第22段 何事も、古き世のみぞしたはしき。

徒然なるままに、日暮らし、齧られたリンゴに向かいて云々。

どうも随筆文というのは気がつけば文句ばかり垂れるようになっていくようで気が滅入ってしまうときがある。今がその時だ。なかなかに文章が書けなくなっている。今までは書けないときはどうしようか、と思ったり放置することがままあった。しかし今は違う。書けないなら書けないで、書けないという事実をうだうだ述べることも1つの手なのではないかと思っている。まさに、齧られたリンゴに向かいて云々しているのである。さてさて、古い言葉と新しい言葉について、ということでやはり昨今ではなかなかに面白い言葉が増えつつあるように思う。私が特に苦手な発音、というか言葉がまさに『映え』である。ばえ、という風にすぐに発音できない。どうしても『ぱえ』と言ってしまう。それをいうたびに誰かに笑われる。『みなみさん、ぱえって何ですか。パラパラ見たいじゃないですか。』ここだけ切り取ってみたらもはや何が何だか、という状態である。逆に言えば、お前ぱえを知っててパラパラも知っているのか・・・という、人類(学生)に対して何やら恐れ多いものを感じてしまう。私の世代ですら、パラパラはギリギリといえよう。さらにその昔、ギャル語というものがあった。今でも存在しているのだろうか。いわゆる『チョベリバ』『にゃんつく』『ケツカッチン』などである。これはもはや世代ではないのでYouTubeなどで見て知ることが多いのだが、私のお気に入りの動画をここで紹介しよう。

いわゆる日本昔ばなしの『おむすびころりん』をギャル語に訳しているのである。これはもう、腹を抱えて笑う。絶対に電車の中で見てはいけない代物である。しかし見て欲しい。そして盛大に吹き出してもらいたい。個人的にオススメなのがうさぎが登場するところと、向かいの爺さんが穴に落ちてネズミに接触する場面である。これを初めて見たとき、字幕なしではもはや何を言っているのかわからなかった。同じ島国に住む人間、しかも割と近くに住んでいる人たちがこのような言葉を話し、それが全くもってわからない、というのはなかなかに面白いことなのではないかと思った。ギャルは1つの民族であり文化であるとも言える。私も昔、御多分に洩れずギャルだった。私は姉ギャルだったのだが、網タイツをはき、パイソンやゼブラ柄を着こなし、母親に『チャンピオンベルト』と称された殺傷能力の高い(いわゆるごつい)ベルトをつけ、明くる日も明くる日も渋谷に通い詰めていた。マルキューの前でたむろし、パールレディでタピオカを飲んで、毎晩呑んだくれては誰の家に泊まるのかわからないような生活をしていた。私には定期的に自堕落ターンがある。自堕落ターンが来ると、本能的にわかる。『あ、きたな。』というように、まるでガンダムのシャアが現れた時のように、わかる。(あの金属音を想像して欲しい。)自堕落ターンが訪れるとほぼその生活に耽り、何もしなくなる。常に意識が朦朧とし、現実と夢の境目すらなくなり、地上に出ていくことがほぼなくなる。地中に埋まる。常に誰かと冬眠しているような生活になる。しかしそれもある日、ぱったりと終わりを告げる。ギャルの時代も、自堕落ターンがそれなりに続いた後、何事もなかったかのように地上に舞い戻った。思えばあの時、よく薬をやらなかったなと思うこともあるが、単にチャンスがなかっただけだと思う。まぁ、仮に手を出していたとしても、私はどちらかと言えばキマらない方の人間だとは思うのだが。さて話が逸れたが、最近ギャル時代の話をすることが多い。何年か前に『自分は適度なギャル返りをします。』と言ったのがきっかけなのか、今現在はそんなような感じになっている気もする。ギャルと言っていいのかわからないが、あの時の名残からか、そう言った話や、女の子に『私ギャルに憧れててギャルになりたかったんです。だからみなみさんみたいな人が好きなんです。』と言われたりもする。一瞬『なんだそれは』と思ったりもするが、悪い気はしない。そしてギャルというのはマジョリティーではないが、一定数の人間にとっては憧れの存在だったりもするのだなというのは新しい発見だと思った。そう思うとやはり、ギャルはある意味一種の部族であり文化であり、しっかりとした礎のようなものを気づいてきた民族なのだなと感じる。やはり私は筋金入りの民族学者だ。今更だが、私は一体この記事に何を書いているのだろう。今日渋谷に赴くからだろうか。そんなようなことを関連して書いているのかもしれない。渋谷は落ち着かない街だ。原宿や表参道の方がまだゆったりと過ごせるような気がする。渋谷は止まったらやられる、という認識がいつも強い。ナンパもそうだし喧嘩も職質もそうだ。自らが歩みを止めたとき、その瞬間に何もかもがカオスとなって勢いよく押し寄せてくる。あの時代の本能が私に語りかけているのかもしれない。『立ち止まるな、歩け。そして闘え。』そんなようなことを言われているような気がしてならない。そんなこんなで時間が来たので、約束の戦地に赴くことにする。

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