出し続けられている
ゴミの山だった。
それでもクリス達が生きていられるのは、
ゴミの丘で暮らす事の容認と
ゴミの丘から産出される希少金属や資源を
国連政府が買い取り、
代わりに生きていくための、
物資と交換してもらえるからだった。
黒服の男たちの幻想
ドクターミールの医療チームは
毎日忙しく動いていた。
ゴミの丘の住人達は、
ドクターミールに協力し、
必要な物資を届けていた。
その代わりに、病気や怪我を
診てもらえる事になっていた。
地下の診療施設には、ベッドが20脚程あり
そのほとんどが、子供達で埋まっていた。
患者数が増えれば
薬のストックは減っていく。
クリスが持ち帰った日本の資料を基に
361か所のツボに電流を流す方式を、
使いたかったが、子供での実績が無く
命の危険があるため、
この治療を使うのにはためらいがあった。
一方で、
大人への治療はケイトの例のように、
皆回復の兆しがあった。
これは新種のウイルスだけではなく、
様々な病気に応用できた。
東洋医学の知識があり、
鍼灸師の息子であるドクターミールだから
できる技術とも言えた。
ただ、栄養が足りず衰弱していく命は、
救う事はできなかった。
日に何人もの大人と子供は、
この世を去っていった。
火星への発着場は
日増しにその便数が
増えているように思えた。
今日も一台シャトルが飛んでいった。
クリスはそんな光景を眺めながら
日本に発つ前に会った、
黒服の男たちの事を考えていた。
父である木村マイヤー博士は
マイクロプラスチックの研究をしていた。
その研究は海洋汚染を除去できるほどの
研究であったが、実現化はしていなかった。
彼らはこの研究を成功させ、
利益をえたいのか?
彼らの企みは謎のままだった。
クリスが息子であると告げれば、
このゴミの山から抜け出す事はできる。
彼らに頼めば、
恋人のケイトやドクターミールも、
一緒に火星に連れていって
もらえるかもしれない。
ただ、父である木村マイヤー博士の研究は
引き継ぐ事になる。
クリスはそんな事を考えながら、ゴミを拾い、
3日に一度くる回収車と物資の販売車の
往復をしながら、もやもやした気持ちを
抱えていた。
体内に埋め込まれていた。
GPSの機能は停止している。
日本に発つ前に、
クリスが高圧電流で焼き切ったからだ。
後悔はしていないが、結果的に、
黒服の男たちは、
まだクリスを見つけられていない。
「何か迷っているの?」
ケイトはクリスに聞いた。
「一生このまま、ここで暮らす事に、
少し迷いはあるよ」
クリスは正直にケイトにぶつけた。
ケイトは悲しそうな眼をして黙っている。
やがて・・
「貴方には知識も技術も行動力もあるは
あなたの居る場所は、
ここではないのかもしれない。
私の事は気にしなくていいから
あなたの人生を生きて」
そういうと、
ゴミの山を一人で下っていった。
クリスはケイトの言葉に少し
ショックだった。
立ち去るケイトの背中に
かける言葉を失っていた。
ただ、ケイトの言葉には正しさがあった。
しかし、ケイトの気持ちや本心は
垣間見ることができなかった。
一緒に生きたいのか?
相手の幸せを一番に思うのか?
この選択は大きな問題であると
クリスは思っていた。
ごみの山にも
偵察ドローンが飛ぶようになっていた。
クリスはドローンに補足されないように、
バンダナで深く口元を覆った。
それは自分の気持ちを、
ごまかしているかのようにも思えた。
ドクターミールの秘密
「やぁクリス」
ドクターミールの診療所の
手伝いがひと段落した頃に声をかけられた。
ドクターミールは相変わらず小太りで、
ニコニコしている。
笑っていなければ、
やっていられないのかもしれない。
そんなふうにクリスは思った。
「いっぱいやらないか」
ドクターミールが手にしていたのは、
ジャックダニエルだった。
「ドクター、いったい、いつのお酒だい」
「まぁそういうなよ、まだ飲めるさ
未開封だしな、100年は経っていないよ」
そう言うと、
グラスにジャックダニエルを注いだ。
二人は無言でグラスを合わせた。
集中治療室的に使っている部屋で
ベッドに二人は並んでこしかけていた。
「ケイトと喧嘩でもしたのか?」
ドクターミールは、
心配そうにダニエルを見ながら、
ジャックダニエルをグラスから飲んだ。
クリスも、一口ジャックダニエルを飲んだ。
ストレートバーボンが、
喉から胃にかけて焼け付くように、
流れていった。
ドクターミールは
また一口ジャックダニエルを飲んだ。
何か言いたそうだが、じっと考えている。
沈黙が5分続いた。
ドクターミールは
ダニエルのほうへ顔を向けた。
「私は華僑でね、
祖国には好きな女性が居たんだ。
彼女はもちろん火星にいく道を選んだ。
私の父は鍼灸師だったが、
財閥である彼女の家に気に入られていてね。
そんな事もあり、彼女の家には良く遊びに
いったものさ。
必然的に彼女と私は恋に落ち、
彼女とはよくデートしたものさ。
そして、私が大学病院の医者になれたのも
彼女の父親の口利きでね。
そんなこともあって、
火星行きのパスポートは容易く手に入った。
火星でも医者は必要だろうという事でね。
私は悩んだんだ、好きな女性を取るべきか?
