【エッセイ】おれたちファッションビギナーズ
~皆様、初めて自分で服を買ったことを覚えていますか?~
ずっとお母さんに服を買ってもらっていたけど思春期になって自分で服を買うようになると、どんな服を選べばいいのか戸惑いますよね。
私もずっと母に服を買ってもらっていたので、どんな服が自分に似合うのかわからずに大変な思いをしました。
そんな服選びにまつわるエピソードがありますので皆様お聞きいただけないでしょうか?
私が田舎から東京の大学に入りたての頃です。
当時の私はとても驚いたことがあります。
それは学生達みんな私の着てる服と全く違うということです。
誰も謎の英語ばかりが書かれた服を着ていないのです。
チャックが無駄に多いペラペラのなんちゃってジーパンなんて誰も履いてないのです。
みんなとってもオシャレな服を着ていました。
生まれて初めて
私は自分の私服がダサいことに気がつきました。
言い訳かもしれませんが
私は今までずっと野球ばかりを四六時中やってきましたので、服には全く興味がありませんでした。
学ランをどれだけかっこよく着こなせるか
眉毛をどれだけキレキレにできるかばかりを考えていました。
田舎で買い物に行く時は、いつも学校指定のジャージでしたので私服なんて中学生の頃に母が買ってくれた服しかありませんでした。
さすがにこれはいけないと思い
友達のゴリラさん(ゴリラになりたい友達)に服を買いに行こうと誘いました。
ゴリラさんも私とは別の大学に入学しましたが同じ気持ちを抱いたらしく、快く承諾してくれました。
そして、アウトレットパークに行きました。
私達は初めて服を買いに行くことに
ドキドキ緊張しながらも今日から新しい自分になれるんだとワクワクしていました。
まず目についた服屋さんがGAPでした。
じーえーぴー、なんて読むのでしょう?
…ゲップでしょうか?
…少し汚ならしい名前の服屋さんですね。
でも名前に反してとても可愛らしい服が多いです。
次にゴリラさんが
「友達に聞いたんだけどアメリカンドリームって言う服屋さんが良いらしいよ」と
オススメを教えてくれました。
アメリカンドリーム…
なんとも男の憧れが詰まっている名前の服屋さんなのでしょう。
私は胸を踊らせながら探しました。
でも、どこにも見当たりません。
結局、アメリカンドリームではなくて
アメリカンイーグルという名前の服屋さんでした。
次にラブラブそうなカップル達が
ウキウキで入っていくお店を見つけました。
店名を見るとMICHAEL KORSと書いてありました。
…ミチャエル コロス!?
な、な、な、な、な、なんとも野蛮な名前の服屋さんなのでしょう。
私達はすぐにその場を離れました。
そして、BEAMSという私達ファッション初心者でも聞いたことのある名前の服屋さんを見つけたので入ることにしました。
ゴリラさんは、オシャレな薄いセーターを大変気に入ったようでウホウホと興奮していました。
「…どうかな?」と私に意見を求めてきます。
「…ごめん、俺は良いと思うけど
俺もまだファッション初心者だから
正直俺の意見はあまりあてにしないほうが良いと思うよ」
と私は自信なさげに答えました。
「じゃあ、店員さんに聞いたほうがいいかな?」
「…うん、お母ちゃんが迷ったら店員さんに似合うか聞きなさいって言ってた」
「うむ、緊張するな…」
そうですよね、初めての服屋さんで
オシャレな店員さんに似合うかどうかなんて聞くのはまだ18才の私達にとっては、とても緊張することです。
ゴリラさんは深呼吸をしてから
オシャレな店員さんに聞きに行きました。
私は心のなかで一生懸命応援しました。
ゴリラさん!頑張れ!!
「あ、あ、あ、あの!
このセーターどうですかね!?」
よし!ゴリラさん素晴らしい質問を店員さんに投げかけましたね!
これで、そのセーターがオシャレかどうかがわかります!
「…え?…いいんじゃないっすか?」
店員さんがまるで他人事のように答えました。
なんという反応でしょう!
ゴリラさんがあんなに頑張って質問したのに!
「え、え、えと、や、やっぱりこの季節は紺色じゃなくて水色のほうがいいですかね?」
ゴリラさんはさらに店員さんに質問を投げかけます。
「…はぁ?そうなんじゃないっすか?」
店員さんはまたしても他人事のように答えます。
こ、この店員さん、
私達をダ、ダサい田舎者だと思ってバ、バカにしているのではないでしょうか!?
許せません!
確かに今はまだ私達はダサい田舎者かもしれませんが、これからオシャレ学生になって東京で誰もが振り向くほどのシティボーイとシティゴリラになってやるのです!
今日、私達をバカにしたことを絶対に後悔するときが来ますからね!!
「あ、あ、ありがとうございます!
こ、これにします!
レジはあっちでしょうか…?」
ゴリラさんは、そんな態度をされても
感謝をして購入を決意しレジの場所を聞きました。
さすが未来のシティゴリラ、心が広いです。
「え、たぶん…?」
ええええー!!!
店員さんなのにレジの場所を聞かれて
「たぶん?」ってどういうことですか!
私はプンスカしながら
良い服を買えると満足げな顔をしたゴリラさんと一緒にレジの列に並びました。
ふと後ろを見ると
さっきの店員さんが
お客様用の列に並んでいました。
お読み頂いてる皆様の中で
察しの良い方はもうわかると思いますが
オシャレな店員さんだと思っていた人は
店員さんではなくお買い物に来ていた
オシャレなお客さんでした。
どうやら私達の勘違いだったようです。
その方には大変ご迷惑をおかけしてしまいました。
私達は真っ赤な顔をして買い物を終えてそそそくさと帰りました。
ちなみに後日譚ですが
ゴリラさんが苦労して購入したセーターは
ゴリラさんのおばあちゃんが洗濯した時に
バカでかいハンガーを使って干したことで
サイヤ人の戦闘服みたいに肩の部分だけが
とんがって伸びてしまい、最高にダサくなってしまいました。
そんなゴリラさんと中学生の頃に不審者に会った時のエピソードも記事にしていますので、お時間ありましたらお読みください↓↓