社長の会見時のコメントに見る広報スキルの必要性とその影響。
連日ビッグモーター社の対応や社内情報がニュースや情報番組で取り上げられていますが、特に広報の専門家として注目しているのは、社長のコメント。辞任した前社長のコメントもそうですが、新しく就任した社長のコメントにも注目をしています。
一番発言してはいけないコメント
経営陣は、知らなかった。
よく、企業の謝罪会見や説明で聞くコメントですが、広報的な視点から見て、このコメントは非常にリスクをはらんでいることを理解してもらいたいと考えています。
このコメントの潜在的なリスクとは、
新たに経営幹部が関与しているという事実が出てきた場合
本当に知らなかった場合
いずれにしてもリスクがあることを理解して発言すべきであると考えます。
1のケースは、隠ぺい工作、その場しのぎといったネガティブな印象が付きまとうことと、これ以上の情報を報道機関や記者は躍起になって調査を行うということを考えるべきです。
特に、現状のように社内や元社員から様々な情報が噴出している状況においては、非常にコントロールすることが困難です。
新社長からのLINEを業務用として使用しないといった周知も隠ぺい工作であると世間に騒がれている状況下においては、非常に企業イメージを立て直すことは難しいでしょう。
また、2が事実である場合、企業のガバナンスの問題や、リスク管理の面で企業体質が問題視されます。
つまり、このような状況下において、このような発言をすること自体がリスクがあると認識すべきであり、適切なコメントを進言できない、広報担当者(ビッグモーター社にはいないらしい)などのサポートや発言による影響を考慮したコメント発信が重要になることを理解する必要があるでしょう。
結果論ですが、このような場合、組織のトップとしての発言は、「すべてのこのような事態を引き起こしたのは、社長である私の責務であり、辞任し、一切経営に関わりません」とか、「すべての情報、事実を明らかにし、その上で責任を取り、辞任いたします」といったコメントがこの場合必要であったでしょう。
余計な発言や、感情による対応は、火に油を注ぐケースが多く、また、現在のような状況下においては、何を発言しても切り取られ、またネガティブに作用することを理解することが重要です。
これも、自ら企業が引き起こした初動の間違いが起因しており、このような状況下や企業のトップが説明するまでに期間が、経過していることからも、報道機関や記者からの質問や記事のトーンは厳しくなるのは必至であると言えます。
断言することによるリスクとあいまいな発言はリスクを引き起こす。
これは、謝罪会見だけではなく、取材時にも言えることですが、断言することのリスク、あいまいな表現によるリスクは発言することにより、大きなリスクをはらんでいることを理解する必要があります。
断言するためには、それ相応の事実の積み上げやデータでの検証が必要になり、検証を考えると事実無根な事象である以外は、使うべきではありません。
また、逆にあいまいな表現は、ポジティブにもネガティブにもとらえかねないこと理解して発言する必要があります。よく話に聞くのは、「そういうつもりでは発言していない」といったことを取材あとや記事化のあとに申し入れとして話が出ますが、あいまいな表現をしたのは、発言者であり、その場で訂正なり、主旨を説明するなりしない限り、誤ってとらえられても致し方がないと考えるべきです。
当然、広報が陪席している場合には、発言の主旨やそのバックグラウンドなどを説明することができますが、そのような場に広報がいない場合には、社長が自らその主旨を説明できるようなスキル、報道機関や記者に対するスキルを身に着ける必要があるでしょう。