実戦の役に立つ合気道練習カリキュラム
はじめに:
さて、今から「実戦の役に立つ合気道練習カリキュラム」について述べていくわけですが、その前にいくつかお話しすることがあります。
まず、ここで言う「実戦」とは、文字通り「武技を用いた命のやり取り」ということになります。スポーツの試合ではなく「死合」です。ですから、心して真剣に読んでいただくことを願っています。特に法治国家においては武道武術を正当防衛として用いる場合は法律では合法とみなされますが、ケンカなどに使用することは法律では双方ともに「反社会的行動」として罰せられます。
実戦というと、例えばヤンキーやヤクザが相手のケース、そのほか強盗や通り魔(暴漢)などによる暴力などが考えられます。そのような場合は、十中八九、相手は匕首(あいくち)やナイフ、更には銃などの凶器を持っていると考えた方が良いでしょう。ですから、そのような相手であることを認識した時は、近寄らない、あるいはすぐ逃げてください。最良の方法は違和感を感じたら、そのような所には近寄らないことです。しかし、不可抗力的に暴力を受けるような場面に遭遇したら、自分だけでなく家族や友達などの連れがいる場合は、自分だけ逃げることはできませんよね。その時は、連れを守りながら、いつでも逃げられるよう対応しなければならなくなります。だから、相手が一人であろうが、多人数であろうが、一撃で倒すことが前提となります。相手が一人の時は、相手を一撃で倒したらすぐその場を離れてください。多人数の時は、家族や友達にすぐ警察に電話するように伝えつつ、あなたが相手を2、3人倒したらその隙に、あなた方もすぐにその場を離れてください。警察は大体5分くらいで到着します。警察が来たらいろいろときかれたり調書を取られたりしますが、今後あなた方のような目に他の人が合わないためにも誠実に真実に基づいて対応してください。
なお、このような護身的な対応において大事なことは、相手の攻撃の効力が最大限に達してしまう前に自分の技術でこれを打ち破ることです。しかし、武道武術は、扱う者によっては極めて危険な物ですので、刑法の定める第三十六条第二項の過剰防衛にならないように使用することを念頭に入れておく必要があります。これに関連して、相手が銃や刃物を用いた状況下が前提にある場合は、刑法第三十七条「緊急避難」並びに刑法第三十六条「正当防衛」のいずれかが適用されます。この場合、こちらが護身術を使って相手が死傷した場合でも問題はありません。つまり、正当防衛が成立すれば、犯罪は成立しません。一方、自分では正当防衛になると思ってとった行動が正当防衛の法律上の要件を満たしておらず、暴行罪や傷害罪などの刑事責任を問われるケースは珍しくありません。ですので、武道武術を護身術として行使する場合は、安易かつ軽挙妄動は厳に慎んでください。特に喧嘩などは正否の判断はおろか、法律では双方ともに「反社会的行動」として罰せられるので注意を要します。最強の護身術は「逃げること」です。
さらに言えばこういうことです。大東流における技法の極致において、神人合一を達成したと自称した植芝盛平翁は「宇宙と一体となった者をだれも害する事あたわず、もしそれに反する者がいたとしても、その者が邪心を起こした時点で既にその者は破れているのだ」と喝破した大変な天才でした。それが確かに合気系武術、いや日本の古式柔術の究極極意であるのです。つまり、邪心を起こすと反社会的行動を取るようなトラブルに巻き込まれる危険性がありますが、反対に邪心を起こさなければ逃げざるを得ないような場面にも出くわさないと言うことです。要は常に心を清くして生活することが災難を回避する最良の方法なのです。だから、植芝盛平翁は「合気道は禊である」と言われたのです。禊とは、身に罪や穢(けが)れのある者、また神事に従事しようとする者が、川や海の水で身体を洗い清めることです。故に、この「合気道練習カリキュラム」もぜひとも禊の行であって欲しいと望む心で書いています。
話をカリキュラムに戻します。このカリキュラムは、あなたが合気道家であることを前提に合気道の実戦的な技とその土台となる基礎鍛錬に関するものです。私も何回か実戦を経験していますので、それを参考にして、なおかつ私が習った“戦前”の合気道の技や基礎鍛錬および師の教えに基づいて述べさせていただきます。
