タイムマシンと半導体

 相変わらず半導体が不足していると言われる。

 半導体、正確には半導体素子、あるいはそれを組み合わせた集積回路は暮らしを劇的に変化させた。

 昔は巨大な体積が必要だったコンピューターが手のひらに乗るようになったのは、まさに半導体素子のおかげだ。

 半導体素子そのもの1つ1つは電気をある方向にしか通さないというものであるが、組み合わせる事で高度な回路となり、複雑な計算が可能となった。

 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート3」(1990年の作品、ちなみに1作目は1985年なので、時代設定はこの年)では1885年に飛ばされ集積回路の故障で(代替え部品は1947年まで発明されない)地下に埋められたタイムマシン「デロリアン」が、1955年に掘り起こされ、修理される場面がある。

若い頃のドク「こんな小さな回路に問題があるのか……故障するはずだ、メイドインジャパンと書いてある」
マーティ「何言ってるんだいドク、日本製は最高だよ」

 これが1950年代と1980年代のアメリカ人の会話として、かなりリアルなものである。

 自動車、時計、半導体、日本製は1980年代には世界一だった。一方、1950年代には「安かろう悪かろう」の時代だった。

 1980年代の若者であるマーティには、日本で半導体が不足している話はナンセンスに聞こえるだろう。

 結局この時代(1950年代)で入手できる真空管等を使った回路で修理を行う。

 ところで、このタイムマシンに半導体を使うアイディア、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が最初ではない。

 少なくともその中の1つを私は知っている。

 作品中にあった1947年に発明される部品とは半導体素子の1つ「トランジスタ」と思われるのだが、これが漫画「キテレツ大百科」の「片道タイムマシン」(初出は「こどもの光」1974年9月号)の中で登場している。

 この「キテレツ大百科」とはタイトルであると同時に、江戸時代の発明家(キテレツと呼ばれる主人公の先祖)の書いた書物である。
 その中の「航時機」の説明になぜか、「トランジスタを使うべし」とあるのだ。

 キテレツは航時機を作るが、これが行った先である1854年で故障してしまい……

 というのがストーリーである。どうやって帰るのか、なぜ江戸時代の人がトランジスタを知っていたのかは読んで頂いた方が良いだろう。

 1854年というのが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で最初に向かう時代のほぼ100年前というのは、多分偶然なのだと思う。偶然にしてはでき過ぎだが。

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ものぐさ太郎α
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