エミレーツまでアルシャビンでもダッシュで7分奇跡のフラットを突然退去することになった話

「エミレーツを一望出来るタワマン"風"団地に住んでいる」

ということは前回書いたが、 今度はそこに辿り着くまでの過程を書いてみたいと思う。

前回の記事がまだの方はこちらから。
僕が住むロンドンのタワマンの話


それは突然の出来事だった。

2020年4月、コロナ猛威の真っ只中、10年ほど住んでいたワンベッドフラット(1LDK)を退去せざるおえない状況になった。

正確には平身低頭「10年ほど住ませていただいていた」というべきか。いや、絶対言うべき。

なんせ家賃が相場の半額だったんだから!

退去の理由は...の前に、ちょっち家賃の話を。

ロンドンは世界屈指の物価高を誇る、恐怖のハイパーデンジャーシティだ。

特に地価の高騰はとどまることを知らず、家賃の上昇率たるや俺みたいな大貧民には大打撃!...

になるはずのところを、20年前の家賃で住ませていただいていたのだから、大家さんにはマジで一生頭が上がらない。そして自ら値段交渉を名乗り出てくれた前住人のAちゃんにも圧倒的に感謝している。今もこうしてアーセナルを追えているのはこの二人のおかげだ。間違いなく。

「20年前の家賃」というのは、わりとテキトーなのだが、これはあながち間違ってはいないと思う。

同じ建物内のフラット売買履歴をネットで確認してみると、1997年£50,000だったものが2020年には£440,000とある。

23年前と今では為替が60円ほど違うので円換算することは正直無意味だが、まぁ感覚的には500万円ほどの物件が4,400万円に大化け...といったところ。約20年で約9倍の大暴騰である。

また、エミレーツが鎮座するイズリントン周辺のワンベッドフラット、コロナ前の月額家賃相場は約£1,200〜£1,500 (上を見ればきりがないが2,000という物件ももちろんある)。

そんな中である。我が家はなんと£690というタダみたいな値段だった。
(10年前のスタート時は620くらい)。

嘘くさいよね?

わかる。俺も未だに疑ってる。

だって同じ建物内の家賃を調べたら、1,450ポンドっつーんだから。。。

まぁとにかく、別の世界線に紛れ込んだような、夢のような物件だったわけだ。

しかしワンベッドで£1,200〜とか...そんなクッソ高いロンドンに皆どうやって暮らしているの?

という疑問の答えはいたってシンプル。

高給取りや石油王のボンを除き、学生やシングルの人たちはほぼほぼフラットシェアでやりくりしている。一軒家やフラットを何人かでシェアし、家賃や光熱費を割り勘するアレだ。

しかしこれはあくまでシングルを対象にした話で、子連れファミリーとなると話は一変する。

フラットシェアは基本シングル、マックスでもカップル限定で、子連れのフラットシェアなぞ聞いたことがない(血眼で探せばあんのかもしれないけど、そんなフレンドリーなフラットあったら教えて欲しいマジで)。

しかしフラットシェアでさえも年々値上がりしていて、月600の部屋を探すのも年々困難になってきている。

そんな激烈な社会情勢の中で、

「ワンベッドフラット ノーシェアで £690」という異常性。

改めて、大家さんにジャンピングドゲザーの理由をおわかりいただけたと思う。

もちろんそこに住ませていただくには簡単ではあるが、大家さんの審査があった。直接お会いして話をする、いわゆる面通しってやつだ。

ところで、それまではというと、自分たちも御多分に洩れず、フラットシェアで、なんとかやっていた。

しかし嫁と二人、対人スキルゼロの我々が、いつまでもびんびんに尖った他の方々とシェアでロンドンに棲息出来るはずもなく、ぶっちゃけ限界は近づきつつあった。というか、すでに限界MAXだった。

しかしこの面接が通れば、フラットシェアとほぼ同額の家賃でフリーダムを手に入れられるのだ。

これはまさに、ワンベッドを、否、アーセナルサポ存続を勝ち取るための、人生を賭した絶対に負けられない戦い!(余裕でテレ朝越え)

その日僕は、脳内に鳴り響くワールドカップアンセム(でーでーででーでーでーでれれー♪っていうアレ)と共に、日本代表カズばりのエア胸当てで、フラットのゲートを大きく跨いだのだった。

つづく


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