また、下記のカリキュラムと解説は、一人稽古を前提に述べています。ですので、相対練習をする際はその応用として臨機応変に試してみてください。
カリキュラム:
0 礼
1 構え
2 坐式呼吸力養成法
3 基本剣法
4 運足
5 入身当
6 転換
7 中段突き正面当(疾風)
8 上段突き相構え当(横風)
9 中段突き相構え当(瀧落とし)
10 中段前蹴り相構え当(浪返し)
11 上段突き逆構え当(薙払いの一文字)
12 上段突き後ろ当(屏風返し)
13 横面打ち下段当(竜巻)
14 立式呼吸力養成法
15 統一力養成法
16 拳固め
17 やわらげ
18 あまつかぜ
19 調息法
20 坐禅(瞑想)
21 各トレーニングについて
解説:
0 礼について
礼は稽古を始める前と終了する時に必ず行います。まず、森羅万象に宿る神あるいはそのような宗教的なイメージに違和感を感じる方は、宇宙を成り立たせている真理に対して礼を行います。そして、次に自分自身に対して礼を行います。自分も自分のものでなく、宇宙からの借り物であるという考え方から、その借り物である自分の心身を用いて稽古をさせてもらえることに感謝するために自分自身に「お願いします」「ありがとうございました」と礼をします。稽古相手がいる場合は「お互いに礼」という号令のもとに「ありがとうございました」と礼をします。
1 構えについて
“呼吸力を生み出すために必要な姿勢のあり方を学ぶ最も基本的な訓練として、構えの稽古を取り入れている。
構えの稽古によって、
❶軸をまっすぐに保つ
❷体の中心線上に手・足・腰を乗せる
❸リキまずに正しい形を作る
❹気力を前に出す
といった要素を訓練する。初心者にとって、この姿勢はかなり不自然に感じられるが、自然に体になじむようになるまで稽古する。そうなったとき、呼吸力を発揮できるような体の基本ができ上がっている。
右手・右足を前に出した場合を右半身、その逆を左半身という。
【足】
足幅は1足半(足の縦の長さの1.5倍)。前足の踵と後ろ足の爪先の延長線が直角になるように爪先を外に開き、一線上に乗せる。軸となる前足の爪先を開くことによって、回転動作がやりやすくなる。両足とも踵が浮かないようにし、親指を強く畳みに噛ませる。これは、軸をしっかり保つのに必要な足の親指を鍛える意味もある。
【膝】
前の膝を軽く曲げ、後ろの膝は逆にしっかりと伸ばして、後ろ足がピンと伸びた状態にする。重心は前に6、後ろに4。ただし、前の膝によりかかるのではなく、あくまでも後ろ足の張りで体を支える。つまり、前の膝は自由に動かせるように柔らかくしておく。
【腰】
体の前面がきちんと正面を向くように、腰をまっすぐに安定させる。後ろ足の側の腰が開いた状態になりやすいので注意する。
【上体】
首筋と背筋をしっかり伸ばす。後ろ足から首筋にかけて、前傾した一本線ができるようにする。肩を落とし、脇を開かないようにする。首筋をまっすぐ保つのは、合気道の技法に共通する注意事項である。
【手・腕】
指先をしっかりと開き、中心線上に上下にそろえる。上の手は胸の高さ、下の手は拳ひと握りあけて腹の前。両肘は伸ばしきらずにゆとりを持たせ、両指先を相手ののど元に向ける。最初のうちは指先に力が入ってしましがちだが、自然に開いていられるように訓練する。
【心】
気力を強く前に出しつつ、相手のどんな攻撃にも対応できるように、平常心を保つ。また、正面の相手にだけとらわれず、八方へ気を配る。”
(『養神館合気道「極意」』講談社刊より)
構えの参考動画:
構えのまとめ:
直立の姿勢から足を一歩前にだす。
体の前面と腰を正面に向ける。(体をスクエアにする。)
上の手は胸の高さ、下の手は拳ひと握りあけて臍下丹田の前。
足指でしっかり床をつかむ。
重心は前に6、後ろに4。後ろ足で体を支え、前足の膝は柔らかく保つ。
後ろ足裏筋、背筋、首筋を一直線にする。
肩の力を抜き、腕は円相にして水奔(はし)るとイメージする。
正中線上に、鼻、手刀、臍を置く。
