魚男と迷う女(脚本のようなもの)
エスタの生鮮市場さんの横通り過ぎる度に考えてたこと。
ファイルの保存名適当にしがち。
登場人物
女
魚男
あらすじ
森の中をフラフラと彷徨う女が遭遇した少し変な男。まともじゃない者同士、気が合うのか合わないのか。 一 期一会、一瞬のできごととかなんとか。
(多分)森の中をぐるぐると歩き回る女。
近所に買い物に行ってきますといった軽装。
いつの間にか舞台中央に魚男が立っている。首から上が魚の頭(好きな魚の頭で良い)にウェットスーツか全身タイツか、ピッタリとした素材のものを着ている。
何回か魚男の周りを行き来する女。
ふいに魚人間に気づく。
女 「え。」
魚男 「あ、やっと気づきましたね。」
長い間見つめ合う魚男と女。
女 「は、うわ。」
嘔吐する女。昨日あたりから何も食べていないので消化物は出てこない吐き方。
魚男 「大丈夫ですか!」
魚男、女の背をさする。
女 「大丈、ぶわ、生臭っ、来ないで。」
魚男 「随分失礼な人ですね。」
女 「くさい、くさいわ、離れろ。」
魚男 「昔はこの辺りも人が来なくてキレイな川だったんですけどねえ、不法、滞在とかで川がすっかり汚れてしまったんですよ」
男が話している間も履き続ける女とさすり続ける魚男。
女 「やめて、ほんと、なんかべちょべちょしてる。」
魚男 「ああ、失礼、体液がちょっと。」
女 「体液。」
魚男さするのをやめる。
魚男 「陸はどうしても乾燥しますからね、今は梅雨ですからまだ少ない方ですよ。」
魚人間は本当にべちょべちょしててもいいしべちょべちょしている設定でもいい。
女 「なんなの、どっきり?ユーチューバー的な?」
魚男 「どっきりではないですし、低音楽器のたぐいでもありません。」
女 「えっなに?うえっ。」
ちょくちょく嘔吐する女。
魚男 「水でも飲みます?」
女 「いい、いらない、きたないんでしょ。」
魚男 「そうですね。」
女 「…中途半端に飲まなきゃよかった…。」
魚男 「え?」
女 「べつに、独り言。」
魚男 「でかい独り言ですね。」
嘔吐落ち着く。
魚男 「…落ち着きました?」
どこからかペットボトルを取り出し差し出す魚男。
恐る恐るペットボトルを受け取り飲もうか躊躇する女。
魚男 「大丈夫です、いろはすです。」
女 「いろはす。」
魚男 「いろはすとおんなじ成分です。」
女 「いや、いらない、怖い。」
魚男 「セイコーマートで百円もするものが、ただで飲み放題ですよ?」
女 「セコマのはフタがちゃんと閉まってて異物混入の可能性は限りなくゼロ
に近いし、てかセコマ行くの?」
魚男 「行ったことはないですけどたまに拾いますから、領収書的な。」
女 「へー」
魚男 「では私が先に飲みますからそれで安全を証明しますよ。」
女 「いや全く証明にならないわ、なんか身体の構造から色々違いそうだし。」
魚男、ペットボトルをそっと地面に置く。
魚男 「吐き気大丈夫です?」
女 「え、あ、臭くない」
魚男 「嗅覚が麻痺したんですよ、良かったですね」
女 「良くなくない?」
魚男 「人間の良いとこですよ、適応能力が高い」
女 「…ここら辺でつれる場所ある?なるべく人目に付きたくないんだけど、ここって案外人来る?」
魚男 「汚くなるのでやめてください。川が汚れます。あと案外、人、来ます。」
女 「はぁ、面倒だな…別の場所探すのもだるいな。」
魚男 「向いてないんじゃないですか?」
雨がぽつぽつ降り始める音。
女 「雨だ。」
独り言のように女が呟いた。
魚男 「あ、ペテルギウスって星があるんですけどね、もうすぐ爆発するらしいんですよ、正確には爆発を観測できるということですが、自分が生きている間に星が爆発するところが見られるとか、ちょっと嬉しいですよね。」
女 「え、今なんでその話する?」
魚男 「いや、ただ話したくなったんで、前にここに来た人が持ってた本に書いてましてね。」
女 「へーこんなとこに本持ってくるんだ。」
魚男 「結構みなさん色々持ってきますよ、本にCDにジャンプ、会社のボーリング大会のトロフィー、 テンガに機密文書に」
女 「テンガ?」
魚男 「結構多いです。」
女 「頭おかしいな。」
魚男 「あっ流石に使ってませんよ?」
