【第二言語習得論】デュアルプロセス理論から学ぶ英語習得 -①概要編-
こんにちは!
MONEY ENGLISH コーチのFumikiです。
(最初に断りを入れておきますが、当記事はかなり細かく、理論的な内容が中心の難しい内容になっています・・)
ちなみに、概要の理解よりも、実践的な内容・テクニックが知りたい!という方はこちらの記事から読んでみてください。
https://note.com/money_english/n/n676c14944030
さて、突然ですが、
皆さんが英語学習で一番苦戦するところとはどんなところですか?
例えば、ほとんどの方が英語学習で壁に当たるのが
・単語の暗記にすごく時間がかかってしまう
・せっかく暗記したのにすぐ忘れてしまう
・なかなか学んだフレーズ等が定着しない! 等
の暗記に関するお悩みだと思います。
「そもそもどうやって効率的で効果的な暗記って出来るんだろうか・・」
と心のどこかで思ってはいるけれど
「まあ、とりあえず今までのやり方で・・」
みたいなになってしまうのが大抵の流れですよね。
しかし、これらの問題にはよく考察して見ると共通点があるんです!
というか、よく考えなくても明白ですが、結局のところ全てこれらのお悩みは記憶の定着が根幹の課題にありますよね。
「そんなの当たり前じゃん!」と思う方もいるかもしれません。
しかし、脳と記憶がどのような仕組みで働いているかを知るだけで、
あなたの学習意識と暗記そのものの方法が
明日から抜本的に変わる!のだとしたら、少し気になりませんか?
というわけで今回はその記憶を掘り下げてメカニズムを知り、みなさんの英語学習に役立てられるよう、詳しく解説していこうと思います!
本記事は3本立て(概要編・実践編・テクニック編)になるので、少し長くなりますが必ず皆様の学習に役立ちますので是非最後までお付き合いください!
この最初の記事では記憶の仕組みの大枠(理論)を理解していきます。
そして、全ての記事を読んで頂くと、
記憶のメカニズムを利用して
英単語&フレーズを効率的に覚えて、これからずっと使える自分なりの学習法を導き出せるようになります!
英語と記憶の切っても切れない関係
そもそも私たち人間は世の中や自分の周りで起きたことを
「見たり、聞いたり、感じたり」して記憶に残すことで毎日を生きていますよね。
ただほとんどの事は明日には忘れたりしちゃいますが・・
その上で例えば、朝のコーヒーを何不自由なく淹れたりするときも必要になってくるのが私たちの記憶です。
コーヒーを淹れることと記憶に何の関係性があるのか?ということを例と共に説明します。
最初にコーヒーを淹れようと思った時のこと、皆さんは覚えていますか?
その際は、手順が分からず時間がきっとかかったのではないでしょうか。
手順や必要な分量などを調べたりしましたね。(人によってはコーヒーフィルターが破れた!美味しくない!等失敗もあったことでしょう)
そうして、何回か繰り返して覚えていくことで無意識的に美味しいコーヒが淹れれるようになったはずです。
当たり前すぎてピンと来ないかもしれませんが、コーヒーを淹れるという何てことない事でも、初めての時には何かしらの情報を調べてやってみる必要があったということです。
つまり、新しいことが出来るようになるには、その動作に必要な情報を記憶のストレージに入れ込む!ということをやっているわけです。
英語学習というのは実践も勿論大事ですが、やはり同じく重要なのは必要な英語知識を記憶に蓄えることが不可欠!ということなんです。
英文を読みたい!書きたい!聴きとりたい!話したい!
そのどれにも実践だけではなく、英語の基礎的な知識が必要ということです。
英語を学ぶ上で最も大事な機能は「記憶」
コーヒーを淹れるような簡単なスキルであれば、今までの知識や似た経験を通してすぐに覚えることが可能ですが、例えば車の運転となると話が違います。
英語学習はどちらかというと初めて自動車教習所に通うことと似ています。車の運転スキル、標識の意味、交通ルールなど今まで知らなかった、覚えなければいけない真新しい情報の量が、コーヒを入れる作業に必要なそれとは大きな差がありますよね。
覚えなければいけないことが慣れないことで尚且つ、必要な情報が多ければ多いほど、
多くの情報量を入れるための時間とその知識を試す練習が人間の脳には必要になってきます。(たくさん負荷がかかるということです)
だから英語学習にはインプットが大事!という論調をたくさんどこかで見かけたことがあると思いますが、それはこの理由からです。
(そもそも記憶に英語の知識を入れないことには英語を実際使うステージにそもそも立てないのです・・)
何故記憶が定着しないのか?(記憶の大枠を知る重要性)
ここまでは、「そりゃそうだよね・・」と思うような内容かもしれません。
そして、
「じゃあとりあえず英語の知識を入れればいいんだからとりあえず英単語を覚えてみよう!」
と皆さんは行動に移してきたはずです!