手刀の指はまっすぐに伸ばし、その延長線上で相手の喉元を突くとイメージする。
目付け(相手への視線の配り方)は、相手の喉元を中心に相手全体を見るようにする。
気を四方八方に配る。
気力を強く前に出し、呼吸は自然呼吸。
前後の力を感じる。
下半身全体に力を入れる。
足裏で踏んでいる紙を前後に引き裂くように力を入れる。
真剣を構えているという意識を持つ。
相手も真剣を構えていると意識する。
なお、自然体も「無構え」として構えの一つとします。
自然体の構え方(取り方):
不動立ち(外八字立ち)となる。
両踵の間は拳3つ分、両爪先の間は拳4つ分開ける。
足指で床を力強く掴む。
体をグニャグニャにし、肩の力を抜く。
踵、尻、肩甲骨、後頭部を一直線にする。
重心は爪先、膝を軽く曲げる、骨盤を直立させる、目付けは相手の喉元に置いて相手全体を見る。
2 坐式呼吸力養成法
【意義】
合気道は技の練磨を通して上達してゆきますが、技を使うには力が必要です。この「力」を合気道では「呼吸力」と言います。合気道の修行は呼吸力の養成ともいわれるほど、この呼吸力は重要ですし、呼吸力の有無強弱によって、どれだけその人の技や心が出来ているかが分るというくらい、合気道の根本をなすものです。 私は、この呼吸力養成法を行うことで、相手に腕をガッチリ持たれても相手をコントロール出来るようになりました。私の師匠も「呼吸力を完全に身につければ合気道は完成です」と言っていました。
【方法】
坐式:
正座をし、両膝の間は拳2つ分空けます。両手首に2kg(もっと重くても良い)のリストウェイトをつけます。姿勢を正し、両膝に掌を置いて、それを「朝顔の花の形」にします。その状態で両手を2つの剣と見立て、小指が自分の鼻に向くように、また同時に肘を前に押し出すようにして、剣を振りかぶる要領で、両手刀を額の上まで挙げ、そして膝まで下ろします。これを30回から100回繰り返します。この時、呼吸は手刀を振りかぶる時は唇を少し開けて息を吐き、手刀を下ろすときは息を鼻から吸います。重要なことは、この時肩の力を抜くようにします。意識は臍下丹田に置きます。目付けは、相手の喉元を中心に相手全体を見るようにします。
稽古相手がいる場合:⚠️以下の方法は私の知る限りでは他の道場ではやっていないようですので、参考までに述べます。
上記の坐式が出来るようになったら、次に両手刀を肩の辺りまで上げ、そこから相手を左に倒します。その際は、左手の甲は相手の掌の下につけたまま引き落とすようにし、右手の甲も相手の掌の下に置き、右手の甲で相手の掌の中心を通して相手の肩を押すように、左手刀と右手刀を同調させ、同心円上を当速度で回るようにして、相手を倒します。この時身体は腰を左に少し向け同時に両ひざも左に向けます。次に、相手が倒れた状態から左右の手刀はそのままのにして、今度は左手の甲で相手の掌の中心を通して相手の肩を押すようにし、同時に右手の甲で相手の掌を引っ掛けるようにして相手を引き上げつつ、相手を元のように正座させます。次に、相手を右に倒します。その要領は、相手を左に倒した時と同じです。次に相手を左に倒した時と同様に、相手を元のように正座させるように操作します。これを10回往復行い、取りと受けを交代します。この時の呼吸法は、相手を倒す時と引き上げるときに息を吐きます。それ以外は息を吸います。
3 基本剣法
【意義】
「合気道は剣の理合から来ている」と私の合気道の師匠は言われ、入門初日から木刀を持たされて、基本剣法を教えられました。その当時は、意味も分からず木刀や居合刀を振っていましたが、時が経つに従い、師匠の言った意味が頭ではなく体でわかるようになりました。ここで思い出すのが、ブルース・リーの有名な言葉「Don’t think, feel!(考えるな、感じろ!)」です。ですので、皆さんも身体感覚を研ぎ澄まし、基本剣法の稽古をしっかり行っていただきたいと思います。但し、初期の段階では、技を理論的に理解することも大切だと思います。また、この基本剣法の身体動作は、経絡理論に則ったものですので、気が全身を巡り、稽古後は体が軽く感じ、とても清々しい気分になります。故に、健康法としても是非お勧めします。基本を大切に!
