短編小説「勝者の価値」
「うさぎとカメ、真の勝利者はどちらか」という題の本を、図書館へ借りに行った。
ある週末の午後、仕事でくたびれた体に鞭打って、私は最低限人前に立てる程度に身なりを整えた。図書館は自宅から徒歩15分ほどの場所にあり、アクセスは悪くない。私は歩く速度こそ遅いものの、散歩は好きだった。
それでも足取りが重いのは、図書館という場所にひどく苦手意識を持っているからだ。
「うさぎとカメ」
大抵の子供であれば知っている、うさぎとカメが競争をするお話だ。自分の能力に胡坐をかいたうさぎよりも、地