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色イロを愉しむ日常

路傍にひなげしの朱色が目に鮮やかな時季。

キッチンの窓からも見える隣人の敷地に無造作だけれど点々とまとまって咲く姿は、モネの絵を思わせる。
その背後にはレモンの生る木。

それに対して、手入れされているだろうマゼンタのツツジは小ぶりだが、遠目にも春らしい華やぎを感じさせ、またその季節が戻ってきた喜びと同義。

この春は、いまだに青空と灰色空が行ったり来たり。
空が薄暗い雲に覆われている日は、海だけ真っ青なはずもなく、かすかに淡いラグーンカラーを残しつつグレージュに波立つ。

グレージュ……

そう形容してみると、その色は悪くない。
ニュアンスがあって、他のモノの色だったら、むしろ気に入るように思われる。
そのように気が付けば、グレージュの海も悪くないではないか。
もちろん、コバルトブルー、サファイアブルー、エメラルドグリーンの海の色は間違いなく美しく、どんなに目にした人の気分を高揚させるかは言うまでもないのだけれど。

歩いていて、赤いアマリリスと思われる花をそこでははじめて見たように思う。
ちょうどそのすぐ上あたりに、冬には水仙が並んで咲いていたのをやはりはじめて見た。
もしかしたら、両方ともニューフェイスとして、植えられたものかもしれない。

日常の中でふと見つかる「はじめて」は、心踊らせる。
いつもと同じなようで、偶然出会えるちょっとしたタノシミ。

いつもの通りを歩いていたら、アパルタメントから出て来たふたりがわたしの視界にフレームイン。
後ろ姿から想像するには、母と息子。
左側を歩く息子は、母よりも背が高い。
子どもという年ではないだろう。
上半身にはオフホワイト、パンツはやや濃いめのベージュ。
母と思われる女性は、パツンと毛先を切り揃えられた長めのセミロング。ブロンドというよりは淡いクリーム色ベースに所々下にグレーが見える。
彼女については、なんと言っても綺麗な赤いパンツが印象的で、これは!と思わせた。その上には淡いベージュのロングニットコート。ロングカーディガンとどちらだろうか?とも考えたものの、フォームのややかちっとした雰囲気からすると、コートと呼ぶ方がふさわしそうだ。ただ、やっぱり普通のコートよりは柔らかい印象。
彼らは車に乗るのだろうか。駐車場の方へ入って行った。

目前に右から白いテスラの車が出て来る。
あ、あれは昨日見た車!と思っていたら、その白いテスラがあった場所に、今度はダークグレーのテスラ。このお宅の人はテスラ好き?
その後日、別の所でブルーメタリックのテスラも見た。
その車は、近隣のテスラの中でもよく目にする。
時々、充電ポストに駐車されている。

ぐるっとひとまわりして戻ろうとした時に、横断歩道で一時停車する車の色に魅せられ、数秒凝視。
そのカラーの車はあまり見たことがないが、かなり好みだ。

美しい色……

束の間の堪能の後、横断歩道は渡らず、そのまま歩道を先に進もうと進行方向を向くやいなや、「チャオ!」と言う声。
今見惚れていた色の車の方を再度見ると、運転席の開けられた窓から褐色の肌に、さらにカラスの濡れ羽色の髪の女性が微笑んでいる。

うん?誰だ?レディチョコレート?

考えを巡らせているうちに、彼女は名乗った。

ああ、そうか。
彼女は「喜び」という意味の名を持つ人だった。

髪をずいぶんと短くして、ストレートになっていたので、すぐに分からなかったのだ。
わたしが知っている彼女は、細かい三つ編みをアップにまとめていた。
何度かの集まりで左隣に座っていた彼女。
その名のごとく、太陽のように明るい人で、その朗らかさは伝染し、彼女と話すとこちらの気持ちにもポッと暖かい陽が差した気分になる。

そんな彼女が乗っていた車はピカピカのプリズムブルーグリーン。
曇り空の下でも輝いていた。

次回、話す機会には、「あなたの車の色が好き♡」と言おう。





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Jacqueline
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