【方法】
以下の練習時間の目安ですが、四方斬り・八方斬り以外の各練習項目を
10本づつ、そして四方斬りと八方斬りの各練習項目を5本づつを行うと全体で20分程で終えることができます。これを基準に練習時間の増減をしてみてください。
1.1 正面斬り
1.1.1 順手持ち・右足踏み込み / 順手持ち・左足踏み込み
1.1.2 逆手持ち・左足踏み込み / 逆手持ち・右足踏み込み
1.1.3 順手持ち・左右足交互踏み込み
1.1.4 逆手持ち・左右足交互踏み込み
1.1.5 右片手持ち・右足踏み込み / 右片手持ち・左足踏込み
1.1.6 左片手持ち・左足踏み込み / 左片手持ち・右足踏込み
1.1.7 右片手持ち・左右足交互踏み込み
1.1.8 左片手持ち・左右足交互踏む込み
1.2 切り返し捌き斬り
1.2.1 両手持ち(右構え・順手持ち / 左構え・逆手持ち)
1.2.2 片手持ち(左右)
1.3 四方斬り
1.3.1 右構え順手持ちから正面突き→後ろ転換→正面斬り→右片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り→左片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り
1.3.2 右構え順手持ちから正面突き→後ろ転換→正面斬り→左片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り→右片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り
1.3.3 左構え逆手持ちから正面突き→後ろ転換→正面斬り→左片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り→右片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り
1.3.4 左構え逆手持ちから正面突き→後ろ転換→正面斬り→右片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り→左片手持ち斬り上げ→内入身転回袈裟斬り
1.4 八方斬り
1.4.1 右構え・順手持ち
1.4.2 左構え・逆手持ち
4 運足
【意義】
運足とはあらゆる攻撃に対して、体捌きができるような足運びのことをいいます。例えば、ボクシングにおいてウィーピングなどで上体を反らして相手のパンチを避けることができますが、それは体捌きではありません。運足とは体捌きをするための足の運動です。しかし、足だけを動かしても体捌きにはなりません。足と一緒に骨盤も動かしてバランスを常に崩さない。つまり、姿勢を崩さな いのが体捌きになるのです。基本はバランスであり、その中にリズムもあり、タイミングがあり、パワーがあるのです。そのすべてが重なって絶妙な体捌きが生まれますから、運足のトレーニングは非常に大切なものといえます。
【方法】
5 入身当
【意義】
実戦で、一対多での技の使用を必要とした場合、一撃必殺的なものが必要とされます。実戦においては、当身が相手の急所に入ることで、その後の技の制圧を必要としない成果も期待できるのが、合気道の当身です。
【方法】
上記の意義に沿った技として「入身当」があります。これを徹底的に修練しマスターしてください。下の写真の当身が、いわゆる「入身当」です。
まず前方1.5メートルくらいのところに、自分の鳩尾の高さの的をイメージするか、実物として的になるものを定めます。その的に入身当を左右交互に入れます。その際に、1.5メートル先の相手の正中線と自分の正中線を合わせるようにし、それが合ったら入身当を行います。「相手が前にでて攻撃してくるときに発生する勢い」に自分の心を合わせます。この相手の攻撃意識と合わさった状態から入身当を入れます。つまり相手の予測をズラすわけです。そうすると相手は「腑抜け」の状態となり、こちらの攻撃が可能となります。この入身当を何百回、何千回、何万回、何十万回と繰り返して、完全に身につけてください。
6 転換
【意義】
転換は本当に重要で、これができなければ合気道の技はほとんどできません。それくらい初歩的な動作なのですが、それと同時に、初心者が最も苦労する難易度の高いポイントでもあります。逆に言うと、転換さえしっかりできるようになれば、合気道のほとんどの技のベースが出来上がったことになります。
【方法】
姿勢が大事
身体の軸を真っ直ぐ保つ
母趾球に重心を置く
目線は次に動く方向へ
掴まれた手のことは忘れて、相手の力の向きに合わせる
技の中では常に次の動作をイメージする
これらのことを意識しながら稽古を重ねれば、必ず上達します。転換は合気道において最も重要な動作の一つです。ですので、この転換も何百回、何千回、何万回、何十万回と繰り返し練習してください。
参考サイト:
7 中段突き正面当(疾風)
【意義】
