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【1分小説】僕らだけが知っている

【あらすじ】
暗号だけで会話をする小学生の男の子、2人の物語。


僕には最高の相棒がいる。




隣のクラスのセイジくんだ。


僕とセイジくんは、小学2年生の頃に
学習塾で出会った。


初めて会った時は、
いけすかない奴だなって思ってたけど、
好きなことが同じですぐに仲良くなった。




セイジくんも、僕と同じで
暗号を作るのが好きだった。




普段、塾や学校で
セイジくんと直接話すことはないけど
出会ってから4年間ずっと暗号だけで会話をし続けた。




例えば、リコーダーでモールス信号を
奏でて「昨日の夕食なんだった?」と
他愛もないやりとりを毎日したこともある。


僕が「ハンバーグだった」とか
「唐揚げだった」って教えると
その度にセイジくんは羨ましがった。



セイジくんの家の夕食は
毎日たこ焼きだった。


「昨日は、イクラ入りたこ焼きだった」とか
「昨日は、バナナ入りたこ焼きだった」とか不思議なたこ焼きを
いつも食べてて僕からすると面白そうで、
むしろセイジくんの夕食のほうが羨ましかった。





ほかには
赤青メガネを使わなければ
解読できない文字で手紙を作って
やり取りをしたこともある。



家でセイジくんに渡された手紙を
読んでいたら、
僕の赤青メガネをかけた姿を見て
おじいちゃんが
宇宙人だと思ったみたいで腰を抜かしていた。


セイジくんの家では
お父さんが間違えて赤青メガネをかけて
会社に行ったらしい。

セイジくんのお父さんは
おっちょこちょい星人かもしれない。





ほかにもこんな日もあった。

お互いに暗号地図を作って
放課後に宝探し勝負をした。


僕もセイジくんも難しく作りすぎて
どちらも解読できなくて
全然見つけられなかった。


夜遅くまで、宝探し勝負が続いて
捜索願いが出るほどの騒ぎになった。



僕達は、大人達にこっぴどく叱られた。


セイジくんは、
けちょんけちょんに怒られた後
こっそり捜索願いで出動した凄腕警察官に
僕の暗号を解かせて宝物を見つけた。


ズルして勝ちやがった…


しばらく、僕とセイジくんは
暗号で口喧嘩した。








そんなセイジくんから
夏休みに暗号が書かれた紙をもらった。


「    
 ↑   ←


…ひ、す?

どういう意味だろう?


僕は、何日間もこの暗号を解けずにいる。

いつの間にか、夏休みは最終日に差し掛かっていた。





僕は、こっそり凄腕の警察官に聞きに行こうと思ったけど、やっぱりズルはいけないとやめた。



でも、僕のおじいちゃんは
凄腕おじいちゃんじゃないから、
おじいちゃんに聞くのはズルじゃない。


セイジくんの暗号をおじいちゃんに見せてみた。



「またいつ宇宙人が襲撃にくるかもわからんから、こんなことしてる暇はない!」と
断られてしまった。


仕方ない。
もう一度、自力で解くか。




僕は「暗号を解いてくれる宇宙人はいないかなー」と言いながら、空を見た。



空では、太陽がギラギラに光っていた。






あ!


「ひ」はお日様の「日」だ!



急いで、手紙を太陽の光に当ててみると
文字が透けて見えてきた。


「8月31日
 ↑   ←


8月31日…今日だ…


でも、まだ意味がわからない。


僕が悩んでいるとお母さんが
「今日の夕食は酢豚よ~」と教えてくれた。


酢豚…すぶた…す…


「す」は「酢」だ!!


酢で文字を書いたんだ!
炙ると文字が浮かび上がってくるはずだ。


僕は、急いでお母さんに紙を炙ってもらった。


すると、紙には
















「8月31日
っこ←


と書かれていた。




僕は、無我夢中で家を飛び出した。


早くしないとセイジくんと
2度と会えなくなってしまう。


靴を穿くのを忘れてしまったけど関係ない。


僕の足裏より
セイジくんとの友情のほうが大事だ。








セイジくんの家に着くと
セイジくんは、もう引っ越しの準備を終えて今にも車に乗り込もうとしていた。


「待って!!」


セイジくんは、僕の声に気づいた。



「暗号解くのどんだけかかんだよ…

遅すぎだろ!」



少し泣いてるように見えた。




「…ごめん」




僕達が、こうやって暗号も使わずに
普通に話すのは出会った時ぶりだった。






「まぁ、暗号解かれちまったから
ギリギリ俺の負けか…

もしお前が
暗号解けなかったら俺の相棒失格だから、
このまま挨拶もしないで
さよならしようと思ってたけどな!


さすが、俺の相棒だ!
褒めてやるよ!」




セイジくんは涙をふいて気丈に振る舞った。





「…また会えるかな?」


僕はセイジくんに聞いた。





「…当たり前だ!」





僕は、ずっと我慢していた涙が溢れだした。



「…こ、今度会うときは!

ウサギ分のサボテン年後の
ライオン月マイナススイカ日だよ!」





「おう!


じゃあ、集合場所は…

そうだなぁ…

ブランコと音楽室が交差する場所にしよう!」





「うん!絶対だよ!」





「暗号解けなくて
来なかったら許さねえからな!」







「セイジくんだってズルするなよ!」










セイジくんは、お父さんとお母さんに
連れられて車に乗った。





車の窓から何度も顔を出して
僕に手を振ってくれた。




僕もセイジくんの乗る車が見えなくなるまで手を振り続けた。






「絶対にまた会おうね…」























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