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小幅の生地について

 和装に関わっている方は「小幅(こはば)の生地」という言葉をよく聞くと思います。
身近で見られる小幅の生地は「手ぬぐい」で、この生地幅は日本の布・衣文化に深い関係があります。

小幅の生地は日本特有

 流通している織物の主な生地幅は90cm、110cm、140cm前後の3種類です。
一方で小幅の生地は35ー40㎝くらい。
この生地幅は日本の手織りの名残とされています。
手織りの場合、緯糸を通すのにシャトルという道具を使います。
シャトルを右から左、左から右と通すのに作業性の良い幅が小幅といえます。
機械織機へと移行される時代にもこの生地幅は変わらずに、機械化されました。(違う幅の織機も作られています)

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織機について

 織機の種類にシャトル織機とシャトルレス織機があります。
シャトル織機の工程は上記の手織りのものと同じです。
対してシャトルレス織機は、緯糸を風圧や水圧で飛ばすそう。
シャトルレス織機は生産速度が格段に速くなっています。
こうした機械的な特徴で生地の風合いにも違いが表れます。
詳しくはこちらのリンクが参考になります。

リンク先でシャトル織機の特徴をこう説明しています。

工程において職人の手作業を多く必要とする極めて非効率的な織機です。しかし、経糸(たていと)にも緯糸(よこいと)にも負担を掛けないよう、ゆっくりと時間を掛けて丁寧に織ることで、表面に凹凸感のあるふっくらとしてあたたか味のある風合いの生地が生まれます。また、高密度で織ることから耐久性が非常に高く、シャトル織機で織った生地から作られた服は長く愛用できることも特徴です。

小幅生地は全てシャトル織機です。
小幅の織機は現在製造されていないので、機械の部品が故障したら、使われなくなった織機からその部品をとって入れ替える方法をとっています。
ちなみにこれは、国内の古い機械を使い続けている生産現場ではよくやる方法です。
国内レース工場、足袋工場で話を聞いた時にも同様の保守をしてるとのことでした。

半纏の「背縫い/背割れ」とデニムパンツの「セルビッジ」

「背縫い/背割れ」は半纏の特徴を、「セルビッジ」はデニムパンツの特徴を指す言葉です。

「背縫い/背割れ」とは、半纏の背中(大紋)の真ん中を縫って仕立ててある部分を指します。
「(背中に)一本筋が通っている」と験を担いだり、粋とみられるところの一つで、半纏にこだわる方は必ず背縫いをつけると言っても良いくらいです。(地域性もあるかもしれませんー)
背縫いは、小幅の生地で仕立てる場合には必ずつきます。
広幅の場合、背縫いをつけなくても仕立てられるのですが、わざわざ背割れを作る(背つまみ)方法をとられたりもします。

「セルビッジ」とは、デニムの生地の両端の生地耳部分を指します。
パンツを裏返すとその生地耳部分が見えます。
「赤耳」とも呼ばれているみたいですね。
セルビッジデニムを愛用するデニムファンが多いとのこと。
デニムに関してはあまり詳しくなく、こちらにリンクを貼ります。

この2つを取り上げたのは、どちらの生地もシャトル織機で織られているからです。リンク先にもシャトル織機で織られたデニム生地の魅力、特徴が書かれていました。

職人が織るスピードをコントロールしながらゆったりしたテンションでデニム生地を織ることができます。糸に合わせて適度なテンションで、ゆっくり織り上げたデニム生地は、綿糸の持つ本来の凸凹が残り、良い意味でムラができます。このムラがジーンズ愛好家が好む、セルビッジデニム独特の色落ちを生むのです。そして、ゆっくりと織ることにより、デニム生地は空気を含み、生地の目が詰まらず、はいていくごとに体に馴染むはき心地の良いデニム生地になります。


半纏、デニムどちらも、生地の風合いや使い心地(経年変化)などが選ばれる基準の一つとなる中で、「背縫い」「セルビッジ」という広幅生地を使うと表れない特徴(背縫い・セルビッジ)に価値を見出しているところからも、昔から使ってきた人たちが小幅生地(シャトル織機の生地)を魅力に感じていたことが伝わり、面白さを感じます。

和装の仕立ては小幅が前提になっている

 浴衣、着物、半纏・・・和装はどれも小幅の生地を効率良く取って仕立てあげます。
小幅生地を基準に仕立てを考えられていると考えて良いかもしれません。
例えば小幅生地で半纏を仕立てるときの生地の取り方は図のようになります。

著書:「日本の印染2」全国青年印染経営研究会より

半纏_生地の取り方

このように無駄な生地がでません。(R仕立てなどは別)
私は資源が豊富でない時代の工夫の一つなのかなと考えたりします。

こうした背景を知ると着ている半纏や、お祭りなどで見る半纏もより変わって見えてくるかもしれません。

相澤染工場では「基本的に」小幅生地を使って染色・仕立てをしています。
「基本的に」というのは、小幅では足りない大きい半纏を作る場合や、小幅生地がない織物で半纏を作る場合もあるからです。
今は昔と比べて、体格の変化や染色技法や生地の種類も豊富になるなどで半纏も多様化しています。
染色については別で記事にしているので、そちらもご覧ください。

以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
半纏、藍染製品、藍染体験など興味のある方は他の記事、サイトもぜひチェックしてみてください。





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