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インスタントパーソナルスタイリスト

出先の用件が済んだ後、ショッピングモールに立ち寄る。

闇雲に手当たり次第に店舗を覗くのではなくて、セール中なので、今のうちに購入した方がよいもの、この機会に新調した方がよいものなどの見当をつけて回る方がよかろう……と思いつつ、そうではない書店にいきなり寄ってしまう。日本人作家の作品の翻訳本が続々と出版されていて、少し見ないうちに、新しい作家の作品が何冊も出ているのが目を見張るほど。ついつい手に取って、あらすじに目を通し、購入しようかという気分になるのだが、そのようにして集まった読んでいない本が家にはたくさんあるので、今回はすんでのところで思い止まる。

靴店に入り、かれこれ何年も新調しようと考えていたブーツを探す。
目ぼしいものを試着していたら、「スクーズィー(すみません)」とわたしに呼びかける人の声。その声の主の方に視線を移すと、わたしよりも年上だろうと思われるシニョーラ(ご婦人)が、ネイビーのコンパクトなショルダーバッグを片手に「このバッグ、わたしにはどうだと思います?」と尋ねる。靴店だが、バッグも販売されているのだ。

その方はブラックのダウンコートを着ていたが、襟の内側はネイビーで、ご自身のものであろうと思われるくすみマゼンタのショルダーバッグをたすき掛けにしていた。
「黒の方がよいのかどうか……」と言われたが、「今、黒いアウターを着用されているので、ブラックXブラックよりは、その襟の内側のネイビーとこのバッグのネイビーを合わせるのもよいかもしれませんね」と、思ったことを言ってみる。
「ああ、この襟の色。これ、リバーシブルなんですよね」と、シニョーラ。
くすみマゼンタのバッグを指して「このバッグはご自身のでしょうかね?」と尋ねると、「そう、これはわたしので、前に買ったキプリング/Kiplingのなの」と。そうか、ブランドのなんだと思いつつ「ブラックのアウターにマゼンタと差し色になっているので、そういった感じの色合わせの方がよいかと」とも告げてみる。
「ああ、やっぱりちょっと色を取り入れた方がいいですよね?」と光が見えたような表情で言われたので「そう思います」と。
「どうもありがとう」「どういたしまして」
まさか、わたしを店員だと思って尋ねたのではないと思うが、たまたま居合わせた知らない人にもそういった意見を聞いてみる場面は、いかにもイタリアの人らしいなぁと思った。
あ、でも、日本でも、このシニョーラと同じぐらいの年代の方や年上の方だったら、こういったことはあるかもなぁ、とも。

そして、わたしは自分のブーツ探しに戻り、ショートかロングか……と、それぞれ何足かとっかえひっかえ試しては、履き心地、歩き心地を試す。履いては、鏡に映し、見た目を確認。その近くでは、高校生ぐらいの女子たちも、ああだこうだ言いながらブーツを試していた。



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Jacqueline
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