ただ、多くの皆さんが
「暗記に時間がかかる」
「なかなか覚えられない」
等、色々な壁にぶちあたる訳です。
ここで最初の問いかけにあった
「暗記に時間がかかる」・「単語やフレーズの定着に苦戦する」というお悩みが出てくるわけですが、これは学習の方法と記憶の仕組みの歯車が合っていないことに原因があるのです。
少し小難しい話にはなりますが、
ここで本題の「デュアルプロセス理論」が出てくるわけです。
この理論の理解を通して、新しい情報の記憶から記憶の定着までの大きな枠組みを理解するところから始めてみましょう。
デュアルプロセス理論とは
デュアルプロセス理論とはズバリ人間の取る行動や思考は2つの機能から成り立っているという理論です、
その2つの機能はそれぞれシステム1、システム2と呼ばれていますが、それらは求められているものによって個別に活動します。
例えば、片方のみを主に使ったり、システム1・システム2が同時に動いたり!と、実際に取り組んでいるもの次第で柔軟な動き方をします!
システム1:無意識的(自動)に働き、無意識な思考や行動で機能します。
システム2:意識識的(能動)に働き、複雑な物事を考えたり計算したりするときに機能します。
詳細が気になる人は下記を見てみてください。
コーヒーの例に戻ってこのシステムを説明すると、
コーヒーを初めて入れる時は自分がすること、考えること全て意識的なはずです。なので、システム2が動くわけです。
システム2での動作・行動に慣れてくると、考える必要もなく習慣として無意識(自動的)にコーヒーを淹れられるようになっているはずです。
この時点ではシステム1が働いていて無意識に手順を思い出し行動に移しているわけです。
システム1と2の違いが何となく分かったところで、まずはシステム1について少し詳しくみていきましょう!
システム1:無意識的に自動稼働であなたをアシスト!(思いだす&取り出す)
システム1は無意識の中、脳が覚えた記憶を思い出して、必要な記憶を取り出す働きをするので簡単な問題や日々の生活はほとんどこの機能が働いています。
無意識で自動的なので判断がとても早いです。
そもそもお皿の洗い方やテレビの付け方や簡単な掛け算の答えなどいちいち考えていたら頭がパンクしちゃいますよね。
難易度が高いものもシステム1までいけば摩訶不思議、無意識でできることになっているわけです。
車の運転で例えると通勤ルートの運転に慣れたドライバーの思考です。
運転して目的地に着くということには特に考えてはなくて、何なら好きな曲を歌ったり、明日の予定などを立てられるわけです。
英語学習をしている皆さんが目指すべきは英語の知識をこのシステム1で使えるようになるという状態ですね!
先ほどシステム1とシステム2が順に動くのではなく同時に機能したりすると言いましたが、それが人間のできる複雑な動きや考えを可能にするわけです。
一度新しい知識をシステム1で運用できるようになれば、その知識をもとにさらに深い知識を理解したり難しい問題を解けるようになります!
それでは次にシステム2について見ていきましょう!
システム2:意識的に考えて新たな問題を解く!
