ゴミアイデアを量産せよ。さすれば宝石アイデアは勝手に生まれる
【はじめに】
ただの学生デザイナーがアイデア出しで意識していることをまとめる記事。JAGDAのようなポスター展(今年はテーマがPEACE)を題材にして話す。
(JAGDAの過去作↓)
【アイデアの広さと高さ】
私はアイデアの集合体を広さと高さの2軸で評価できると考えている。
まず、広さはパターン違いのアイデアの数(画像の横の幅)である。例えば「猫で表現したPEACE」や「手で表現したPEACE」などのアイデアが横に並ぶ。
一方、高さはバリエーション違いのアイデアの数(画像の縦の幅)である。例えば、「手で表現したPEACE」というパターンを表現するのに、バリエーションは「手でハートを作る」や「肌の違う色の手でハートを作る」などである。
高い場所にあるアイデアは、質が高く使えるアイデアになる。分かりやすいように、使えるアイデアを宝石、それより低いアイデアをゴミと表現する。
宝石アイデアを作るには?
宝石アイデアの作り方は下の画像のように2通りしかない。1つのゴミを磨くか、複数のゴミを合わせて1つにするかである。
この時、一発で宝石に辿り着くことは不可能である。
理由はアイデア出しは連想ゲームだから。「りんご」→「いちご(りんごと同じ赤)」→「ピラミッド(イチゴと同じ三角形)」と連想できるが、「りんご」→「ピラミッド」は無理である。
したがって、宝石アイデアはゴミから生まれる。また、構造的にピラミッド型になるため、ゴミアイデアが多く土台が広いほどよい。
体感だがゴミがたくさんあれば宝石は自動的に作られる。私の場合、10案だと無難なアイデアしか出ないが、50案出せば良いアイデアが3つくらいは出る。この割合は大きく変化しない。(下の画像は最初の10案で全部ボツ)
したがってゴミを作ることだけに最初は集中すれば良い。
ゴミアイデアを作るには?
軸ごとの量産方法は次の章で話すので、共通して使える考えをここで話す。
結論、ゴミを作ることを恐れるな である。
例えば、以下のようなアイデアもゴミにしていい。
普通すぎて面白くない
エロ、グロ、倫理的にまずい
条件を満たしていない
作り方がわからない、文章でしか書けない
主観すぎる、アートっぽい
バカすぎる
ゴミの役割の1つは、要素、関係性が部分的に宝石アイデアのインスピレーションになることである。したがって、ゴミアイデアを単体で成立している必要はない。
また、ゴミの中でも特に「普通なアイデア」は「普通でないアイデア」を出すために必要である。クリエイティブなアイデアは、普通のアイデアを全て出し切って「もう出ない」と思ってから這いずりまわって、やっと生まれるものである。
【広いアイデアの作り方】
1.テキトウに考えてみる
テキトウに考えた要素を無理やりメッセージに繋げる方法。こうまでしないと自分の癖から抜け出せない。(画像ではとにかく頭に浮かんだ単語をを描いている)
バッタ → バッタの目ってなんか怖いけど、ドーナツにしたらPEACE?
インターステラー(映画)→ 回転でPEACEを表すと?
時計 → 誰にでも平等な時間ってPEACE?
フェルマーの最終定理 → 書ききれないPEACEとは?
ヘリウム → 風船にPEACEを込めると?
注射器 → 子供の注射嫌いをどうすればPEACEにできるか
2.違う視点に立ってみる
1つのアイデアの反対の立場や時間軸をずらして考えてみる。
反対を考えてみる
明るい → 暗い
主観 → 客観
ちゃんとした → ふざけた
視点をずらす
プレイヤー → 観客
時間軸をずらす
PEACEになった時 → PEACEに気づかない時、PEACEを得ようとしている時、PEACEを得た後
規模をずらす
人間 → 微生物、動物、村、国、地球、宇宙
五感をずらす
鳩を視覚的に表現する → 聴覚、視覚、味覚、嗅覚で表現したものを視覚に戻してみる
ターゲットをずらす
学生が見やすいポスター → 人間の子供が見やすいポスター、水泳中の人間が見やすいポスター
3.特徴や関係性を別のもので表してみる
ユニークでない部分を別のものに置き換えてみる。
鳩は白い → 他の白いもので鳩を表現できないか?
平和は助け合い → 協力している関係性の動物って何かないか?
平和を運ぶ → ものを運んでいる乗り物ってなんだろう?
4.タイポグラフィーで遊んでみる
大文字、小文字、カタカナ、ひらがな、漢字の違いは?
同じ発音で別の意味にできない?
フォントの違いは?
回転、拡大してみる
分割してみる、組み替えてみる
文字を加えて別の意味にできない?
【高いアイデアの作り方】
必要なのは低い位置にあるアイデアを組み合わせたり、より効果的に表現するための知識と思考である。また、自信のあるアイデアに対しては収束フェーズとして勝てるか?条件に合致しているか?なども考える必要がある。
1.良い広告を見る
良い広告を見ると、その広告の一部をパクれる。思想の一部かもしれないし、アイテムかもしれない。それを既存の自分のアイデアと合わせることで化学変化が起きる。
次に良い広告を見て「ここまで自由にやっていいんだ」と頭が柔らかくなる。定量化されていないだけでデザイナーの頭の柔らかさは一般の人と天と地ほど差がある。(理系大学からデザイン専門に進学して強く感じる。)
また、逆説的にあるあるのつまらないアイデア、使い古されたアイデアを知れる。「殻を破る」という言葉にあるように、「殻」を認識することも自由な発想を生み出す重要な要素だと思っている。
見る広告はなんでも良いが、アイデア出しの段階はビジュアルというよりは、アイデアがぶっ飛んでる広告の方が参考になると思う。例えばアート系、海外のプロジェクト、キャッチコピー重視の広告などである。
2.普段から自分の思考をまとめてみる
結局、自分が興味を持てっている分野がニッチで面白いアイデアを出せる。したがって、普段から自分の考えをまとめたりしていると良い。
3.ターゲットを考えてみる
外国人にも伝わる?
仮に家族のが審査員だったとしたら伝わる?
面白い発想だけでいいのか?機能的な方がいいのか?
4.作品を作る意味を考える
Illustratorでやる意味、水彩でやる意味、AIを使う意味
学生の男性のあなたがやる意味
今の時事でやる意味
ポスターサイズ、材質でやる意味
5.これまでのアイデアを眺めてみる
文章でコンセプトをまとめてみる
サブタイトル、キャッチコピーをつけてみる
作品を褒めてみる、貶してみる
紙で見てみる。見ることしかできない紙という媒体によって、見ることに集中できる
FIN
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