【小説】勝利の女神(408字)
「女神アルデラートよ! 我に勝利を!」
「女神ラトルデ! 勝利の栄光をわが身に与えたまえ!」
二人の騎士が剣を抜き、女神に加護を祈る。
ともに卓越した技量を持つ美剣士で、観客がいないのは残念ですらあった。
だが、この一騎打ちによって国の命数が決まる。
両者は、己の信じる勝利の女神へと祈りを込めた。
「やばい。どうしよう」
雲上の神殿にて、美しい女が悩まし気に身をよじる。
「どうかされましたか? アルデラート様」
天使のような少年が、銀の杯をテーブルに置いた。
「今、うちの推しが戦っているのよ」
「どちらの騎士様が、アルデラート様の推しなのですか?」
「どっちもなのよねえ」
女神アルデラートは、杯に唇をつける。
「ですが、アルデラート様に加護を祈るのはお一方ですよね? ラトルデという名は新興の神でしょうか?」
「いや、それわたしの裏アカなのよ」
少年はあきれた顔で、髪をかきむしって悩むアルデラートを眺めていた。
モノガタリードットコムのお題『勝利の女神』に投稿した作品です🐻