
「宮崎駿の雑想ノート」を知った頃
映画「魔女の宅急便」公開の後の頃である。確か映画「ライトスタッフ」をテレビでやっていて、一番最後に出てくる銀色のジェット機、あれプラモデルあるのかなあ。とか、そういえば映画「ブルーサンダー」のヘリコプターってプラモデルあるのかなあ。などと思いつつ手に取ったのが、モデルグラフィックス誌の1990年1月号だった。
そこにはモデラーの方と宮崎駿氏の対談が出ていて、「魔女の宅急便」冒頭に出てきたハンドレページHP42/45の古いキットの作例が載っていた。自分も図鑑で見てこの飛行機を知ってはいたが、「こんなプラモデルがねぇ」と思ったものだった。
この本で「宮崎駿の雑想ノート」を知ったのである。タイトルは「ロンドン上空1918 つづき」。内容は犬の国に爆撃を行う豚の話だった。豚の方は欠陥ある巨人機を直し直し飛んでいる。犬の国にはタワーブリッジがある。「名探偵ホームズ」の世界である。
続く2月号にもやはり宮崎氏との対談が出ており、今度は第二次大戦下のフランスの飛行機の模型の話だった。
海外のガレージキットがよく分からない時代の話である。「デュラーヌ」なのか「デュラン」なのか名前も不明。後部座席の機銃からの見通しだけは素晴らしい構造だった。
上翼配置の主翼を持ち、尾翼が大きい串型翼と呼ばれる機体であった。「風の谷のナウシカ」に出てくるコルベットも串型翼である。
後になってこれはアーセナル・デランヌという名前だと分かっている。英国のウエストランド・ライサンダー・デランヌを見ると、これがよく似ている。同じ設計者ではないか?
宮崎氏は、戦争中に作っていて、作った人はそのまま乗って亡命しちゃったような飛行機じゃないですかねとか言っていた気がする。
対談中、宮崎氏は「飛ぶシラミ」号とシュドエストSE100(名前は出てこない)のイラストを何も見ないでさらさらと、動画用紙に描いている。

この号に載った「雑想ノート」は「最貧前線」。おんぼろの漁船の乗組員が、やっつけ仕事の兵器で米軍のB-24に一矢報いる話だった。
宮崎駿氏が航空機に詳しいというのは、薄々知っていた話である。「風の谷のナウシカ」のバカガラスはドイツのギガントという輸送機に似ていた。「天空の城ラピュタ」には人類がずっと追い求めている羽ばたき翼機が登場する。
宮崎氏の飛行機好きは「カリオストロの城」のオートジャイロ、「未来少年コナン」のファルコやギガントを見ても感じる。「死の翼アルバトロス」でルパン達が乗り込んだ小型機はイタリアのマッキMC200「サエッタ」ではないかと思う。
この「雑想ノート」を知り、宮崎氏の飛行機好きを再確認したタイミングで、ポルコ・ロッソの大活躍する飛行艇時代三部作が始まるのである。
この作品がアニメ映画になり、そこにも、ヤラれ役やワンカットだけのちょい役を含め、数多くの魅力的な航空機が登場するのだが(ラスト近くのフィオが乗っている小型ジェット機なんかたまらない)、それはまだ先の話である。
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