ただ、私が医者になったのは、
多くの人の命を救いたいと
思ったからなんだと気がついたのさ。
私は彼女が火星に立つ日、
このゴミの丘にやってきた。」
ドクターミールは、
ジャックダニエルを一口、二口飲み、
グラスを空にした。
もう一度ジャックダニエルの瓶から、
自分のグラスに注いだ。
「実はね、もう忘れ去られてしまった
クリスマスイブは彼女の誕生日でもあり
命日でもあるんだ。
火星にわたって最初のイブに、
彼女は宇宙放射線にやられて死んだんだ。
私があの時彼女を止めていたら、
もしも私が傍にいたら?
彼女は助かっていたのかもしれない。
たらればだがね・・
ただ、時々どうにも悔しくて、
責念の想いに駆られて、
たまらなくなるんだよ」
ドクターミールは、
また一気にジャックダニエルを飲み干した。
その眼には涙が光っていた。
「クリス、おまえには
後悔をしてほしくないんだ。
彼女のために、往復8000キロの海を渡り、
彼女のために命をかけられる。
そんな君が私は眩しくてしかたないんだ。
だからこそ、クリス、君には
後悔してほしくないんだよ」
そう言って一人診察室のほうへ消えいった。
クリスマスを知らない子供達
ゴミの山で暮らす子供たちは、
クリスマスを知らなかった。
もう何年もこの時代では、
クリスマスは行われていない。
カレンダーも年号も無いこの時代に、
いつがクリスマスなんて表示もない。
クリスも子供の頃のかすかな記憶しか、
残っていなかった。
ドクターミールの病室で、
飾り付けが行われたいた。
子供たちとクリスマス会をやる
予定になっていた。
ドクターミールが、
どこからか、もみの木を調達してきた。
背丈は小さいが、
立派なクリスマスツリーになる。
「これはどこから?」
クリスの問いかけに
「秘密だよ」
そう言って笑った。
もしかすると、
ドクターミールのバックには、
とんでもない組織があるのかもしれない。
日本へ行くための電動ヨットも
3日で用意できたくらいだ。
彼にはまだ秘密が多いとクリスは思った。
けれど、
彼が多くの命を助けたいと思う気持ちに、
代わりはないという事は、
子供たちと接する姿で分かっていた。
クリスは飾り付けをしながら、
自分はどうしたいのか考えていた。
科学者としての道もあるかもしれない。
ゴミの丘でケイトとドクターミールと
助け合いながら
生きていく道もあるかもしれない。
ひさしぶりにケイトが病室に顔を出した。
子供たちの顔を見ては、
話せる子にははなしかけ、
時には笑い声も聞こえた。
「やぁケイト」
クリスは声をかけた。
ケイトは少しわだかまりがある表情をした。
何か言いたげだったが、挨拶だけして、
クリスをスルーした。
「明後日の夜 病室でクリスマス会を開くから
来てくれなか」
そういうクリスに
ケイトは黙って立ち去った。
クリスはゴミの山で、LEDを探していた。
クリスマスツリーに飾るためだ。
せめて明るいツリーにしたいと思った。
ゴミの山からなんとか
100個ほどのLEDをかき集め、
それを線でつないでツリーにかけた。
ドクターミールが見守る中
クリスはスイッチを入れた。
50センチ程のクリスマスツリーに
灯りが灯った。
動ける子供たちはみなツリーによってきて、
「綺麗」
とつぶやいた。
寝たきりの子供達も顔だけ動かして、
ツリーの明るさを感じているようだった。
この病室は地下にある。
公安に見つからないために、
灯りがもれないようになっている。
もっとも、
電気がふんだんにあるわけではない。
鏡を駆使して作った、
光のパイプが幾つか室内を、
照らしているだけだった。
そして今は夜。
当然真っ暗だが、
その中にツリーの電飾だけが、
鮮やかに光っていた。
今日死ぬかもしれない、
明日死ぬかもしれない子供たちの記憶に、
少しでも灯りがともればそれでいい。
クリスは、笑顔の子供たちを見て、
そう思った。
クリスマス会は少し豪華な食事になった。
3日に1度来る、
廃品回収と売店を兼ねた政府の
移動販売車から、
ミネラルウォーターとビスケットを仕入れた。
この車は各地のゴミの山を
回っているのだろう。
普段はないビスケットなども売っていた。
病室に戻ると、子供たちの親も集まっていた。
中には親のいない子、
病気にかかっていない子も、
最後の飾りつけを手伝ってくれていた。
