アニメ思い出し語り 33 とんでも戦士ムテキング
タツノコ作品のバイザーの向こうの素顔は、作品世界の人物には見えない設定らしいと聞いた事がある。
大抵はここが(ガッチャマンのように)色付きの透明であったが、「ムテキング」では完全に素顔が見えなかった。
その「とんでも戦士ムテキング」、1980年の作品である。
この場合の「とんでも」は「作り手の考えるのと別の視点からみて楽しめる」という意味ではない。
主人公リンはウォークマンとローラースケートをいつも身につけているヨンフランシスコ在住の少年。ある日その家の隣に、丸型UFOのホットケソーサーに乗ったタコ星の保安官見習い、タコローがやってくる。
タコベーダーの書かれたタコジキを研究している学者であるパパ(cv田の中勇 目玉親父!)はすぐにタコローを理解、協力者となる。パパもやっぱりヘッドホンを装着しているのは似た者親子か。
ママは警察署長だが、イージーライダー的なバイクに乗って現場捜査の先頭にも立つ。リンの兄のサニーも刑事だが絵に描いたようなドジ。他に家族はパパの友達の娘で同居している妹キャラのミッチー、変わった犬のヌーポン、名前は分からないがお手伝いのおばさんがいる。
この辺り「なんとなく80年代当時の日本人が想像するアメリカの一家」という感じがする。「アーノルド坊やは人気者」とか「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とか。
解説役のキャスターマンの語り(「センキュー」が口癖)にも、どこか小林克也的なものを感じたし、
初期は描き文字が現れたり、ミュージカル調になったり、ムテキング変身後のバックに女性ダンサーが踊っていたりといった所も「当時のアメリカへの印象」そのものだった。
こういう部分、タツノコ作品と相性が良いと思う。
オープニングの「ローラーヒーロー・ムテキング」はディスコ調(というのか?)、そして「♪ワッシュワッ シャーバダバダバ」のコーラスが印象に残るエンディング曲「おれたちゃクロダコブラザーズ」は80年代当時のCMに使われた1950〜60年代アメリカンポップス風(シャネルズが流行った時代でもあったな)な感じで、共に渡辺宙明の作曲。さすがレパートリーが幅広い。
毎回タコベーダーのタコキチ(cv大平透 ハクション大魔王他)をリーダーとするクロダコブラザーズによる、人類征服計画が実行されるが、描き方がギャグであるのと、クロダコブラザーズ自体が何かを勘違いしている為、「大々的な嫌がらせ」になっていた。
クロダコブラザーズは人間に化けるが、タコミ以外は「紅の豚」に出てくるマンマユートみたいな感じだった。
クロダコブラザーズの悪事にリン、タコロー、ホットケソーサーの出動となる。
意思を持ったホットケソーサー(一人称はミー)は名前とはうらはらにタコロー達をほっとけない性格で、マジックハンドでつかんで頭の上から2人を乗り込ませる。座席もあるが、そのままサポートメカに乗るパターンもあった。
サポートメカの1つサイザンスはそのまま飛行できるようだが、クロダコブラザーズがゴム獣メカを繰り出し形勢不利となると飛行形態サイコーダー(もはやサイ型ではない)に変形する。
だいたいこのタイミングでリンはタコローの力でムテキングにチェンジ、ホットケソーサーはシリアス玉(リアルな異次元空間を映し出す)を発射する。
ムテキングは時にサポートメカの上に乗って戦うが、「SF西遊記スタージンガー」のスタークローや「イタダキマン」のカブトゼミと違って、この時はタコローが操縦しているんだろう。
サポートメカには他にメデタインとコンチューターがあった。
戦闘シーンでのコメディリリーフというか、ほとんど役立たずのトカゲッテル(追加戦士?)のcvが千葉繁。
私が千葉繁のギャグキャラを最初に意識したのが、この作品だった。
これ以外にサメ顔のオートジャイロ(多分武装無し)にリンとタコローが乗り込んだ事もあった。
途中から舞台がいきなり日本になったが、何か理由があったんだろうか。
最終回は地球方面パトロールへの辞令を受け、タコローが嬉しそうに地球に舞い戻ろうという所、青い地球の向こうにムテキングの幻影が見え、ムテキング幻影そのままで、リンの家族との再会シーンに入れ替わるというものだったと思うが、記憶違いかもしれない。
以後タツノコプロに「スターザンS」や「ヤットデタマン」等、単体のギャグヒーローが目立ったように思う。