当身技は、相手の姿勢が崩れた瞬間に、崩れた方向に打ち込んで倒す技です。中段突き正面当は、相手が正拳、短刀、ナイフ、木剣、真剣、杖、棒、槍、銃剣などで、中段を突いて来た時に使用する技です。こちらは、手刀で払い、崩れたところをさらに前進して掌底を相手の顎に突き出して倒します。この時、打つのではなく掌底で押し伸ばすというイメージです。この技は実戦性の高い技ですので、しっかり何回も反復練習して身につけてください。なお、内入身のため崩しが甘いと相手の空いている手で反撃されます。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙します。目付は相手の喉元に置きます。
3 相手が中段(水月)を突いて来たら、こちらは内入身すると同時に右手刀
で相手の前腕部を払い、相手を後方へ崩します。
4 こちらは右手刀を正中線上に戻すとすぐ、右掌底を相手の顎の下から当
て、同時に左手刀で相手の手首を押さえます。
5 続けて右掌底で顎を押し上げるように、継ぎ足で相手の両足の間に踏み込
み、そのまま安定した身体の移動で押し倒します。
参考動画:
8 上段突き相構え当(横風)
【意義】
こちらは相手が顔面を突いてこようとする起こりをとらえて、素早く外入身をして、相手の突きを受け流すようにして払い、掌底で顎を押し上げ後方に倒す技です。相手の顎を掌底で柔らかく押し上げるのがコツです。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙し、目付は相手の喉元を見ます。
3 相手がこちらの顔面を突いてきたら、こちらは外入身をしつつ、相手の突
きを外側から掌底で受け流すように払い、相手を崩します。(重要)
4 その際、こちらの空いている手は体側につけるようにして後ろに送りま
す。自分の後手が相手の攻撃線より内にあると反撃されるので注意。
5 その後すぐに空いている手の掌底を相手の顎に入れ、そのまま上に押し
上げ、相手の顔が空を向くようにし、そのまま真下に落とし同時に最初に
相手の突きを受け流した手は、相手の腰に手刀で当て、顎に当てた掌底と
相手の腰に当てた手刀で寓力を発生させ、相手を崩しながら真下に当て落
とします。この際、思いっきり落とすと相手が死傷する場合があるので、
手加減が必要です。が、相手が刃物や銃を持っている場合はこの限りでは
ありません。が、正当防衛の範囲内でやってください。
参考動画:
9 中段突き相構え当(瀧落とし)
【意義】
相手の中段の攻撃に対して、突いてこようとする起こりをとらえて、素早く外入身をして、その攻撃を瀧水が叩きつけるように手刀気味の掌底で落として崩し、最後の極めは、上段突き相構え当と同じです。崩しが重要です。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙し、目付は相手の喉元に置きます。
3 相手がこちらの中段(水月)を突いてきたら、こちらは外入身をしつつ、
相手の突きを上から下に叩きつけるように受け流し、相手を崩します。
4 その際こちらの空いている手は体側につけるようにして後ろに送ります。
5 その後すぐに空いている手の掌底を相手の顎に当て、そのまま上に押し
上げ、相手の顔が空を向くようにし、そのまま真下に落とします。同に、
最初に相手の突きを受け流した手は、相手の腰に手刀にして当て、顎に当
てた掌底と腰に当てた手刀で寓力を発生させ、足を大きく踏み込み、相手
を崩しながら真下に当て落とします。この際、思いっきり落とすと相手が
死傷する場合があるので手加減が必要です。が、相手が刃物や銃を持って
いる場合はこの限りではありません。が、正当防衛の範囲内でやってくだ
さい。
参考動画:
10 中段前蹴り相構え当(浪返し)
【意義】
相手が中段前蹴りをして来た時に対応する技です。合気道においては蹴り技に対応する技が少ないので、これは貴重な技であると思います。この技は私の合気道の師匠が教えてくれた戦前の合気道の技です。「掬い足取り入身投げ」という技です。ただし、これは私がつけた技名です。師匠は技の名称は言ってませんでした。合気道の、それも戦前のものは名称の無い技が多いようです。因みに、この技は太極拳家と手合わせした時に実際に使用しました。その時は対峙して間境に入り、相手が蹴りを出す起こりを捉えた瞬間に私の体が動いて、気がついたら1秒かかったか、かからないかぐらいで相手を倒していました。実証済みの技です。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙し、目付は相手の喉元に置きます。
3 相手が右足で中段前蹴りを放ってきたときは、左に入身して、その前蹴り
を躱しつつ、左手で相手の右足を掬うようにして上げ崩し、その右足を右
肩に乗せたまま同時に右手で下から相手の顎に掌底で当身を入れ、そのま
ま右手で顎を押し続け顔を仰向けにし、右足を大きく相手の後ろに踏み込
み、相手の腰の辺りに左手刀を入れながらそのまま後ろに投げ倒します。
