4月の高瀬さん
「あんた、やる気あんの?」
そう言い放たれた言葉には、いかにも軽蔑が込められていた。
この発言を受け取った南川雫は、意味もわからず、その不穏な空気に反応して、
「す、すみません!」
と、咄嗟に返した。その様子に相手は更に不快感のある表情を浮かべた。
見目、二十歳後半の男性、しかも鋭い双眸をもった端正な顔立ちをしている。そんな人物が睨むと凄みが増していた。こんな顔をされては、誰だって条件反射的に謝らざるを得ないだろう。
その図はまるで蛇に睨まれたカエルであった。
なぜ自分がこのような状況に陥ったのか。雫は思わず回顧した。