幻の三輪乗用車
戦後の日本では、シトロエン2CVまでタクシーに使用されたという。当時の悪路を思えば、踏破性の高い2CVは納得できる部分があるが、耐久性は今ひとつだったらしい。
その一方、当時やたら幅を効かせていたオート三輪を、タクシーに使用するというのも行われていた。まだバーハンドルの時代である。
ダイハツ、マツダ、ジャイアント、オリエント、みずしま、アキツ、サンカー、その多くは運転席側面はオープンで、後ろの客室だけがクローズドだった。
カタログでは「乗用自動車」になっているのが、なにかおかしい。
なんだか海外のショーファードリブンとかリムジンに、御者に当たる運転席だけをオープンにしたものがあると聞くが、別にそれを意識したのではなく、オープンの方が普段の運転感覚通りに操れるというものなのだろう。
一方、サイドにドアがある例も存在する。マツダの例で、まるでアメリカのステーションワゴンのような、木に似せた塗装を取り入れたものもあった。
軽3輪ではないので大きく、ゆったり5、6人乗車できるようであった。
軽3輪の金城ミニカーあたりも、もしかしたらこの辺を意識したのか、ライトバンがあったようだ。
ダイハツの3輪乗用車ビーも、この手の使用を前提としたものだったらしい。
やがて4輪の乗用車の数が足りるようになると、3輪タクシーは日本からは姿を消す。
東南アジアでダイハツミゼットやマツダK360のタクシーが現れるのは、その後の話である。
台湾にもごく一時期存在したようだし、未確認だがメッサーシュミットの3輪自動車すら使われたとも聞いている。
日本の三輪タクシーの実物は広島県にある福山自動車時計博物館で、復元されたものを見ることができる。ここにはダイハツミゼットやマツダK360もあるので、見比べるとサイズの違いに驚く。
ストレッチされた大型のトゥクトゥクを観光地で見ることがあるが、これはもしかしたら先祖がえりなのかもしれない。