4 この際、思いっきり落とすと相手が死傷する場合があるので手加減が必要
です。が、相手が刃物や銃を持っている場合はこの限りではありません。
が、正当防衛の範囲内でやってください。
参考動画:
11 上段突き逆構え当(薙払いの一文字)
【意義】
手刀を水平に斬り払うことを「薙(なぎ)払いの一文字」と言います。
この払い方は、ただ力任せに薙払うだけでなく、薙払うタイミングと呼吸が重要になってきます。そのタイミングとは、払う時機(好機)の汐時(掛ける瞬間点)であり、押しよせる相手の怒りの怒涛を「いつ払うか」ということが問題になってきます。これらの要素を体得する技となります。心して取り組んでください。
【方法】
この技も実際に銃剣道家と手合わせした時に使った技です。その時の模様を描写することによって、この技の方法に換えさせてせていただきます。
『銃剣道家が、木銃で胸を突いてきたところを相手の木銃の剣先が私の胸に当たる少し手前のところで、私は右に入身し、右手刀で木銃の銃身の部分を払うようにして、右手刀を自分の左耳のところまで持ってきて、そこから右足が地に着くと同時に右手刀を水平にして相手の喉に当てる「薙払いの一文字」という技で倒しました。』
12 上段突き後ろ当(屏風返し)
【意義】
相手の右突きの攻撃に対して、こちらは相手の上段突きを右手にて右に払い同時に左手で相手の右肘を制して、外旋させてバランスを崩します。重要なポイントは体勢の立て直しをする時間を与えず、すかさず後ろに回り込んで相手の両肩に両手をかけて押し叩くように後方に倒すことです。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙し、目付は相手の喉元に置きます。
3 相手がこちらの顔面を突いてきたら、こちらは左に外入身をしつつ、右手
で下から円を描くように相手の右前腕を手前に払い、同時に左手で相手の
右肘を同じく払います。これにより相手を崩します。
4 相手の斜め左後方に密着して位置し、同時に両手を相手の両肩に引っ掛け
るようにします。
5 次に、こちらは両手を引いて相手を後方下に倒すと同時に、こちらは相手
の倒れる方向から斜め45度方向に左足から継ぎ足で脱出し、残心しま
す。
参考動画:(動画では両手で相手の腕を掴んでいますが「屏風返し」では掴みません。
13 横面打ち下段当(竜巻)
【意義】
この技は、相手がフックで殴ってくるところを空を切らせて、その瞬間に体重がかかっているところを下段当をします。ですから、フックでなくてもストレートでもよいワケです。ポイントは「空をきらせて崩す」ことです。
【方法】
1 相手と一足一刀の間合いまで接近します。
2 こちらは、自然体で対峙し、目付は相手の喉元に置きます。
3 相手が手刀を上段に振りかぶろうとする一瞬の動作の起こりをとらえ、
重心を十分に落としながら腰を捻りつつ、足を踵から相手の足の前に踏み
込みます。
4 こちらは続いて、腕を捻りつつ丸く伸ばし、相手の下腹部に柔らかく当て
足を大きく相手の側面に踏み込みながら、素早く腰を返して相手を側方に
倒します。
参考動画:(短刀突きに対する下段当の動画ですが、要領は横面打ちに対する下段当とほぼ同じです)
14 立式呼吸力養成法
【意義】
合気道は技の練磨を通して上達してゆきますが、技を使うには力が必要です。この「力」を合気道では「呼吸力」と言います。合気道の修行は呼吸力の養成ともいわれるほど、この呼吸力は重要ですし、呼吸力の有無強弱によって、どれだけその人の技や心が出来ているかが分るというくらい、合気道の根本をなすものです。 私は、この呼吸力養成法を行うことで、相手に腕をガッチリ持たれても相手をコントロール出来るようになりました。私の師匠も「呼吸力を完全に身につければ合気道は完成です」と言っていました。ですから、毎日実践されることをお勧めします。
【方法】
表:両手首に2kg(もっと重くても良い)のリストウェイトをつけます。右正眼の構え(右手刀は胸の30〜40cm位前、左手刀は臍下丹田の前握り拳1つ分空けて置く)から右足を腰を前に押し出すように大きく踏み込みつつ、両手刀を同時に振りかぶり、左手刀が額の少し上にくるようにします。即ち剣を振りかぶる要領と同じです。注意する点は、両手刀を振りかぶった時の姿勢は、重心は前足に8、後ろ足に2とし、後ろ脚筋・背筋・首筋が一直線になるようにします。体は正面を向いています。呼吸は、振り上げるときに口から息を吐き、元の正眼の構えに戻るときに鼻から息を吸います。意識は常に臍下丹田に置きます。この動作を繰り返します。
左正眼の構えからの呼吸力養成法は、右正眼と同じ要領で行います。
参考動画:
裏:両手首に2kg(もっと重くても良い)のリストウェイトをつけます。
右正眼の構えから両足底を使って、左に体を回しつつ、左足を三足半程踏み込みます。重心は前足に8、後足に2。その時の体の構えは、左手刀が鳩尾の高さ、右手刀は体側に置きます。次に、両足底を使って、右に体を回し、右手刀を外回りに返して、重心を左足から右足に移しながら、剣を振りかぶるようにします。左手刀は右手刀に合わせて額の少し上まで振りかぶります。再び右足から左足へ重心移動を行いつつ、両手刀を逆のコースで切り下ろし、準備姿勢に戻ります。この動作を繰り返します。
