退屈は利用するのだ
治療の現状についての整理。
2回目の抗がん剤を投与されて2日目。
初日は比較的変化がなかったが、2日目になって食欲不振、しゃっくりなどの副作用が現れた。それぞれの副作用には対処する薬がある。薬だらけだ。飲むタイミングもバラバラなので、間違えないように管理するのが大変。
飲んだ薬の包材を看護師が回収し、飲み忘れを防ぐ仕組みになってはいるが‥。
点滴が続いているので、ベッドに横になっている時間が長くなった。
配信で映画観たりラジオ聴いたりするが疲れやすくて長続きしない。
退屈だなあ。
35年程前に長期入院した時、「退屈の利用法」という本を買った。
70年代のサブカルマスター植草甚一さんの著書だ。
◎植草甚一(うえくさ じんいち)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8D%E8%8D%89%E7%94%9A%E4%B8%80
私が入院した時、植草さんは既に亡くなられていたが、この本は最後の入院で綴られた最後のエッセイになる。本のカバーの見返しにこう書かれていた。
病院生活にはいってから、それが長引くだけの現在。退屈でしようがない。ぼくは「退屈でしようがない」心理状態の利用法はないだろうかと考えてみた。それから病院の事務室で買った90円のノートブックの表紙に「退屈エネルギー利用法」と大きく書いた。
入院時のエッセイは全体で50ページに満たない量だが、植草甚一スタイルは一貫していた。
入院してすぐに退院を通知する手紙を書くのだ。ショートストーリー風の手紙がとても気が利いていた。植草さんらしい遊びごころだ。
私もマネさせてもらった(すぐ影響される)。
私は植草甚一さんを勝手に師匠とさせてもらっている。10代から20代にかけて、映画に始まり、ジャズ、ロック、ミステリー、さらにドラッグやポルノまで、それこそ人生を楽しむための多くの知識を彼の著書から学んだ。
サブカルを堂々と饒舌に語れる時代の幕開けだった。
ゆるい書き出しから思わぬとこへ話が進む独特の文体にも魅了されたなあ。
私が入院を機にnoteを綴ろうと思ったのも、この時の記憶が原点にある。
「退屈の利用法」が35年以上経って、新しい道を開いてくれたような気がする。