地域手当の見直しにかかる公定価格の影響について
公定価格という、教育・保育に必要な費用は、国が定めた基準に基づいて算定されます。これは、保育園などの施設が提供するサービスに対して支払われる金額であり、子どもの年齢や施設の定員、保育時間などに応じて設定されます。保育園の委託費用の計算には、地域手当が保育士などの給与に含まれています。このため、地域手当が下がると、保育士の給与が減少し、その結果、保育園の運営費全体が減少する可能性があります。
松本総務大臣は9月10日の記者会見で、地域手当を見直す考えを明らかにしました。市区町村ごとに設定していたものを、都道府県内は原則同じにするというものです。これは、都道府県内の自治体の格差を是正することを狙いとしており、来年4月からの運用を目指しています。
この地域手当の大くくりが埼玉県では波紋を呼んでいます。戸田市、川口市、和光市の地域手当は6%。戸田市など県南に位置する所から電車ですぐの都内23区の地域手当は20%です。埼玉県内の市町村の多くは今回の見直しで4%に下がる見込みです。県の試算では、定員90名の平均的な保育園で地域手当が6%から4%に下がると、年間運営費収入は139万円減少します。23区との差は、972万円から1,111万円に広がることになります。また、埼玉県の保育士の平均年収は約378万円であるのに対し、東京都は約453万円と2割も高い状況です。さらに、県内の保育士養成学校の卒業生の3割は都内の保育園に就職し、都県境にある市では、転職する保育士の2割が都内の園に移る状況が続いています。
地域格差をなくす国の動きが、地域によっては人材の流出につながってしまうという皮肉な結果を招いています。
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