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【短編小説】Close To You~そばに居させて~

#Close_To_You #短編小説 #出会いと別れ #卒業 #新入社員 #桜 #ピアノ #弾き語り #ピアノバー #お酒 #カクテル #ミモザ #Fujii_Kaze

春ですね・・
皆さんの所ではもう桜は咲きました?
それとももう散ってしまいました?
私の住む所では、
そろそろ満開に近づいていますかね?

さて毎月1日は小説の日という事で、
短編小説をお送りしています。
最近のお気に入りは、何気なく流れてきた歌に
即興で物語を作っていくやり方です。
今日は土曜日ですから、心の余裕があり、
即興の短編恋愛物語をお楽しみください。

本日は約2,000文字です。
時間の有る時にお楽しみください。
そうですね。。この曲でも聞きながら

Close To You
    ~そばに居させて~

彼と大喧嘩をした。
最後の晩餐のつもりはなかったが、
結局失われた信頼を、
私自身が取り戻せない事に気が付いた。
<きっとまた、
 私以外の女性と関係を持つにちがいない>

そんな思いが頭の中をめぐっていた。
それでも彼が私を振るなんて
思っていなかった。
結局、どんなだらしない男でも
私は彼を好きだったという証に、
私はひどく落ち込んでいた。
<バカな女ね>
もう一人の私が頭の中で追い打ちをかけた。
今日は最後の晩餐になってしまった。

表通りをいつものように歩いていた。
今日の足取りはひどく重かった。
いつもは食事のあと二人で帰る道だった。

<人生を変えるには、いつもと違う道を通ると
 新しい発見、新しい見方ができるもんさ>

ふとそんな言葉を思い出していた。
<今日は今まで通った事がない道を
 通って帰ろう>

そう思って、
表通りから1本入った裏通りを歩き始めた。
普段はあまり通らない道。
表通りよりはいくぶん暗い通りだが、
所々お店の灯りと、街灯が入り乱れていた。

<あれ、
 こんな所にピアノバーなんてあったかしら>

私は心の中でつぶやいた。
今日は人生で最悪の日だ。
けれど、自暴自棄になっているわけでもない。
単純に1杯飲んで帰りたい気分に、
襲われていた。

私はピアノバーの重い扉を開けた。
ドアは二重になっているようだった。
もう一枚ある奥の扉を開けると、
そこにはグランドピアノが置いてあった。
カウンター席とテーブルが5つ程ある
こぎれいな店だった。
今はテーブルにカップルらしいお客が
二組座っていた。

「いらっしゃいませ」
カウンターから、
マスターらしい男性が声をかけてきた。
「おひとりですか?お待ち合わせですか?」
そう声を掛けられた。
この店で、
待ち合わせるお客もいるのかもしれない。
女性が一人で入る店では、
ないのかもしれないと思った。

私は
「ひとりです」
そう小さな声で言った。

マスターは
「カウンターへどうぞ」
そう言って、カウンターの真ん中の席へ案内してくれた。

私はカウンターについた。
メニューらしいものは見当たらなかった。
そういうスタイルの店なのかもしれない。
「何かお作りしますか」
そういうマスターに、私が迷っていると
「今日はどんな感じの飲み物を、
 ご希望でしょうか」

そう聞いてくれた。
私は
「ちょっと頭をスッキリさせたい気分かな」
そう言うと
「ではお任せでよろしいですね」
そういった。
私はバーの雰囲気から、
ぼったくりの店ではないと思い、
静かにうなづいた。

カウンターにフルートグラスが置かれた。
「デコポンのミモザです」
私がキョトンとしていたのだろう
マスターが説明してくれた
「シャンパンとデコポンの
 オレンジジュース割です。
 世界一贅沢なオレンジジュース
 だとも言われていますよ。
 今日はデコポンが入荷しているので、
 そちらでお作りしました。」

そう言うと付け合わせなのか
小石のチョコレートも添えてくれた。
「ごゆっくりどうぞ」

私はフルートグラスに手をかけ
一口飲んだ
「美味しい」
私の顔を見て安心したのか、
マスターは私の前からいなくなった。

バーの照明が少し落とされた。
私がカウンターから振り向くと、
ピアノにスポットライトが当たっていた。
そこには一人の男性が静かに座っていた。
顔は良くわからなかったが、
スタイルの良い男性のように見えた。

やがてピアノから
Close To Youのイントロが流れ出した。
テーブル席の客は食い入るように、
男性を見ていた。
彼が目当てで来ている客なのかもしれない。

やがて男性が歌い出した。
弾き語りらしい。
男性の甘い声が、
私のささくれた心を癒していくように、
入り込んできた。
ミモザのほろ酔い加減も加わって、
私はいつの間にか、
男性から目が離せなくなった。

男性が歌うClose To Youがまるで私に
<ずっとそばに居させて>
とささやいているように聞こえた。
<もう一度恋をする事は自由だよと>
私の天使がささやく声が聞こえたようだった。

おわり

編集後記

春は別れと出会いの季節ですね。
こんなロマンチックな話は
そう転がっているわけではありませんけど。
春は心うきうき恋の季節でしょうかね?
皆さんの所にも新入社員が入社しましたか?

人は落ちた瞬間でも変われる事ができる。
それは素晴らしい事だと思います。
そして、いつまでも今にこだわらない事です。
今はこの瞬間に入れ替わり
もう過去になっていきます。
だから、未来に何が待っているか
ワクワクドキドキなんです。
過去に引きずられず
まっすぐ前を向いて生きていきましょうね。

本日も最後まで長文にお付き合いいただき、
ありがとうござます。
皆様に感謝いたします。

サポートいただいた方へ、いつもありがとうございます。あなたが幸せになるよう最大限の応援をさせていただきます。