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愛しのアンソニーと、スクラブオンザヘッド。

痛みが、ウネリのように訪れる。何となくだが、すい臓が痛くなると、死んでしまったひとが寂しがっているのかなァと、思ったりもする。そんなことは全くもってないのだろうが、それでもなんとなく、そんなことを殊更に思うのは確かだ。少し、舞台の話をしよう。わたしは今回、PANDORAという舞台を主催している。もともと自分のベリーダンススクール"THE LIQUID HAREM"でのはじめての、発表会込みのショーになるのだが、正直なところ、発表会どころのクオリティではなくなっている。わたしのスクールに来てくれるダンサーさんたちは、みんな本当に個性的で、クリエイティブだ。「これをやりたいが、どうやってダンスで表現すればいいのかわからない」と言った悩みが多いような気がする。気持ちは良くわかる。もちろん、伝統舞踊の流れを深く、大きく汲んでいるので、どうしても「その曲では踊れない」だの、「その表現はおかしい」だのと、繋がっていってしまうのは確かだ。だがしかし、わたしはそれが本当に寂しいなァと感じてしまう。自分が踊りたい曲があれば、なんとしてでも踊ればいいじゃァないか。そこに、純粋も不純もあるか!と、いつも思ってしまう。そしてそれは、わりかし正しいと思っている。なので、わたしのところに来てくれる生徒さんたちはみんな、「この曲が踊りたいんです•••」というのが比較的はっきりとしている。とてもいいことだ。そして何よりも、わたしは振り付けをするのが本当に苦手だったのだが、今回の舞台では彼女たちのために、たくさん振り付けをした。振り付けにも個性がある。わたしは基本、即興で踊る。それは、会場の熱気やお客様の色、その場のテンションなどが毎回必ず違うからだ。どれひとつとして、同じものなんてない。写真と同じように、その美しい瞬間は二度と訪れない。小さい頃、絵をたくさん描いていた。「じゆうちょう」は気がつけばすぐになくなり、裏側や隅の方を埋めるように絵を描いていた。それを見た母親がある日、「じゆうちょう」をプレゼントしてくれた。わたしはとてもとても、嬉しかった。それはもう、喜び上がって、月や太陽まで走って行けるほど。しかしそれと同時に、悲しくもあった。「ああ、この嬉しくて幸せな瞬間は、全く同じ瞬間は、二度と訪れないのだなぁ。」と、感じていた。時の流れは、水をすくった手のひらに似ている。水をすくい上げる度、指の隙間から、総てが、こぼれ落ちてしまう。わたしは大切に、抱き止めたいのに、それはけして叶わない。わたしはいつもそれが、悲しかった。だからこそ、お誕生日も、記念日も、なにかをプレゼントしてもらうときも、おやつの時間でさえも、なにもかもが、悲しくてたまらない子供時代だった。みんな同じことをきっと、感じている。感じながら、きっと、笑ってる。そんなことを思う日もあれば、どうしてみんな、この気持ちがわからないのだろう、と憤ったり悲しくなったりする日もたくさんあった。唐突だが、すい臓に絡まっている腫瘍のことを、"アンソニー"と呼ぶことにした。ウム。今日は、アンソニーが暴れている。きっと、彼は彼なりに、わたしに言いたいことがあるのだろう。ならばわたしは、アンソニーの話を聴くしかない。聴く。ただ、ひたすらに、真摯に、というよりも、内臓に耳を澄ませる。きっと、アンソニーは、アンソニーにしかわからない、なにかがある。わたしは抗がん剤を完全に拒否している。理由は様々だが、一番簡単な理由は、「ハゲたくない」からだ。こう言うと語弊があるだろうし、心ない言葉と捉えるかたもいらっしゃると思う。だが、わたしは、誤解を承知でこの話をする。コロナのワクチンの時も、実は、全くと言っていいほど同じことを思った。コロナウィルスが流行り始めたとき、身のまわりをとにもかくにも「消毒」するという動きが強まった。みんな、あのときは、どう思ったのだろうか。わたしはというと、「げっ、やべーーー!!!俺、消毒されちまう!!!」ということを思った。自分の本能は、正直なところ完全にウィルスサイドだったのだ。でもこれは、なにも間違いではないと思っている。なぜなら、人間はウィルスと共に、生きている。なんなら顔には信じられないくらいの顔ダニ(通称ニキビダニ)がいて、つねにわたしたちはこのダニとともに、生きている。愛しのあのひとと、頬擦りしたりキスをするたびに、わたしたちの顔に住むダニちゃんたちも、おそらく頬擦りしたりキスしたり、交尾をしているかもしれない。そう考えると、ダニレベルから愛し合っているのか、というところに異常に興奮したりもするのだが、とにもかくにもわたしたちの身のまわりを完全に殺菌するのはどうかと思う。そしてこの感覚は、おそらくかなり、バイオリズムに則った、正しいものなのではないかと、最近感じている。アンソニーは叫んでる。アンソニーは歌ってる。アンソニーは踊ってる。そうだ、きっと、そうなのだ。暴れよう、一緒に。叫んで嘆いて、そうして最後は、笑っていよう。わたしはアンソニー、君のことを、考えない日はないのだよ。すい臓なんて、サイレントキラーだなんて、普段ひとに言ってもあんまりわかってもらえないからって、そんな、いじけるなよ。俺は、ちゃんとみてるよ。だから人生のスクラブを組もうぜ。俺とお前、ふたりで世界を創るんだぜ!!!!そんなこんなであと18日。どんな舞台になるのかなァ。みなさん、どうぞ、お楽しみに。

MINAMI Stevens Photography


あなたとわたし、2人は出逢えた。
光と闇で、絵を描きます。

あなたの物語、聞かせてください。

コトバと写真で、残します。

被写体となってくださる方随時募集中✨

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💌 minamisvp@gmail.com

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