センターテーブルに飾られた
クリスマスツリーの周りに、
料理やビスケット、
ミネラルウォーターが置かれていた。
ケーキもジュースもないが、
ドクターミールが用意した、
唐揚げ風の塊もあった。
「ドクターあれは?」
ドクターミールはにこりとして
「もちろん唐揚げさ、
ターキーじゃないけどね
クリスマスは鳥だろ」
そう言ってかん高く笑った。
ドクターミールの笑顔が、
どれほどの救いになるのか、
クリスは知っていた。
子供たちは初めてのクリスマスに
目を輝かせていた。
ベッドで寝たきりの子たちには、
手伝ってくれた親や元気な子供たちが
料理や水を運んだ。
ここには助け合いと、思いやりが
あるように思えた。
「パーティーやってよかったな」
ドクターミールがつぶやいた。
薄暗い病室の隅では、
ケイトがたたずんでいた。
ケイトもベッドで寝たきりの子供達に
料理や水を運んでいるのをクリスは見ていた。
ドクターミールが肘でクリスをつつき、
行ってやれと言っていた。
「やぁケイト、少し話をしてもいいかな」
ケイトは黙ってうなづいた。
クリスとケイトは病室を出て、
1階のドクターミールの事務所に居た。
キャンドルには火がともされていた。
ドクターミールが
気を利かせてくれたのかもしれない。
クリスはケイトの目をじっと見た。
そして話し始めた。
「ケイト、聞いてほしい。
僕は君と離れて暮らす事はできない。
あれから色々考えた。
けれど火星に幸せがあるのか?
二人の幸せは何処にあるのか?
そして分かったよ、幸せは創るものだと、
今日の子供たちの笑顔を見て確信した。
幸せは創るものだと。
だから場所なんか関係ない。
ケイト、僕は地球に住み続けたい。
太陽が昇ったのかすらわからない
この地球で、君と幸せを創りたい。
現状を変えられるかわからない。
けれど、この汚染された地球で、
科学者として、
ゴミの丘で僕はもがいてみたい。
できれば、君と二人でもがいてみたい。
ケイト、
どうか僕のパートナーになってほしい。
ケイト、・・僕と結婚してくれないか」
クリスはケイトの手を取って、
真剣に話した。
指輪などはもちろんない、
気の利いたプレゼントなども無い。
けれどクリスの気持ちには、
何よりも代えがたい大きな想いがあった。
ケイトの瞳から涙があふれていた。
答えの代わりに、ケイトはクリスに抱き着き、
口づけをした。
それは永遠の愛を誓う時のように。
熱く、神聖な口づけに思えた。
そしてそれは、二人の長く苦しい道のりの
始まりでもあり、
幸せの積み木のひとつ目でもあった。
「メリークリスマス」
おわり
編集後記
なんか今回のテーマ曲はこんな感じかな。
2100年も2200年も今と同じように、
クリスマスは来るのだろうか?
もう生きてはいないだろう自分に、
そう聞いてみたくなる。
地球上のみんなは、
みな元気にしているかいって・・
「地球に住み続けたい」を
ミッションにしている会社がある。
私は彼らの思いに心をどろされている。
何かできることはないか
自分は何ができるのかと?
2100年、2200年、
地球を子供たちに返すために。
そんな事を考えながら、
今回もプロット的な小説を
書き綴ってみました。
いつもの言い訳・・今回も時間が
とれませんでした。(笑)
誤字脱字沢山あります。ご容赦を。
もっともっと書きたい事
書き加えたい事があったのですけどね。
まぁ会社勤め辞めないと、自由な時間は、
取れないかもしれないし、
時間があれば、
緻密な小説を書けるわけでもないと、
2年間小説を書き綴ってきて
感じているしだいです。
今回は12月だったので、
なんとか皆さんに幸せな
メリークリスマスをお伝えしたくて、
書いてみました。
「子供たちに地球を返す」
そういう気持ちでないと、
環境問題は、
なかなか進展しないのかもしれませんね。
現実的に日本は出生率が落ちていますから
「子供達へ」なんて枕言葉には
ピンと来ない人も多いのかもしれません。
現に、未来の地球で暮らす子供が心配だし、
責任持てないから、子供は作らないという
思想の方もいますからね。
人の考えには賛否あります。
ただ、私は
「地球に住み続けたい」
「子供たちに地球を返す」
この言葉がしっくりくるのですよね。
本日もつたない小説を
最後まで読んでいただき、
ありがとうございます。
皆様に感謝いたします。