心配される広島電鉄の車輛

 路面電車は日本においてはあちこちの都市で導入されたものの、自動車の普及とともに邪魔もの扱いされ、消えてゆく存在となっていた。

 この「いた」と過去形で言うのは、近年になって、「路面電車の合う規模の都市」というのもあるのではないかなど、見直しが行われている。

 きっかけの1つが1980年に広島電鉄と長崎電気軌道(どちらも「私鉄」。「市営」ではない)に導入された「軽快電車」であり、その後、1990年代終わりには海外からの技術導入が広島電鉄と熊本市交通局で行われた。

 これ以外に広島電鉄には次々に新型車輛が導入されている。

(これ以前に札幌市交通局には意欲的デザインの新車が導入されていたし、海外向けの日本製路面電車に新技術が導入されたりしていたし、「あれ?欧米では結構残っているじゃん」と確認されたりしたが、その辺は省略)

 こう、雑に語ると、広島(広島電鉄)というのは常に日本の路面電車の最先端の地と思えるし、実際おそらくそうなのだが、どうも心配されている。なぜかよく分からなかったが、最近あるCMが作られている事が分かった。

 題材は「あしたのわがまち」という事で、街を受け継いでいく路面電車の新型車輛(20年選手もいるが)には格好の出番である。しかし、映像にこれらはチラリとも映らない。軽快電車導入前の懐かしの車輛が主で、背景に少し1980年代の車輛が映るだけである。

 確かにその昔、1980年頃に「動く電車博物館」と呼ばれていた時代を思い起こさせてくれて、マニヤ的には楽しい。

 この「動く電車博物館」は皮肉混じりであって、全国で廃線になった路面電車の「まだ使える」車輛をかき集めてきたからであった。

 で、一体新しい車輛はどうなったのか?

 どうやら、最初に輸入された車輛に関しては日本法人が撤退した事もあって整備が滞り、あまり動いていないらしい。5輛連接が12本導入されて2本しか動かないという。

 一方これに対して国産の5輛連接、3輛連接の車輛は着実に増備されて数を増やしているとの事であり、件のCMには何か恣意的な裏があるのではないかと勘ぐってしまうものである。

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