(考える&理解)
システム2はより意識的で脳のエネルギーを必要とする機能です。
何か難しい問題や判断を求められたときに働くのでシステム1と比べ処理は遅いですが、複雑な問題を正確に捉えることができます。
持っている知識を利用して解かないといけない応用問題や、どのケーキが太らないかと吟味している時というのは考えるのに時間がかかりますよね。
これは脳が意識的に計算や比較をして最適な回答を見つけようと回転しているわけです。
冒頭でも触れましたが車の運転でいうと教習所で標識や交通ルール、車の運転の仕方を習っている時ですよね。
全てが慣れないことで運転するたびに気を張っていたはずですし、判断もゆっくりだったはず。
ただ運転熟練者になったからと言って、もうシステム2を使うことはないというわけではないのです。
初めての土地で運転したり、滅多にしてこなかった縦列駐車など強いられた時は集中する必要がありますから、システム2を利用した問題解決能力が必要になることがあります。
さて、色々とお話してきましたが、ここまでで大切なのは、
どちらのシステムが優れているとかいう話ではなく、
「システム1と2は、互いに作用し合って記憶を扱っているチームみたいなもの」
ということです。
優れた問題解決能力(システム2)が欲しいと思う方もいるかもしれませんが、優秀なシステム2を持つためにはシステム1からのたくさんの知識と直感的な判断を必要とするんですね。
例えば英語の例で言うと、
Aさんは英語の挨拶フレーズにおいて “How are you?” の1つしか知らず、
この1つの挨拶しか使ってこなかったとしましょう。
Aさんのシステム1には “How are you?” しかありません。
なので人と挨拶する際に引き出せて使えるオプションは1つ “How are you?” です。
ここでは引き出せる挨拶は決まっているのでシステム2を使う必要すらありません。
Aさんとは反対に、Bさんはたくさんの挨拶フレーズを知っていて、たくさんの挨拶フレーズを使ってきたとします。
Bさんのシステム1にはたくさんの引き出しがある状態です。
なので様々な経験や状況や応じてフレーズを直感的に引き出し、使い分ける判断がシステム2によって可能です。
クライアントとの仲の良さや会う頻度、相手の様子を考えて“How are you doing?” “How’s it going?” “How have you been?” “I haven’t seen you for long time!” と特定の状況にジャストフィットした挨拶ができるのです!
英語学習の流れと理論
では英語学習とデュアルプロセス理論はどのようにつながるのでしょうか?
この2つを繋げるために、
まずは自分が持っている英語の情報が、システム1に定着しているかを知る必要があります。
その理由はズバリ英語がネイティブレベルの人は基礎も4技能(実践)も、システム1で基本無意識に扱えているからです!
英語話者は難しいテストの問題を解いたり、慣れない状況で判断を求められる時、システム1&2が互いに働き、システム1で言語を自由に扱い、システム2で意識的に問題解決をしているんです。
みなさんが日本語を扱う状況と同じです!学校で友達と話している時は楽しく話せていますが難しいテストや問題は持っている語彙をフル活用して問題解決に挑みますよね!
なので、英語学習の上でまず目指すゴールは英語をシステム1で扱える様になることです!
ですので、自分の英語がシステム1に定着しているかどうかを知ると英語学習でやるべき流れが見えてきます。
具体的にどう判断するかというと、
それは自分が持っている英語の情報がシステム1か2のどちらに位置しているかを知ることです。
個人レベルもあると思いますが、基本的に英単語にもしっくり意味がくるもの来ないものがあると思います。
例えば”banana”という単語を一目見てみなさんバナナだとわかりますよね。
これは日本語でもバナナと呼んでいるから単語を認知するだけで自動的にバナナの意味が分かる、システム1に情報が定着している状態です。
では”evidence”はどうでしょうか?
証拠という意味がすぐ出る人、意味を聞いてそうだった!と思いだす人もいるかと思います。
これは過去に勉強やどこかで聞いたりした記憶を引き出した人もいれば、訳を見たときに意味を思い出したような方だと思いますが、例えばこの場合は、システム1への定着まであと少しの位置にいるような状態です
逆に“protractor”と聞いて
意味は分度器ですよ!
と言われてすんなり覚えることは難しいですよね。
この場合、システム2を使って意味とスペルを意味で繋げたり、イメージで考えたりする努力が必要です。
つまりこの知識はシステム1に定着しておらず、システム2で理解するところから必要になってきます。
こうして英語の知識がシステム1のどこに位置しているのかを知ることで自身の英語学習の流れやトレーニングの種類の大枠を決められるわけです。
上の単語の例を使うと
・”banana”はシステム1で無意識的に使えるので会話で使ってみる
・”evidence”は意味がパッと出てくるまで反復練習を定期的にする
・“protractor”は語源を調べて意味をしっかり理解して意味がパッと出てくるまで使えるよう集中的に反復練習やテストする
という風にそれぞれの記憶の定着状態にあった学習をデザインできる様になります!
(つまり単語を思い出す際に、簡単に認知できるものはシステム1に入っていて、理解に時間がかかったりするものはシステム2が機能しているというわけです)
デュアルプロセスの考え方における英語基礎の学習(単語・文法・発音)
基礎の単語、文法、発音はすぐ意味が分かっているか?
それともそれぞれ理解に時間がかかるか?