参考動画 :
15 統一力養成法
【意義】
呼吸も含む身体のさまざまな能力を総合統一した力を、客観的に素直に表す言葉として「統一力」という術語を用い、統一力を養成します。
【方法】
逆三角前屈立ちで、息を吐きながら統一力を使って拳、手刀、掌底で柱や壁を10秒間押します。左三角前屈立ちの時は右手刀が前で、右三角前屈立ちの時は左手刀が前になります。体は正面を向きます。肩の力を抜きます。
前に押す時の姿勢は、重心は前足に8、後ろ足に2とし、後ろ脚筋・背筋・首筋が一直線になるようにします。
16 拳固め
【意義】
当身を相手に当てた時の衝撃で拳骨、手首関節、前腕、二の腕、肩を痛めないために鍛えるための方法です。
【方法】
やり方は、畳の上か、床に座布団を敷き、その上に半跏座で座り、左右の拳骨を座布団の上に両手の甲を前にして垂直に置き、両拳骨で体全体を畳あるいは座布団から持ち上げます。このとき臀部は畳あるいは座布団から浮いた状態です。次に左拳骨に体重と重心を乗せ、右拳骨を上に挙げて、次に全体重を右拳骨にかけて下に落とします。その際は右拳をしっかり握り、手首にも力を入れて、手首が曲がって捻挫しないように注意します。この時臍下丹田に意識を置くことを忘れないでください。非常に重要です。
次に左拳で同様に行います。要領は右拳と同じです。これを左右交互に20回繰り返します。慣れてきたら数を増やしてゆきます。この時の呼吸は、拳を上げるときに息を吸い、拳を下に落とすときに息を吐きます。
17 やわらげ
【意義】
やわらげとは、気流法・メビウスの環の舞の初歩の基本となる動きです。
簡単に言うと、♾ (メビウス、無限大)の環状に沿って律動的に動くことの中に実は、すごい「極意」が含まれているのです。〈メビウスの環〉によって、時空との関係が変わり、気エネルギーを産み出す〈間〉が作用して、相手もさまざまに動くのです。 (詳しくは、「メビウス身体気流法、坪井繁幸著、平河出版社」をご参照ください。)
【方法】
1 両手を胴から40〜50センチ離し、肩から胸くらいのところに上げ、表から
裏返しつつ、またそこから表に返しつつ左右へ♾(メビウス)状に巡らし
ます。
2 但し、この♾の字は上からみても♾の字になっています。
3 両掌の距離は、体の中心に近いところで互いに近くなり、側では互いに
やや離れます。
4 必ず体の中心部を通り、その際はやや合掌の形に近くなっています。
5 この動きと呼応して、全身も波動のように動きます(全身で♾の字を描き
ます)。そのためには、絶対に手首が日本の舞踊か盆踊りのように内側へ
巻き込まれないように気をつけます。そのためには肘の用い方が大切にな
ります。もし、手首が内側に巻き込まれたら、のぼせ気味になったりする
ので注意します。特に掌が伏している状態から上向きになる時、そのこと
に注意してください。肘をやや外に張り出すようにすればよいのです。
6 速度は様々ですが、初めての人は2秒で一巡するくらいがよいでしょう。
7 掌の開き方は、掌を開きますが、掌心がややくぼみ、指は張りをもたせ、
しかも柔らかく伸ばします。
8 目線は、上を向いた方の掌の指先のさらに向うの遠くの空間に放ちます。
あるいは前を向いたままでもよいです。
9 この動きのリズムで全身、内も外もくまなく気が生動していることが感じ
られてくるとよいでしょう。
10 立って行ってもいいですが、座ってもよいです。
参考動画:「詳細はこちら」をクリックすると見られると思います。
参考画像:「創造する知・武道、坪井香譲 著、BABジャパン」より
18 あまつかぜ
【意義】
螺旋状の動きと共に息を吸いつつ、その人の身に許容されたすさまじいエネルギーを、再び螺旋状の動きと共に呼気に乗せて外へ一定の方向で発揮する身体操作法です。
【方法】「詳細はこちら」をクリックすると見られると思います。
19 調息法
【意義】
呼吸を整える身体操法です。
【方法】
まず、足を肩幅に開き外八字立ちとなります。両腕を体側に垂らして、左右の腕を少し斜め両側から上げて行き、額のあたりで止めます。ここまで息を吸いながら、かつ肛門括約筋を締めながら6秒で行います。そして、ここで2秒息を止めます。その後、両掌を下に向け息を吐きつつ、かつ臍下丹田を意識しながら12秒かけて両掌をゆっくり降ろし、最後は、最初の腰の両側に置きます。これを3セット繰り返します。なお、呼吸は逆腹式呼吸法で行います。下の図をご参照ください。
20 坐禅(瞑想)
【意義】
合気道は武道です。武道の本質は「武技を用いて命のやり取りである」と私は考えます。そこにおいては、平常心を養うことが必須です。それは坐禅(瞑想)を通して身につけることができます。
【方法】
