マッチのマーチとセダンの話

 日産からスポーティーなスタイルでデビューした「マッチのマーチ」はそれ自体はセダンではない。
 重要なのはモータースポーツでも活躍したこのクルマが、続々とデビューしたパイクカーのベースでもあった事だ。

 一般の人には「単におしゃれなクルマ」に映ったパイクカーは、旧車オタク的に見れば、当時人気が出ていた外国車、旧ミニやルノーキャトル、シトロエン2CV等を都合よく乗り回せるように解釈しなおした存在に見えた。
 Be-1やパオはまさにそれであった。

 ターボの付いた、トランクが広めの、2+2とも言えそうなフィガロは、イギリス人にはオースチン・ヒーレー・スプライトやMGミジェット的に見えているらしいとは、知り合いに聞いた。ロータス・エランまでは行かないか。
 イギリスでホンダ・ビートやユーノス・ロードスターが人気となり、ついにはMGF、MG・TFが発売されるが、あの国の一部にはライトウエイトスポーツへの渇望が潜在的に存在するのがもしれない。

 丸っこくなった2代目マーチは光岡自動車のビュートやコペル・ボニートのベースとなった。どちらも後部トランクを延長した、ブリティッシュサルーンを強く意識した形なのは興味深い。
 光岡ビュートはジャガーMk.2、コペル・ボニートはBMCのバッジエンジニアリング車ADO16の中のヴァンデンプラ・プリンセスそっくりである。

 このADO16、マーチとほぼ同クラスの小型車だったのだが、日産がかつて販売していた(初代)チェリーもやはり同クラス、そして横置きFF2階建てエンジン等と呼ばれるレイアウトもADO16、チェリー共通であった。
 いや、こっちが本家、BMCミニと同じアレック・イシゴニスの設計なんだけどね。

 で、2代目マーチにはステーションワゴンのマーチBOXもあるのだが、それとは別に台湾では後部トランク付き3ボックスが生産された。これは特別な名前は無い。

 台湾仕様のマーチ3ボックスは現地ではよく見かけたクルマであった。パイクカー的なおしゃれな存在でなく実用車だった。
 マーチBOX的な2ボックスの方が、途中で荷物が出したくなった時にも便利だろうと思ったのだが、台湾の友達によるとこれは心理的問題なのだそうだ。

 台湾では体感として事故が多いようだ。そこで「まず潰れてくれるスペース」であるトランクのある3ボックスの方が良かったと。

 しかし今では台湾でも2ボックスはよく見かけるので、昔のような時代ではないのだろう。たくさんいた3ボックスのマーチも、もう少なくなっていると思われる。


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