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楽天2024Q4決算の実態を暴く――非GAAP指標とモバイル損失の裏側を徹底解剖


はじめに

みなさんは「楽天」と聞くと、ECやクレジットカードなどの便利なサービスを思い浮かべるでしょう。また、特に2024年は楽天グループが「モバイル事業が着実に改善」「営業黒字化を達成」とアピールしている年でもありました。
しかし、そうした好調な発表を鵜呑みにしても大丈夫なのでしょうか? 実際に決算資料を確認すると、「一時的な利益計上」や「独自指標(Non-GAAP)の活用」によって、本来の姿とは少し違った姿を見せられている可能性があるのです。

この記事では、楽天の2024年第4四半期決算の裏側を批判的かつ分かりやすく読み解いていきます。ご自分の投資判断や企業分析にぜひお役立てください。


1. 楽天が好調をアピールする“Non-GAAP指標”とは?

1.1 GAAPとNon-GAAPの違い

楽天は決算発表の中で、GAAP(IFRSなど公的な会計基準)と別に「Non-GAAP」や「独自の営業利益」などを示しています。

  • GAAP (IFRS) は、企業が世界共通のルールに則って数字を公表するための基準

  • Non-GAAP は、企業が独自に調整を加えた数値

たとえば、一時的な損益(株式再評価益・減損損失)や株式報酬費用、買収に伴う無形資産の償却費用などを除外したのがNon-GAAPです。この調整によって、「実際の事業パフォーマンスが把握しやすくなる」というメリットは確かにありますが、都合の悪い費用を外してしまうというデメリットも否めません。

もし企業がNon-GAAP利益を前面に押し出して「黒字化」を強調している場合には、「どの費用を除外しているか」をしっかり見極めることが必要です。


2. 楽天モバイル事業の“損失補填”と黒字化アピール

2.1 月次EBITDA黒字の実態

楽天はモバイル事業で巨額の投資を行い、長らく2,000億円を超える大赤字を計上してきました。2024年に入ると「月次ベースでEBITDA黒字を達成した」と発表し、メディアでも「いよいよ楽天モバイルが黒字化?」と大きく取り上げられました。

しかし、EBITDAは設備投資の減価償却費などを差し引かない利益指標です。つまり、「モノの消耗分」を含まない段階での黒字にすぎず、さらに「月次」という短期的なスパンの話です。年間ベースの営業利益ではいまだに2,000億円以上の赤字という数字が出ているため、モバイル事業がほんとうに黒字になったわけではありません。

2.2 どうやって損失を補填しているの?

では、その巨大なモバイル赤字を楽天はどのように補っているのでしょうか。

  • 金融事業(カード・銀行・証券)などの黒字

  • リースバックや資産売却による資金確保

  • 楽天カードや楽天証券株式の一部売却

こうした手段によりグループ全体の資金をかき集めて、モバイル事業を支援している構図です。裏を返すと、モバイル単体ではまだ赤字が大きいため、黒字事業や資産の切り売りによって穴埋めしていると見ることもできます。


3. フィンテック事業は本当に安泰?

3.1 収益の質を見極める

楽天といえば、ECだけでなくクレジットカードや銀行・証券といったフィンテック事業が非常に好調です。ここで得た手数料収入や金利収入が、楽天の大きな収益源となっています。

しかし、これまでの超低金利環境や市場の好調など外部の追い風が収益を押し上げてきた面もある点には要注意です。金融業界では以下のようなリスクが常にあります。

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