坐禅(瞑想)にもさまざまなやり方がありますが、ここでは最もスタンダードで誰でもやりやすい「呼吸瞑想」をご紹介します。
座り方:
結跏趺坐、半跏趺坐、正座のうちのいずれかで行います。
意識の向け方:
肩の力を抜いてリラックスし、目は閉じるか半眼にします。ゆったりと自然なペースで呼吸をし、意識を呼吸だけに向けます。
呼吸の仕方:
腹式呼吸(息を吸うときにお腹を膨らませ、息を吐くときにお腹を萎ませる)を行います。
瞑想をする場所:
瞑想をする場所はどこでも構いません。最初はリラックスしやすい場所・人の声や物音が少ない、気が散りにくい場所が良いでしょう。慣れてくると、オフィスの自席や電車の中などでもできるようになります。
最初は5分から、毎日続けることが大事:
呼吸に意識を向け続けるというのは想像以上に大変です。「最初のうちは5分やるのも精一杯」という方がほとんどですが、 毎日少しずつでも続けることに意味があります。続けるうちに、意識の向かう先をコントロールすることがだんだん楽にで きるようになるはずです。最初は1回5分から。最終的には30分程度出来るようになれると良いでしょう。なお、瞑想を始めたからといってすぐに何か大きなメンタルの変化が訪れるわけではありません。しかし、1回5分を1日に何度か行い、それを2ヶ月程度継続すれば「集中力が上がっ た」「感情のコントロールをしやすくなった」「ここぞというときに頭がさえるようになった」「適切な状況判断ができるようになった」等の変化を実感する方が多いようです。
途中で意識が逸れてしまってもOK!:
瞑想と言うと「頭を空っぽにしないといけない」「無になれないとダメ」と思っている方は多いかもしれません。でもこれは誤解です。物音に気を取られて意識が逸れてしまったり、何かを思い出したり、考えが浮かんできたりするのは仕方のないことです。「あ~ 今他のことを考えちゃった!」と終わりにしたり、 集中できていないなと判断したりせず、「あ、意識が逸れたな」と認識し(気づき)、呼吸に意識を戻せばOKです。
21 各トレーニングについて
カリキュラムの 7番から13番の技は、
・形稽古(インターバルトレーニング方式):形毎に反復練習を行います。
・型稽古(サーキットレーニング方式):7番から13番を通しでやりそれを
何回も周回練習します。
・八方稽古(全方位意識トレーニング方式):八方向に斬り分ける要領で
す。
・掌舞(シャドースパーリング方式):文字通りシャドートレーニングで
す。
の順で行います。
形稽古は各技をトータルで短期間に左右各最低二万回を目標に行ってください。これは形を技化する為に必須の練習量です。
少ない技で対応することが実戦に強くなるコツです。技が多いと各技に習熟するのに時間が掛かりますし、実戦で使用するときにどの技を使うのかで対応が遅れることもあります。ですが、少数の技であれば、一つの技に時間を掛けることができるので、技の練度と精度が上がり、実戦で反射的に応用が効きます。だから、「技は少なめに、その運用は多彩に」です。
あとがき:
ここまで、いろいろと書いてきましたが、結局は、心の問題であるということです。
植芝盛平翁が喝破したように、「宇宙と一体となった者をだれも害する事あたわず、もしそれに反する者がいたとしても、その者が邪心を起こした時点で既にその者は破れているのだ」であり、それが確かに合気系武術、いや日本の古式柔術の究極極意であるのです。つまり、邪心を起こすとトラブルに巻き込まれる危険性がありますが、反対に邪心を起こさなければ逃げざるを得ないような場面にも出くわさないと言うことです。要は常に心を清くして生活することが災難を回避する最良の方法なのです。だから、植芝盛平翁は「合気道は禊である」と言われたのです。
つまり、心を清くし邪心を無くすことです。それを別の言葉で言うと「一切の欲と怒りと無知から心を完全に解き放ち、絶対自由の境地に達すること」です。
これは私が一年程前に別のWebサイトで公開していたことであり、改めてそれに気づき、やっぱりこれだったんだと思い至った次第です。「実戦の役に立つ合気道練習カリキュラム」が、実は「一切の欲と怒りと無知から心を完全に解き放ち、絶対自由の境地に達するための修行法」への扉だっだのです。このWebサイトを是非見てください。
心が清まり邪心がなくなれば、実戦などということもしなくて済みます。
平和な生活が送れます。皆さんが、そして生きとし生けるものが幸せでありますように。これが私のこの「実戦の役に立つ合気道練習カリキュラム」の結論であり、願いです。
世界が平和でありますように、心より願って筆を置かせていただきます。
補記:
人と争わないために「感謝の瞑想」が有効であると思われます。なぜなら、人間同士がお互いに感謝し合う心を持ったならば争う心は消えると思われますし、たとえ争う心が芽生えたとしてもそれが怒りという行動にはならず、速やかに、あるいはやがて消えてゆくでしょう。「感謝の瞑想」のやり方の動画をリンクしておきますので、是非、ご覧いただき、できれば実践されることを願っております。