Music
時々、自分は何のために生きているのか、本当に分からなくなることがある。いくら考えても答えなんて見つからない。なのに、考えは私を捕らえて放さない。延々と悩み続けて、気付けば24年も生きてしまった。退屈な田舎町の片隅での、細々とした暮らし。
最近、本当に、分からなくなるときがある。
「ねぇ!!!」
今日は災難続きだ。
いやにリアルな悪夢にうなされ、泣き叫びながら目を覚ました。お気に入りだったマグカップが割れた。何もないところで、三度も転んだ。
朝からこんな調子だと、流石に注意深くもなる。なる、はずなのに、私は木枯しの中、もう軽く30分は突っ立っていた。
「ねぇ!!! ちょっと、今なんて言ったか分かる!?言ってみなさいよ!」
「あ、はい。すみません。」
「は!? やっぱり聞いてないんじゃん!」
片田舎の劇団なんて、そもそもレベルはたかが知れている。とは言っても一応は実力者であるはずの劇団の長が、見習いレベルの新人に負けるなど、あるまじき失態だった。自分の失敗を悔やみつつ、私は団長の嫌みを聞き続ける。
私が先月末から所属するこの劇団霧雨は、少人数の団員を駆使して、お粗末なミュージカルを演っている。団員7人、練習時間は月4回2時間ずつ、公演は2年に一度という劣悪を極めた環境で、私は努力した。人並みくらいには努力した。
このレベルなら案外簡単に主役とれたりして~笑とか思っていた。
努力すること二週間、まさか本当に主役になるとは……、少し驚いた。
私は2週間で2年後の公演の曲を覚えただけなのに……それしかやることなかったから。普通に歌ってただけなのに。団長に勝ってしまった。団長、音痴だからな……。
でも、それにしても酷いじゃないか!
「今日は音取りするよ~新入りちゃーん、分からないことあったら~遠慮なく~何でも言ってね~?」
なんて言うから、
「あ、もう覚えたので大丈夫です。後、そこ間違ってますよ。」
って正直に言っただけなのに!!!
っていうか簡単なんだもん!!!
簡単なのに団長が凡ミスするんだもん!!
頭の中で軽くパニックを起こしながら、目の前の中年女性にぼんやりと焦点を合わせる。
あ、化粧崩れてる。ま、良っか。
遠くで烏っぽい鳴き声が聞こえる。良いな、気楽そうで。
時計塔が午後7時を主張する。45分経過。私は何度目か分からないため息を、相手に聞こえないように吐いた。
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