親友だって思ってる【0:2:0】【女性同士/会話劇】
『親友だって思ってる』
作・monet
所要時間:約10分
●あらすじ●
幸せになりたい女子大生二人のおしゃべり。
ガールズトークって生々しいよね。男子禁制です。
後悔はしていない。
あくまで明るく楽しく読んでください。
さくら/♀/大学生。彼氏がいない。
ふう/♀/大学生。彼氏がいる。
●本編開始●
●大学・学生広場●
ふう:おつかれー
さくら:おつおつー
ふう:次空きコマ?サボり?
さくら:サボりかなあ。
ふう:さっすがさくら~!
さくら:ふうは?
ふう:さくらがサボりならサボりかなあ。
さくら:何その私が悪いみたいになるやつ。
ふう:ん?悪くないよ。私が自分の意思でサボる。
さくら:どっちにしろクズ~。
ふう:さくらに言われたくありません~。
さくら:あははごめんごめん。
(間)
ふう:……ねえ、さくら。
さくら:ん?
ふう:ヤエ先輩の家に行ったよね?
さくら:え?
ふう:ヤエ先輩の家に行ったよね?
さくら:あはは……
ふう:昨日ヤエ先輩の家に行ったらね、さくらの匂いがしたの。
さくら:あーそれは借りてたCDを返しに……
ふう:嘘つかないでいいよ。
さくら:あ、うん。
ふう:……気まずい?
さくら:そりゃあね。仮にも親友の彼氏なわけですから。
ふう:親友ね。
さくら:ん?何?もう絶交する?
ふう:……しないよ。
ふう:だって……私は、親友の好きな人を知ってて奪ったんだもん。
さくら:そうだね。
ふう:だから人のこと言えないし、自業自得。
さくら:そうだね。しかもふうだって浮気してるし。
ふう:……えっと。
さくら:知らないとでも思った?
ふう:あはは。
さくら:カズ先輩。まだサヤ先輩と付き合ってるんだよね?
ふう:そりゃあ付き合ってるよ。
さくら:(ため息)……救いようがないねえ。
ふう:ほんとにそれ。救いようがない。
さくら:私は親友の彼氏と浮気してて、その親友はまた別の男と浮気してて、その男には彼女がいる。
ふう:こんなこと、誰にも説明できないよねえ。
さくら:サヤ先輩にはバレてないの?大丈夫?
ふう:たぶんバレてるけど黙認っぽい。
さくら:(長めのため息)……馬鹿だねえ。
ふう:さくらも大概だけどね。
さくら:まあ、私は、諦めきれなかっただけだし。
ふう:仮にも人の彼氏なんですけど!
さくら:好きになったのは私の方が先なんですけど!
ふう:……ごめん。
さくら:いや私こそごめん。
(間)
さくら:ふうはさ、ヤエ先輩のことどう思ってるの。
ふう:好きだよ。すごーく好きな彼氏。
さくら:じゃあなんでカズ先輩と寝るのさ。
ふう:それは……なんというか。
さくら:ヤエ先輩だけじゃ満足できないってか。
ふう:違う。
さくら:じゃあなんでさ!
ふう:私、さくらがヤエ先輩のこと好きなの知ってて、応援したいって思ってたのに、いつの間にかこんなことになっちゃって。
さくら:…………。
ふう:どこかで、幸せになっちゃいけないんだーって気持ちがあるんだよ。
さくら:だからカズ先輩を誘惑したわけ?
ふう:いや、寄ってきたのは向こうから。
さくら:(ため息)カズ先輩もクズってわけだ。
ふう:クズだよ。本当にドクズ。サヤ先輩が可哀想すぎるよ。あんなに一途なのに。
さくら:それをふうが言っちゃうのかあ。
ふう:よくないことだってくらい分かってるよ。
さくら:まあでも、君の彼氏さんも絶賛浮気中ですしね!
(間)
ふう:はああ~~なんでこんなことになったんだろうなあ。
さくら:誰が一番悪いんだろ。いや、みんな悪いのかなこの場合。
ふう:自分が一番悪いってことにできたら、まだ楽だったんだけどなあ。
さくら:そりゃあそうでしょうよ。自分を悪者にすることほど簡単な逃げ道は無い。
ふう:……逃げ、ねえ。
さくら:自分だけが加害者って思うだけで人間スッと楽になる。
ふう:楽になりたいよ。
さくら:それは私が許さない。
ふう:うん。つらい。
さくら:でも、ふうは逃げてないじゃん。この状況から。楽になっちゃおうとしてないじゃん。
ふう:……逃げれるはずないよ。
さくら:そういうとこ。好きだなあ。
ふう:え?
さくら:ねえ、ふう。これまでもだけど、これからも親友だって思ってていいかな。
ふう:(ため息)……さくらもさくらで大概だよ。人の彼氏寝取っておいてさ。
さくら:あはは。本当に私たち、どうしようもないね。
ふう:うん。どうしようもない。……どうしようもないけど、二人でいるときが一番落ち着く。
さくら:奇遇だな。私もだ。
ふう:ねえ、さくら。私も、さくらのことこれからも親友だって思ってていいかな。
さくら:あはは。よく言うよ。人の好きな人奪った上に彼女持ちの男と浮気しておいてさ。
ふう:だからそれはごめんって。
さくら:いいよ。お互い様だもんね。
(間)
さくら:あ、そろそろ講義終わったかな。
ふう:人がいるところじゃ、とても話せないねこんな話。
さくら:当たり前でしょ。大問題よ。
ふう:ウケるー。ねえ今日ごはんしよ。
さくら:金無い。
ふう:貢ぎ過ぎ。
さくら:うるさい。
ふう:……奢るからさ、ごはんしよ。
さくら:のった。
ふう:ゲンキンなんだから。
(間)
さくら:あー!幸せになりたーい!
ふう:幸せ、ねえ。
さくら:どうやったら幸せになれるかなあ。
ふう:さくらはさ、幸せってなんだと思う?
さくら:分かんない。分かるわけないよ。
ふう:だよね。私も分かんない。
さくら:……彼氏持ちが何言ってんだか。
ふう:ちょっと!彼氏持ちイコール幸せってことじゃないからね!?
さくら:まあそれは聞いてればだいたい分かるけど。
ふう:……いつか分かるときが来るのかな。
さくら:幸せ?
ふう:うん。幸せについて、ね。
さくら:そこはあれだ、未来の自分がきっと分かってると信じよう。
ふう:丸投げかよー。怠惰(たいだ)だなあ。
さくら:今はそれでいいでしょ。
ふう:今はいいかもしれないけど、未来の自分も分かってなかったら?
さくら:そこはタイムリープしてきて今の私とふうを殴るよ。
ふう:うわー。巻き込み事故。
さくら:……巻き込み事故ねえ。
ふう:ごめんなさい。
(間)
さくら:いつか、馬鹿なことしてたなあって笑える日が来るのかな。
ふう:そうなってくれなきゃ困る。
さくら:お願いだ!未来の私!幸せになっててくれ!
ふう:お願いします。未来の私とさくらが、幸せになってますように。
さくら:え、何それ。ちょっと友達思い的な?
ふう:ちょっとどころかすっごくよ。
さくら:え、好きじゃん。
ふう:親友なんだから、当たり前。
さくら:まったく最低な親友だなあ~!
ふう:じゃあ縁切る?
さくら:ううん。切らない。私も、親友だって思ってる。
●二人で笑い合って終了●