ウマ娘 タウラス杯の感想
アニメ一期のネタバレがあります。
●タウラス杯の良かった点
タウラス杯では、なにより育成の効果測定がしやすかった点が面白かった。「こういうレースをしてほしい」と考えて育生したウマ娘が、その通りのレースをして勝つ(かはわからないが)。これはチームレースではあまり無いことだ。
何故、タウラス杯ではウマ娘が想定通りのレースをしやすかったのか。その理由は以下の3点にあると推測する。
①少人数のレース
②絶不調がない
③実力がある程度揃っている
チームレースではどうしてもランダム要素に左右され過ぎて、そのウマ娘が強く育ったのか、想定通りのレースが出来る構成だったのかが判りにくい。今後フレンド対戦機能が実装されるはずだが、その際はぜひ「NPCの有無」「絶不調・絶好調の有無」「出走頭数」を自由に設定出来るようにしてほしい。
●タウラス杯の良くなかった点
とはいえ、タウラス杯の開催自体には開催前からある懸念があったし、実際に参加して疑問に思う点もあった。以下、筆者のお気持ちです。
・『ウマ娘』が示した現実世界へのアンチテーゼ
勝敗がハッキリして、覆せない。そしてその勝敗は才能と努力と時の運が決定する……というのは『ウマ娘』が競馬を題材にする以上、絶対に内在する要素ではある。
けれども『ウマ娘』は現実世界の"IF"であるので、それ自体が競馬のある種の「残酷さ」と矛盾した存在でもある。あるウマ娘が現実世界では出られなかったレースに出走したり、予後不良で安楽死させられることなくレースに復帰したり、不名誉な評価を覆したり……そういった"IF"がアニメでは展開されていた。
その昇華の在り方はアニメ一期のラスト「現実ではあり得ないオールスターのレースが開催され、最終直線で全員が横一列に並ぶ。レースの結果はわからない」というシーンに端的に示されている。誰が勝ったのかは、アニメを観た各自の内心の自由の中にあれば良い。
・アニメとゲームのリンクが生み出す価値と裏切り
ゲーム『ウマ娘 プリティダービー』はタウラス杯まで、基本的にこの「理念」の範疇にあった。プレイヤーは「育生モード」や「チームレース」といった"IF"を繰り返していく。中には目標レースに勝てなかったり、「怠け癖」が治らなかったり、対戦相手に全敗したりと望ましくない"IF"もあるわけだが、またやり直すことが出来た。
よくあるソロ志向のスマホアプリといえばその通りなのだが、『ウマ娘』は先にアニメを展開することで、そこに箱庭的な付加価値を創出していた、ということだ。あなたの世界ではアグネスタキオンは屈腱炎で引退しないし、トウカイテイオーは無敗で菊花賞に勝てる。一回では無理かもしれないが、勝つまで繰り返せばいずれ勝てる。
しかし、タウラス杯で箱庭は暴かれ、プレイヤーは一発勝負の残酷さの下に曝されることとなった。これまた、表面的にはよくある対人コンテンツ実装までの流れなのだが、質的には異なる。そこには、カレーライスを食わせたあとに毒ガス訓練を開始するが如き、プレイヤーに対する裏切りが存在する。
・シリアスな対人要素は『ウマ娘』に本当に必要か
筆者というごく小さな点からの観測結果に過ぎないが、負けてしまった人の精神的負荷は、同じCygames社が運営している『グランブルーファンタジー』の悪名高き対人コンテンツ「古戦場」より、『ウマ娘』の「タウラス杯」の方が大きかったように見える。開催前からの懸念とはプレイヤーの疲弊だったが、予想とは違う形で顕れた。
『ウマ娘』のゲーム的な面白さの伸び代として、シリアスな対人戦をさせるというのは理解出来るし、実際に面白い部分もあった。しかし、育成・対戦ゲームとしてのタウラス杯の面白さは『ウマ娘』でなくても実装出来る。同じクオリティでスマホアプリ版『実況パワフルプロ野球』が作り直されたら、きっと似た面白さが味わえるだろう。
今回のチャンピオンズミーティング「タウラス杯」は対人戦イベントとして面白かったとしてもシリアス過ぎたし、それが『ウマ娘』的な魅力を損なってしまっていた。『ウマ娘』の対戦はテーマソングの通り、手を伸ばせば栄光が掴めるような形式であった方がいい。
次回開催のチャンピオンズミーティングではもっと『ウマ娘』らしい魅力に溢れた方法に洗練されることを願っている。
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