キャラクターUI:ダークパターンの救世主?
【はじめに】
今回は「キャラクターユーザーインターフェース」(以下、キャラクターUI)という新しいUIのコンセプトについて話したい。これは筆者(https://x.com/mono4log)が最近よく見るUIスタイルに対して勝手に命名したものである。生き物のアニメーションやグラフィックを利用し、ユーザーに共感や同情などの感情を感じさせ、行動を促すUIのことを指す。
具体例として、プッシュ通知を押させようとするクマの動画を紹介したい。可愛いクマが「はい」「いいえ」というユーザーの選択に対して一喜一憂する可愛らしい姿が表現されている。
【なぜキャラクターUIが必要なのか?】
現代のUIは無機質なコントロールパネルになりがちだ。しかし、人と人のコミュニケーションを考えてみてほしい。冗談を交えながら話す友人と、無表情に淡々と話す事務の人、どちらが心地よいだろうか。UIもコミュニケーションの一種だと考えれば、もっと楽しく、人間らしさを感じられるものであってもよいのではないだろうか。この考えから、UIに直接的な生き物の描写を加えることでよりよい体験を作れるのではと考えている。
また、キャラクターUIは、ダークパターンの問題に新しいアプローチを提供する。従来のダークパターンは、目的をユーザーに強要するものが多くストレスだった。そして、その悪意をユーザーが感じたとき、ブランドイメージを損なう結果にも繋がってしまう。
それに対してキャラクターUIは、ユーザーが共感し自発的に行動する体験を目指している。したがって、ユーザーの選択肢を制限をしないし、騙そうともしない。一方で、目的を達成するために一番選ばれやすいキャラクターと表現を使う。それは上目遣いの泥だらけの子供かもしれないし、マッチを売ろうと雪の中で凍えている少女かもしれない。それらキャラクターのおねだりやわがままで、共感、同情などの感情を呼び起こす。このようにすることで、ユーザーが自発的な行動を行うことと、システムが要望を伝えることが両立できる。
【キャラクターUIの具体例】
実際にどのような形でキャラクターUIが実現されているのか。著者が作ったものは1つもなくて申し訳ないが、要素を含んだ例を見てみよう。
TunnelBearのログイン画面
メールアドレス入力時はクマは入力カーソルに頭を向け、パスワード入力時は目を隠す。クマが眺めてくれるだけでタイピング作業も楽しく感じられる。また、システムの見守っている状態と情報を見ない状態をビジュアルで可愛らしく表現している。
ウィンドウに載る少女のイラスト
ウィンドウをクローズしたくないと思わされるイラスト。ダークパターンなら「X」ボタンを見づらくしたり、小さくしてしまうものが多いが、このイラストでは「もし少女が落ちたら」という想像を活用している。
スキップを押させない初音ミクのイラスト
ダークパターンなら一定時間操作をロックしてしまうだろう。今回の例では必死に腕を振るミクの頑張りを応援したい、もしくはいたずらっこのようなミクを「仕方ないな」と許す気持ちになる。結果、待たされる理由をユーザーにうまく作らせている。
オランダ、スキポール空港の時計
人が時計の針を描く映像がループするデジタル時計。同じくユーザーを待たせる場面などで、その理由を伝えるのに活用できそうである。
vscode-pets
VSコードに猫を住ませられる。以下の3つの例は何らかの行動を促すものではないが、ディスプレイ上の生き物の例として紹介する。
VPet
ディスプレイに可愛い女の子が住む。
ネッコサーフィン
猫が飛んだり跳ねたりする。カーソルの動きに合わせて猫が動くことで現実とのつながりを感じられ、生き物感が強い表現になっている。その可愛い存在が例えばカーソルを奪ったりしても少しなら許してしまおうという気持ちになる。
【キャラクターは人か動物か…】
これまでの例ではキャラクターは人以外のものを紹介した。ただ、場合によっては人が良いもの、キャラクターが良いものがあると考えている。
人を利用するメリットはなんといっても注目されやすいことである。結局グラフィックやアニメーションよりも人の方が一瞬の注目度は高い。例としてAmoがオンボーディングで人の動画を使用していたが、あのスマホの端っこで人がいきなり話しはじめた衝撃は忘れられない。
一方で、無作法なお願いは、人ではない方が得意だと思われる。例えば配膳ロボットが「この夏は〇〇がおすすめです」とずっと広告を流していたり、子供が「おもちゃを買って」とねだっても気にならない。一方で、店員が「この夏は〇〇がおすすめです」とずっと話しかけてきたら、お店や店員に対して、そんなにお金が欲しいのか?必要ないって言ったよね?などの対等であるからこそネガティブな印象を抱いてしまう。
【キャラクターUIの課題】
最後に課題については以下の5つが挙げられる。
UIがカオスになる:キャラクターUIを過度に使用すると、ユーザーが視界的にも、感情的にも煩わしく感じる可能性がある。
文化的な違い:生き物の捉え方や意味は文化によって異なるため、グローバルな展開には注意が必要。
アクセシビリティの問題:視覚的な要素に頼りすぎると、スクリーンリーダーなどを使用するユーザーにとっては問題となる可能性がある。
リソースの不足:デザインと開発の両方において多くの時間が必要となる。
これらの課題を克服しつつ、キャラクターUIの利点を最大限に活かすことを今後は考えていきたい。
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