上海のブレイク②
前回書かせていただきましたようにエルメスを皮切りに山が動き始めた。今までネタとしてしばらくの間、僕の期待を煽りまくっていた、いくつかの大物がいよいよ最終コーナーを回ってゴール間近までやってきたのである。特に、イベント開始直後からヨミに上がっていた、屋久杉がいよいよクロージングの時を迎えた。いくらプッシュしてもぬるい反応だったため、一時は諦めかけていたが、エルメスが決まるか決まらないかあたりに先方から連絡があり、そこからは早かった。もちろん、いつも通りの鬼のような値引き交渉を経てではあるが、数日後には、ソフトいやハードランディングを決め無事生還(笑)。かなりのお値引きをしているとはいえ、決して安くはない金額で納得して購入を決めてくれた。
香港のお客様にしてもそうだが、中華系のお金持ちは、基本的にお金は持っているので、値引きは激しいが、最終的には金額以上に、値引き率や商品対価として、適切かどうか等の自分なりの納得感を大切にしているように思う。中には、ある種のゲーム感覚で値引きを楽しむ趣味の悪い中国人もいるにはいるが、そういった、輩も最終的には買うのである。そこが、日本との大きな違いで、日本においては、残念ながら、買う気もないのに値引き交渉をしてくる残念なお客様が意外にいるのである。これは日本の商習慣上、お客様をある種、目上の人のような扱いをすることによる弊害ではないかと個人的には思う。その点、中華圏においては、もちろんお客様の事を大切にはするのだが、飽くまで対等の立場であると言うのが、販売員とお客様双方の根本的な認識となっているのである。だからこそ、なかば喧嘩のような激しいやり取りがプロセスにおいて発生したとしても最終的にはソフトランディングできているのだと思う。
日本との違いと言った点においては、今回は新たに、出張ついでに大型家具をまとめ買いしていくというちょっと意味の解らないお客様にも出くわした。日本において家具は、買回り品と言われており、いくつかの店をじっくり見て回り、自宅に帰って寸法を測り、再度来店して確認、と言ったようなプロセスを踏むのが一般的であるが、この方は、それら全てをすっ飛ばしいきなり値引き交渉して成約、というある意味極めて潔いお客様なのである。しかも、結構大きめの一枚板を買ってくれたものだから、むしろこっちの方が本当に搬入できるのかを心配したくらいであるが、当の本人は全く気にする様子はなく、気が付けば北京までの送料の値引き交渉が始まっていた(笑) それもそのはずで、後日送られてきた画像を見たら、2メートル越えの一枚板が小さく見えるくらいの広いダイニングルームであった。
更に、もう一つ、今回は悪い意味での日本との大きな違いに出くわしてしまった。もちろん、悪い意味での日本との違いは毎回数限りなくあるのだが、今回のはちょっとレベルの違う、最早事故レベルと言うか完全に事故であった。具体的には、雑な物流が原因の納品トラブルである。もともと、かなり雑なので気にはなっていたが遂に起こってしまったと言った感じである。いつかは起こるだろうと思いつつも、これと言った解決策もないため、毎回祈るしかなかったが、思った以上に早く神様に見放されたのであった。
ちなみに相手はあのエルメスで商品はかなり高額な一枚板であった。事故のお知らせが物流会社からではなく、エルメス本人から通訳兼切り込み隊長Cさんへの直電によるもと言うのも中国らしい。つまりは、物流会社的には事故とみなしていない、もしくは最初から壊れてたと言うつもりなのである。唯一の救いはエルメス本人が、比較的冷静で、怒っていると言うよりは「ちょっと困っちゃったなぁ」と言った感じであったことくらいである。とりあえず、Cさんと現場に直行したが、そこには、売場ではなかったドでかい傷の入ったと言うよりも、結構破損した一枚板がをしれっと納品されていた。見た瞬間に「マジで終わった、これは完全に返品だ」と思ったが、先述のようにエルメスが意外に冷静だったので、とりあえず、エルメスと話したところ、「木目と色味が気に入っているので、使用上問題ない程度に直してくれたら、それでよい」とのまさかの女神降臨コメント。速攻で近くの謎の商店のようなところで修理に使えそうな道具等を買いこみ修理に取り掛かった。それから2時間、思った以上に綺麗に仕上げることができ、エルメスもCさんもそして、修理した僕自身さえ驚いた(笑)
一方で流石のCさんは、僕が修理している間、エルメスと世間話をしているのかと思いきや、この期に及んでしっかりと営業しており、綺麗に仕上がったのを確認した瞬間にクロージングに入り、ローテーブル用の一枚板と特注の収納まで成約させてしまった。絶体絶命のピンチをチャンスに変えてしまう本当に驚異的な営業魂と営業力、そして、肝の座り方である。
ちなみに、事故加害者の物流会社は予想通り、知らぬ存ぜぬで話にならず、保険にも入っていないようだったので、交渉は早々に打ち切った。今後の対策としては、納品時の立会いと遠方の場合は保険への加入程度しかできる事はなかった。
殊、物流に関しては香港においても日本と比べるとかなり難アリなのだが、中国のそれはさらに輪をかけてひどいのである。何がひどいって、ほぼ全員が素人なのである(笑)。日本の物流業者のようにお揃いの制服なんてあるはずもなく、軍手すらしていないのが普通で、カッターもあまり使わず、爪や歯を器用に使って開梱も梱包もしていくのである。ある意味ではスゴイのだが、もちろん、こちらはそんな曲芸のような事は求めておらず、むしろ、ちゃんと近代化して欲しい(笑)
以上のように、何とかかんとか無事ではないが、困難を乗り越え、この会期も盛況のうちに幕を閉じることができた。そして、当然のことながら、次回のお話もいただき、次は2019年の5月15日からの1ヶ月半であった。当初、2ヶ月で提案されたのだが、その時、既に新たな販路して上海高島屋での5月1日から2週間の開催が決定していたため、調整をお願いした。
上海高島屋での初イベント等、続きは次回以降で書かせていただきます。