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デザインを考えるツールは「紙」が神で、制限が無いほどよい

ポスターなどのデザインのアイディアを作る時、何のツールを使うべきか。夢の中で考えるべきか、紙とペンで雑に描くべきか、イラレなどのソフトできっちりと作るべきか。

私はこれまでデザインのアイディア作りには初めからイラレを使ってきた。しかし、最近アナログに紙に描きまくる方法をとってみたところ、とても良かったので理由を考えてみる。


まず

「デザインする」とは2つのプロセスで成り立っている。

  1. 頭の中でアイディアを考える

  2. そのイメージを具体化する

今回は2の項目において、ツールを変えた場合を考えてみる。つまり、次の2種類のツールの比較である。

  • イラレなどのソフトを使う場合

  • 紙とシャーペン(黒くて、濃淡がついて、消せるもの)を利用した場合

場面としては、デザインのアイディアを0→1で考えている時である。ある程度詳細を考える時にはイラレの方が一括で色を変えたり、複雑な形を簡単に作れたりと便利であるため、そのフェーズについては問題としていない。

具体化が大変すぎる

紙を利用するのと比較して、イラレを使うと具体化がとても面倒になる。付箋に軽くペンで伝言を書くのと、習字セットを引っ張り出して習字をするのくらい差がある。

この具体化が面倒なことにより生じる問題は2点である。

1. 思考を止めないといけない

0→1の場合、具体化はメモ的な役割が大きい。アイディアを考えることがメインの目的である以上、具体化はそれを記録する役割にすぎない。重要なのはアイディアを考えるために頭をフル回転させることである。

理想の時間比率は(アイディアを考える:メモ = 8:2)くらいだと思っている。しかし、イラレを使うとそれが平気で逆転してしまう。作業はしているので満足感はあるが、新しいアイディアは出づらくなる。

また、アイディアを考える思考がいちいち中断されることによって、完成像を常に意識して制作しずらい。

例えば、完璧なポスターの途中経過は完璧ではない。これは当然で、100つの要素をバランスよく配置したポスターがあったら、99個目の要素を配置した時点ではバランスが悪いことになる。

つまり、0→1の段階では、途中のダサさを考えないくらいスピーディーに完成像を具体化する必要がある。しかし、イラレを使ってしまうと、色やサイズを具体的に指定しなければならず、個々の要素に意識が持っていかれる。その結果、途中経過は綺麗だが、最後のピースを合わせた瞬間にダサくなるということが多くなる。

紙は頭の中の絵の模写をばーっと描き、イラレは絵から要素を一つ選択して、丁寧に仕上げる印象である。

2.アイディアが簡単に作れるものを無意識に選んでしまう

上記のようにソフトを使ったメモは大変である。その大変な工程を繰り返すと、いつの間にかメモしやすい、作りやすいデザインのアイディアを考えがちになる。

例えばイラレは四角などのシンプルな図形は得意だが、滑らかな線や抽象的なものは苦手である。

アイディア作りの時点でイラレを使うと、無意識のうちに簡単に作れる要素だけでアイディアを考えてしまっていることがある。

また、アイディア自体が明確でも、機能によって制限されることもある。例えば、フォントの印象が小さいと思ったら、何も考えずにフォントを変えたり、プルダウンにあるフォントサイズを選んだりしてしまう。本来はもっと違うアプローチがあるかも考えるべきだが、実現しやすいデザインを選ばされてしまっていることになる。

(ソフトを使う場合でも、より直感的な機能を使うことで上記のデメリットの対策は行える。例えば、フォントサイズについては、プルダウンから選ぶのではなく、拡大縮小ツールや、フォントサイズを上げ下げするショートカットを使うことをおすすめしたい。こうすることで、数値に惑わされたり、選択肢を制限されることはなくなる。数値を四の倍数にして統一感を持たせたりするのは仕上げの工程にやれば良い。)

アイディアが枝分かれしづらい

次は一度メモを取った後の話をしよう。A案が具体化したら、そこから派生してどんどんアイディアが生まれるのが良い流れである。

しかし、ここでイラレを使ってしまうとメモが具体的すぎるという問題が発生する。

イラレでで四角を作った場合、それは厳密な歪みのなく、単色で色が塗られた完璧な四角である。これは具体的すぎるため、派生の案を考えづらく、柔軟に変更するのが機能的に難しい。

それに対して、紙とシャーペンで書かれた四角は歪んでいて、色も濃淡がある黒で、小さなハネハライがあるだろう。こちらの四角ははどんどん手を加えようという気になってくる。あえて全体を歪ませても良いし、1つの線だけ濃さを変えても良い。気に入らなければ消しゴムで消してもう一回すぐに描けば良い。

このように0→1の段階ではあえて抽象度を保つことが重要だと考えている。

結論

制限があるツールを使うほどアイディアは出てきづらくなる。制限が高い順に私の周りにあるツールを並べてみると次のような印象である。

  1. パワポ

  2. Figma

  3. イラレ

  4. iPadのメモ

  5. 頭の中

一番良いのは頭でだけ考えることである。しかし、その記録を残す必要はあるし、デザインを視覚的に判断するために具体化は必要である。よってその次に制限が少ない紙が一番良いという結論になった。

ちなみにiPadなどのメモも良いとは思うが、紙と消しゴムの直感性には敵わないと思っている。少なくとも私には向かなかった。

この結論を、美術、デザイン教育を受けた人は当たり前に理解しているのだと思う。しかし、私みたいな独学しかしてこなかった人にとっては、自分で納得できるまで無駄に時間がかかった。

この言語化のおかげで長年パワポに感じてきた違和感を少し言語化できて鬱憤が晴らせて非常に嬉しい。

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