女 「聞いてないし世界一いらない情報聞かせんな。やっぱりここ嫌だな、もっとなんか人来ないとこない?」
魚男 「はは、ありませんよ。」
女 「…」
魚男 「まだ来なくてもいずれ来るでしょ、来なくても、なんかドローン?とかで見つけられてしまいますよ。」
盛大に息を吐く女。
女 「ほんと、臭い慣れちゃった。」
魚男 「雨のおかげで体液出さずにすみます。」
雨の音が少し強くなる。
女 「…雨だなあ。」
魚男、女をじっくり見る。
女、それに気付き魚男を見るがすぐに目をそらす。
魚男 「なぜ魚は声を、」
女 「あ、魚なんだ」
魚男 「そんな分類はどうでも良いんですよ、なぜ魚は声、鳴き声を発さないと思います?発さないんじゃない、発せないんです。そのように、進化してきたんでしょう。五月蝿いですからね。発することが出来た祖 先は怯えた人間によって叩き殺されました。そこから逃れた都合の悪い真実を語る祖先は捕らえられた切り刻まれありとあらゆる機械や試薬に付けられました。恐ろしさと無知からですね。虫も泣きますが一瞬で潰せる。鳥も鳴きますが美しい。そのうちに私たちの、声を発する器官を持った祖先はほとんど消え去りました。わたしの近い先祖はなにがなんやら偶然こういった進化をとげ、生き残った。生きてしまったのです。ここで生きているのはわたしだけです。父も母もわたしが幼い頃に亡くなりました。先天性のものです。わたしも長くは生きられません。」
なるべく早口で喋る魚男。
女、魚男の話を理解しようとするがあまりよくわからない。
女 「…何歳なの?」
魚男 「五年ほど生きてます。」
女 「五歳、…ご両親はどっちが魚だったの?」
魚男 「魚と人間が交配できるわけないでしょう、学校行ってました?」
女 「一応。」
魚男 「それは偉いですね。」
女 「そうかな。」
魚男「ええ。」
女 「今はどこにも行ってないけど。」
魚男 「そうですか、それは偉いですね。」
女 「褒めてくれるbotか。」
魚男 「ぼっと?」
女 「なんでもない。」
魚男 「偉いんですよ。」
女 「そう……ご両親ともそう、あなたみたいだったわけ、その頭部が、」
魚男 「あなたはよく喋りますね」
女 「あなたもね、わたしもともとは良く喋る方だった、多分、いやそうでもないか、いや、ずっと小さい頃はよく喋る子だったかなぁそれこそ五歳くらいのときなんか、多分、全然思い出せないや。」
魚男、女に少し近づく。
女、その分離れる。
魚男「…私たちはあなたがたより記憶力はありませんが、水から教えてもらいます。水は、この世界にできてから今までのことを全て記憶しているのですよ。私はもう明日にでもあなたのことは忘れますが、雨や川にあなたがいたことを教えてもらうでしょう。」
女 「なにそれ。」
魚男「そういうもんなです、だから、覚えてなくてもいいんです。」
女 「そう、なんか便利。」
魚男「はい。」
女 「なんかいいね。」
川が流れる音。雨音が強くなる。
女 「じゃあやっぱりここにしよ、あなたに覚えてもらえるんでしょ」
魚男「やめといた方が良いですよ。」
女 「なんで。」
魚男「だからここ結構人来ますから、色んな記憶でごっちゃごちゃです。」
女 「え。」
魚男「あなたをテンガを持ってきたロマンチストな死体として思い出すかも知れませんよ。」
女 「事実無根な…最悪。」
魚男「でしょう。」
女 「なんかめんどくさくなってきちゃった、雨強くなってきたし、帰る。」
魚男「そうですか、では。」
女 「もうここにはこないわ、あなたに見つかると面倒だし、川とか汚したら嫌でしょ。」
魚男「はい。」
女 「…あなたは誰かにわたしの話をするの。」
魚男「わかりません。」
女 「そう。」
魚男 「はい。」
見送る魚男と振り返らず去る女。
暗転
明転
テーブルと椅子と椅子に座る女。テーブルにはスーパーの袋が置かれている。
スーパーの袋から刺身(盛合せ)のパックを取り出す女。
女「奮発しちゃった。」
刺身を食べる女。
女 「うまいな。」
地図を読みながら刺身を食べる女。
女 「さて、どこにしようかな。」
暗転。了。
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