減速する素晴らしい社会 Slowdown 書評
本書で最も刺激的だったのは
>資本主義は遷移状態である。
と言う部分だった。
>資本主義が生き残るには需要拡大し続け絶えず変化する必要がある。
近年、考古学の発展によって、縄文期と言われる時代に、ハラッパーのような、格差のない平等な都市が長期間に渡って、多数存在したことが分かり始めた。
私たちの生きてきたこの時代、特に,1901年からの5世代の中でも、X世代と言われる1956年から1981年に生まれた世代が経験した時と変化の流れが、人類にとって、例外的だった。ということは、その点を見ても納得できる。
X世代が生まれてから2020年までの約70年間で、世界は1.1度暖かくなった。その結果2100年までの間に、海面は最低でも1〜2メートル上昇すると予測されている。
しかし、一般に信じられているように、この温暖化の原因は、人口増加によるものではない。
1956年から1976年までの21年間で、それまで人類が生み出したものと同量の炭素が生まれた。そのほとんどは、アメリカ、ヨーロッパ,日本の自動車生産による。一握りの富裕層が、行動を変えることでカタストロフィーは防げる。
今のままの排出量が続くと、さらに地球の気温は上昇する。
危機を回避するためには、もちろん人口が減ることも重要だ。
貧困,拡散の増大、経済不安、無知(女性に教育機会が与えられない)など社会的不平等によって、出生率は増加する。しかし、世界中で出生率の低下は起こってる。
GDPは戦争をするために作られた指標だ。だとすると、安定と持続可能性を目指す現代に、これを指標として用いるのはどうなんだろう。平和な家庭より、離婚家庭が増えた方がGDPは上がるのだ。
私たちの社会が持続可能となるのは、世界の人口が安定し、エネルギーの消費量が減り、女性の自由度が上がり、格差が減り、富裕層から貧困層へ、富の再分配が行われる時である。生物多様性が保持される豊かな自然環境を生み出すための対策が取られることも急務だ。
政治の女性化、フェミナイゼーシヨンが必要だ。
マツチョな国、アメリカやロシアは今も戦争をしている。直接,間接的に。
希望はある。平等化が進む国には、権力を手にする女性が増えてきたのだ。しかし,デンマークなど先進国を除き、「名誉男性的女性」以外の女性が、長期に権力をもち、改革を行うのはいまだに困難だろう。日本も、杉並区が区議会でジェンダー平等を成し遂げたが、旧体制派男性議員その他からの誹謗中傷が多く、苦戦している。
女性蔑視がこんなに強いなんて、思いもしなかった。夜が明ける前が一番暗い、というが、これもその一つの例かもしれない。
人間の生活は、どちらかというとこれから、狩猟採集生活に近づいていくのだそうだ。無意味で有害な仕事は無くなっていくだろう。
ナマズが好きなら,ナマズを研究すれば良い。と著者は言う。
紀子妃は、かつて望んだように、「人間の行動と認知の研究」ができているのだろうか。同じ女性として、彼女の人としての自己実現を、望まずにはいられない。