音の好み
音楽の好みの話はよくされるだろうが、音の好みの話は音楽をやってない限り、議論されることはかなり少ないだろう。
私の音の好みの話をしようとすると、私が小学生だった頃に遡らなくてはならない。
あの頃、引っ込み思案すぎて友達が作れなかった私は学校に通うのが苦痛だったが、授業を受けるのは好きだった。特に音楽の授業はいつも楽しみだった。
音楽好きは確実に父の影響だった。車の中では常にクラシックが流れていて、家でも大音量でクラシックやビートルズやキング・クリムゾンやピンクフロイドを聴いていた。そのため私の音楽の趣味はかなり偏ったものになったのは言うまでもない。
私の小学校では小学3年の秋から部活動に入ることが許可された。私は他の部活動には目もくれず吹奏楽部に入部した。
吹奏楽部は運動会で衣装を着て、鼓笛隊としてパレードの花形を務める。私はそれを見て「絶対にやりたい!」と思ったのだ。何を?ベルリラだった。
ベルリラは言ってしまえば持ち運びのできる鉄琴である。パレード中、他の楽器がガチャガチャブーブー鳴る中で凛と校庭に響き渡るベルリラの音に崇高さを感じた。
ベルリラをやりたくて吹奏楽部に入ったものの、打楽器志望の子は意外と多かった。最初のうち、何故か個人練で打楽器志望の子達と楽器をやらされていた。つまりほったかされていた。
そのうち先生がやってきて「サックスを募集してるからやってみない?」と言われた。サックスは金色でかっこいいとは思ったが大きいしなんだか複雑そうで私に吹けるとは思えなかった。
私は言われるがままサックスのマウスピースを持たされ吹いてみたら、音が出た。それで、先輩や先生に上手いこと乗せられてサックスパートに入ってしまったわけだ。
サックスは音程は安定しないが音を出すのは簡単なのでモチベーションは維持しやすい。私はどんどん練習して上達した。
そのまま高校、大学でもサックスを続けてきた。社会人になってもセッションなどに参加してきた。
そして妊娠出産で楽器や音楽から離れて、やっと気づいたのだ。
私はそこまでサックスの音好きじゃないな、と。
もともとサックスやりたくて音楽を始めたわけではなかった。やってるうちに好きになるかな、と思ったがやはり好きになれなかった。嫌いではないが好きではない。
唯一、ジョン・コルトレーンのサックスは好きだが。あんな音、私には出せない。
私が好きなのはベルリラやピアノのような丸い音なのだ。ジャズやっていた頃も、ピアノジャズばかり聴いていた。
サックスじゃなくて打楽器をやりたかった。そしてグロッケンやピアノでジャズを弾けるようになりたかった。
だが、今更何言っても遅いのだ。
サックスに明け暮れた日々が無駄だったとは微塵も思わないし、サックスに対して愛着はある。
それでも好みってなかなか変えられないのね。今からジャズピアノとかやれるかしら。
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