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エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口


家でする 焼肉が大好きだった
いつもは ホットケーキを焼く
小さな丸い ホットプレート

剣のような先のコンセントをプレートに刺し
丸いダイヤルを回してランプがついたら
美味しい焼肉が始まる

煙が立ち込めると 
窓を開けろと誰かが言った

窓際でウチワを煽いで
暑い暑いと誰かが舌を出した


うちは 
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口 だった

こんな美味しいものは 
他にないと思っていた




やがて 中辛のたれで食べる美味しさを知った
やがて 辛口のたれで食べる美味しさを知った
やがて 塩で食べる美味しさを知った
やがて わさび醤油で食べる美味しさを知った

やがて 僕は
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口で
焼肉を食べることはなくなった



今 思うと
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口が好きだった頃の方が 焼肉のことが好きだった気がする

今 思うと
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口が好きだった頃の方が たくさん笑っていた気がする

笑うことなど意識してないのに
笑って笑って笑っていた気がする


今日、思い切って
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口を買ってみた

あの頃とは違う四角いホットプレート

お手入れしやすくて
片付けが面倒くさくないことが
こんなにも味気ないとは


『いただきます。』


そんなに煙も出ない

窓を開けろと言う者はなく
暑い暑いとウチワで煽ぐ者もなく
玉葱の輪切り集団を不器用に崩す者もなく


あの頃と変わらぬ味の
エバラ焼肉のたれ黄金の味、甘口は


すごく、すごく、すごく、
甘く、甘く、甘く、
べらぼうに美味しかった。



なんだ、僕、まだ大丈夫じゃん。


とか思った。



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