という境界線で学習に割く時間が変わってきます。
まずは理論と基礎の位置付けを確認し、学習に必要な大体の流れと方法をみていきましょう。
認知してすぐ頭に出る単語、文法、発音→システム1に定着済み
教材のレベル上げ、実際に使えるように4技能の実践練習に組み入れていきましょう。
認知しても思い出せないが、答えを見て思い出す→システム1まで後一歩
定期的に反復練習を繰り返し、上記段階に入れば、教材のレベルアップ、実際に使えるように4技能の練習に組み入れていきましょう。
認知して理解に苦しむ場合→システム2
時間を必要なだ掛けて理解するところから始めましょう。
そこがクリアできれば、上記段階のように集中的に反復練習→定着→教材のレベルを上げ、実際に使えるように4技能の練習に組み入れていくことが重要です。
理解(システム2)と練習が記憶への定着(システム1)への道のりとなり、新たなレベルへの挑戦、そしてまた理解・練習・レベルアップのサイクルへと繋がっていきます。
ここでよくある失敗例ですが、
早く英語ができる様になりたいと思った学習者が、とりあえず英会話を始めると(インプットが無い状態での実践練習)
「言うことがいつも同じ」
「発音が聞き取れない」
「文法がぐちゃぐちゃ」
という具合に、全く流れと噛み合っていない歯車のまま、効率の悪い英語学習の構図になってしまうことが多いです。結果として時間を掛けても期待通りの結果に至らないという悲しい結末を迎えます。
デュアルプロセスの考え方における実践(4技能)の学習
リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの定着において、前提として基礎(単語・文法・発音)量が、ある程度システム1に入っていることが重要です。(勿論目指すレベルにより違いはありますが)
ここの基礎の知識量がないと、
文を作りたいのに単語の意味から調べることになったり、相手の言っていることがよく分からない、、等、インプット量が欠落している学習者ほど学習の進みが遅くなります。
ですので、選ぶ教材の基準は知っている単語が8割以上の教材がおすすめです。
リーディングとライティングは、
自由に記憶を引き出せるシステム1に入っている基礎の単語と文法の組み合わせを、
システム2で考えながら文を読んだり、書いたりして、慣れていくことを通しながら徐々にシステム1に移行していきます。
〇リーディング
→時間を必要なだけ掛けて、意味や語順を理解する→読む回数を増やす→慣れてくる→教材のレベルを上げる→1番初めに戻る
〇ライティング
→時間を必要なだけ掛けて文章を作ってみる→書く回数を増やす→慣れてくる→教材のレベルを上げる→1番初めに戻る
リスニングとスピーキングは単語と文法に発音も加わります。
〇リスニング
→時間を必要なだけ掛けて音声のスクリプトの意味や語順、発音を理解→聞く回数を増やす→慣れてくる→教材のレベルを上げる→1番初めに戻る
〇スピーキング
→時間を必要なだけかけてフレーズやスクリプト、発音を理解して声に出してみる→喋る回数を増やす→慣れてくる→教材のレベルを上げる→1番初めに戻る
基礎力はあるのに、4技能の成長速度が遅い方は実践量が少ないことが予想されます。
量はしっかりやっている!という人は取り組んでいる教材の理解度を6〜7割くらいで進めていないですか?
そこの歯車のずれが効率の悪さを生んでいる可能性が高いです。
しっかり90%以上理解して、1つずつ進んでいきましょう。
基礎学習も4技能の学習も共通の流れは
理解(システム2)→練習→記憶の定着 / 慣れ(システム1)→内容のレベルアップ
ということになります。
それぞれの分野で時間をかけて考えて、作れたものは何度か練習していくうちにシステム1に入っていくイメージです。
基礎を増やしつつ4技能を練習することでシステム1で引き出せる英語の知識が増えていくわけですね。
まとめ
今回は記憶の大枠をデュアルプロセス理論を通して一緒に見てきました。
日々の作業の中で、難しい問題を考えている時にも、私たちの思考は絶えず記憶を利用して動いてるということが理解して頂けたかなと思います。
無意識に情報を思い出し、引き出せるシステム1。
その情報を使い意識的により複雑なことを考えるシステム2。
英語学習も車の運転も新しいことを学び、慣れて、その上により複雑なことを学び重ねていくわけです。
この大枠を知ることができれば自分自身の基礎と4技能の学習の流れも想像しやすくなったと思います。
そしてみなさんが一番の気になる質問に答える用意が整いました!
そもそも知識や情報ってどうやって記憶に変わるの?
記憶をシステム1に使える様になるまでが大変なんだよ!!!
次回の記事「デュアルプロセス理論から学ぶ英語習得-記憶の構築編」では、
記憶ができる仕組みを細かく解説し、これらの質問に答えていきます。
<<続きの記事はこちらから>>
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Fumiki
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