物見夕

気まぐれに短編小説を書きます。 日常系ミステリーが好きです。

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【短編小説】パガニーニの囚人たち

あらすじ 1.《檀崎花那の叙事》  一学期の終業式が行われた七月三十日金曜日。その日は早朝から雷が鳴り、強い雨が地面を打っていた。午後十二時になったばかりだというのに、校内は少し薄暗く、教室も廊下も電灯が点けられている。校舎の窓から外を見ると、街灯が点いており、さながら夜の学校にいるように感じた。  朝にニュース番組で観た天気予報では、晴れ時々雨の予報だった筈だが、これから晴れる様子も感じられない。そんな天気の日に起こった出来事だった。  その日、流川高等学校吹奏楽部副

    • 【短編小説】ふわふわメロンパン密輸事件

      「高嶺くん、週末って何か予定ある?あのね、食べたい物があるんだけど、週末付き合ってくれない?」  同じクラスの古賀さんに誘われたのが水曜日の昼下がりの出来事だった。  どうやら古賀さんの用事は必ず複数人でないといけない条件があるらしい。古賀さんには日頃からお世話になっているため二つ返事で承諾したが、何を食べに、どこへ行くのかをきちんと聞いておくべきだった。  午前8時ちょうどに高校近くの駅に待ち合わせで約束をした僕らは、中央・総武線と京浜東北線を経由して東京駅に着くと、更

      • 【短編小説】名無しの礫

        あらずじ 本編  高校最初の夏休みが終わり、早くも1か月が過ぎた。2学期に入り、学校のイベントの定番である文化祭が終わると、その2週間後には中間テストが行われる。本学の9月、10月は忙しない。  中間テスト7日前となり、勉強中に生じた不安ごとを解決するべく僕は職員室に足を運び、歴史総合の担当教諭を呼び出した。テスト前及びテスト期間の中は職員室に入れない規則上、職員室の外で質問やテスト範囲の再確認を行い、テスト前の不安ごとは解消された。高校1年生とは言え将来のためにもテス