(最終回)「赤い通貨」デジタル人民元は仮想通貨を飲み込むのか?
こんにちは、金融ブロガーの本郷マサシ(@Daredemo_Unyo)です。
第一回「仮想通貨とはなにか?概要や投機性について」
第二回「仮想通貨の安全面と先進性」
と仮想通貨についてお話してきましたが、今回が一旦最終回。
投機性・将来性で人気の集まる仮想通貨に対し、最近露出が多くなっているデジタル人民元をはじめとした「デジタル通貨」。
最終回の本記事では、このデジタル通貨と既出の仮想通貨の違いを分かりやすく解説、通貨の未来を予測します!
国家に縛られない仮想通貨と国家が後ろ盾のデジタル通貨
そもそも、デジタル通貨ってなんでしょう?
その概念は「デジタルに発行・流通する通貨」であり、広義にはビットコインをはじめとする仮想通貨、PayPayや楽天ペイのような電子マネーも含まれます。
さらに最近では、中央銀行の発行するデジタル通貨「CBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行発行デジタル通貨)」が注目を集めており、デジタル通貨=CBDCとしているメディアも見受けられます。
さて、仮想通貨は前回の記事でも紹介したように国家に縛られない通貨。仮想通貨は国家が発行するわけではなく、流通量はブロックチェーンとマイニングによって決まってきます。
一方の中央銀行が発行するデジタル通貨は国家を後ろ盾とし、発行・流通もすべて中央銀行がコントロールします。その意味では、紙とデジタルという形に違いこそあれ、1万円札や100ドル紙幣となんら変わりませんね。
リブラ発行とFacebookザッカーバーグvsFRBパウエル
2019年にFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグがデジタル通貨「リブラ」の発行を発表したとき、ほぼ同じタイミングでFRBパウエル総裁が批判的コメントを出すなど欧米主要各国の中央銀行トップは一斉に色めき立ちました。
ビットコインなどの仮想通貨に対して「お手並み拝見」とのんびり構えていたのとは、180度違った反応でした。総裁たちは、一体何に警戒したのでしょうか。
中央銀行と後ろに控える金融当局が怖れたのは、発行体であるフェイスブックの存在です。従来の仮想通貨とリブラが決定的に異なるのは、利用者数27億人(中国・アメリカ合衆国・日本を合わせた人口より多い)に達するプラットフォーマーが流通・発行している点です。
フェイスブックユーザーが一斉にリブラを使い始めたら、FRBをはじめとする中央銀行による通貨コントロールは行き詰まり、ひいてはドル基軸通貨体制も崩壊する…欧米の中央銀行はそれを怖れているのです。
一方、習近平率いる中国共産党政権は、まったく異なる動きを画策していました。
打倒ドル支配!習近平の野望とデジタル人民元
冬季北京オリンピックが開催される2022年2月を視野に、中国はデジタル人民元のローンチを急いでいます。深圳では市民5万人に200元(約3000円)を配っての実証実験も進んでおり、今後28都市に拡大するようです。
中国のねらいは、なんといっても決済取引で圧倒的優位を誇るUSドルの打倒にあり、究極的にはアメリカに依存しない大中華共栄圏を構築したいようです。
もう1つは、国民への監視強化です。デジタル通貨なら個人の利用履歴や保有資金の補足も容易で、行動をチェックしやすいのです。
ちなみに中央銀行の発行するデジタル通貨CBDCは、超大国や先進国の専売特許ではありません。世界で初めてCBDC「サンドダラー」を発行したのは中米カリブ海のバハマですし、2番手もカンボジアの「バコン」です。
CBDCと仮想通貨は共生できるのか
この記事を書いている途中に、最新ニュースが飛び込んできました。ビットコインの価格が18000ドルを突破、過去最高値の2万ドルも照準に入ってきたようです。
国内でも、メガバンク3行が独自運用のデジタル通貨(厳密な意味では仮想通貨と違うようですが)について大規模な実証実験を始めるようです。
まだまだ仮想通貨も、健在ですね。
安心の法定通貨CBDC・利便性と安定性のリブラ・利便性と投機性の仮想通貨がそれぞれの経済圏を築き、存在感を競い合っている…マサシはそんな未来を予測しています。
終わり。