メーカーは果たして手をこまねいているのか

 旧ツイッターの方で鉄道模型に関して何やら荒れたような話があった。
 自分の主張を通す為に過激なパフォーマンスをするのは三島由紀夫の最後や、成田闘争のAE車焼き討ち、舐められまいとするオタク、口の悪い2ちゃんねらーに至るまで見苦しい限りであり、こんなの認めていたらパワハラを容認する事になる。

 で、その(主にNゲージ)鉄道模型であるが、先細りも予想可能な現状に、メーカーは手をこまねいていたのか? 「今買ってくれている人たち」以外に向けた動きは無いのか? というと、違うよねという話になる。以前から常に対応は行っているように見える。

 隣接ジャンルであるプラレールが謎車輌を商品化するのだって、おそらくは「まだ買っていない人たち」への対応だ。

 かつて日本を巻き込んだSLブームは鉄道模型の裾野を広げたが、いつまでも「D51の牽く旧型客車」(一般のイメージ)という時代でも無いだろうというのは容易に予想できる。

 かつてキハ20やキハ58が商品展開されたのは、それが割と(電化路線に乗り入れたりして)あちこちで見られたからだろうが、もう「国鉄」という全国区の鉄道は存在しない。

 古くはKATOのポケットラインシリーズが、「まだ買っていない人」向け商品であると思う。Nゲージは入門用はどれでもいいので(他と比べて)設定されていなかった、デフォルメされた路面電車や小型電気機関車の列車のセットであった。

 その後は、例えば「Bトレインショーティー」というものがあった。そのままでは動かない鉄道玩具だが、鉄道模型メーカーの作った動力(ポケットライン用等)を組み込む事で「Nゲージ化」できる。
 ブラインドパッケージが主だったが、私は江ノ島の観光地で見かけ、観光から鉄道模型に入るというルートもあるなと思ったものだ。

 トミーテックの「鉄道コレクション」(の特に初期)もまた、廉価な商品から鉄道模型に入るルートとして良いなと思ったものである。自由型の設定も気に入った。
 これと並行して、それまでより狭い面積で楽しめる半径のレールも展開された。

 鉄コレとミニカーブレールは相乗効果を生み、ネットでも話題となった。

 ここから派生した「ノスタルジック鉄道コレクション」は近年のものだが、年配の人には「どこかの駅で見た、貨物列車に繋がった謎の古典客車」や「本線から分岐していく小型電車やレールバス」なんかを展開している。
 そのプロトタイプを見かけた人は、忙しい生活の中で鉄道にあまり興味なくても「あれは何だろう」と思った人もいる事だろう。
 若い世代には古書籍や個人ホームページで見た車輌の世界である。

 少し異なるが、鉄道模型のイベントというものがある。行われる地方が限られてしまうが、こういう所には連れられてきた別ジャンルのオタクが結構来ている。私が見た時、彼らが「連れ」に勧められていたのが、アルモデルの展開する「とて簡シリーズ」だ。金属キットだが難しくなく、Bトレ動力で走らせる事ができる。「おみやげ」としてそう高くもない。
 最近ならば3Dプリントメーカーも勃興、個性的で面白そうだが手が出なかった車輌にいきなり着手できる。

 さて、一方でBトレ、鉄コレ的な価格による策もメーカーにとって難しくなった時代である。食玩ブームの頃とは全く変わってしまい、「中国で安く作って」という訳にもいかない。「細密化したから値段が上がった」のではなく、「値段を上げざるを得ないから細密化している」のではないかという声もあった。
 なぜ鉄コレは初期のクオリティでいられなかったのか、「値段を上げざるを得ない」が先に来ているとすると納得できる。

 現状では個人でできるのは、「楽しんでいる様子を見せる」ぐらいしか無さそうである。
 イベント開催は、大都市近郊に限られてしまうし。

 そもそも「オタク以外」はどんな鉄道模型ならば買う可能性があるのだろう。
 
 その人の「地元の鉄道」がウケるとは思うが、そこにはなんとか鉄道なんとか線仕様のなんとか系が無数のタコツボのように広がるだけである。この辺り、自動車とは違う。
 仕様が多くなり過ぎると、「再生産がなかなかされない」という事になる。

 ヤフオクでよく見る「旧国鉄塗装にした第三セクター気動車」が現実に製品化されたら、どれほど売れるんだろうか。 

 他ジャンル、もともとアニメからのものではないキャラクタープラモでも見られるような「物語を売る」要素を取り入れるにしても、メーカーに余裕が無いように見える。「猫屋線」などはそうだろう。「富別簡易軌道」など、「ミルクを飲みに行ってきませんか」とか怪しげなコピーを入れ、何らかの媒体で「物語」を展開すれば、そこからジャンル人口も(多少なりとも)増えただろうにとも思う。

 物語込みで売るというのは、むしろ個人から勃興したガレージメーカーが得意とする印象がある。

 Nゲージでもなく、私には高くて買えないが、「モデルワーゲン」などそうである。北海道の炭鉱鉄道とか。

 その昔「トラムウェイ」というメーカーが、HOサイズの路面電車を中心に展開した時は、思い切りを感じたものだが、なかなか難しいのか、変わってしまった。

 最近は明治期の鉄道車輌を展開するガレージメーカーもある。「知らないという事に関しては、D51も明治の鉄道も同じ」という意見も聞いた事がある。現在鉄道模型を買っていない人には、こういうものが「刺さる」人もいる事だろう。

 いっそ海外型をというのはKATOも展開しているし、英国型辺りも子供向け番組の影響で、特にマニアックという訳ではなくなっている。
 以前、「日本の今の鉄道だと通勤等の嫌な思い出に繋がったりするが、よく知らない海外なら」と言う人もいたが、現状「氷河特急」等がどれだけ売れているのか、そういえば海外取材番組も先細りっぽいなと思うものである。

 とりとめもなく書いてしまったが、何も鉄道模型は「鉄オタ」だけのものではないだろうし、層が広がってほしいものだと思っている。

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ものぐさ太郎α
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