読書note 潜行三千里 完全版
[潜行三千里・完全版]
元大本営参謀 辻政信 毎日ワンズ刊
戦後日本で一世を風靡した、
累計100万部の大ベストセラーの
2019年の改訂再販。
著者の辻政信は、戦時中の大本営参謀として、
ノモンハン事件、マレー作戦、
ビルマ作戦を指揮。作戦の神とも
指揮系統を無視した独善的行動や
現場に責任を転嫁し、自決を強いた
ことなどによって
悪魔とも呼ばれた。
漫画ジパング、その他で
大変な悪役として描かれている。
これは自身がタイで迎えた終戦後
上官の命令により
国民党との間に関係を結び
日中協調を果たすため、
共産党の追い上げが激化する
中国に潜入。
政治工作を行うため
坊主や医者、華僑に化けて
死線を潜り、南京にて
要人に日本の意向を伝えるも果たせず、
苦難のうちに無念の、かつ
奇跡の帰国を果たした折の逃亡記である。
辻はこの後、政治家に転身。
4回当選を果たすも
最後任期の途中、
ラオスで失踪、
未だ消息は不明のままだ。
中国、国民党軍部の腐敗、その中での
暖かな出会い、
生き延びるための努力
日本への渇望、
この一冊にさまざまな思いが込められている。
ここに腐敗を嫌った毛沢東の、
借りたものは返せ
買ったら払え
宿舎は屋外に
強姦略奪は即時銃殺せよ。
と言う強烈な戦陣訓が引用されていたが
不思議とこだわりが強く、清廉潔白な
辻政信の心情も、これに近いものが
あった気がする。
将を得ればすごい力を発揮しただろうに、
単独だといかにも嫌われそうだ。
それにしても戦争中の軍隊の話を読むと
まるで今の企業の本社と現場の
乖離を見ているようで、
この頃から、体制は
変わらないものなのかもしれないなあと
がっかりする。
伊藤忠を作ったのが、昭和の参謀瀬島だったり
JALの指揮系統が空軍に似ていたり
敗戦で外側は変わっても
中の人は変わらないなら
それはそうなるだろう。
だとしたら次に私たちはどこへ
何を目指してゆくべきなのか。
そんなことをつらつらと考えた。
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