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言語化することについて考えてみる

 私は小学校教諭をしています。授業では、子どもたちがノートに考えを言語化して書いたり、頭で描いたことを言葉で相手に伝えたりする場面が多くあります。以前は、この言語化するということについてそれほど考えたことがありませんでしたが、本を読んで学ぶ中で様々な考えを持ったり、人々のやり取りを面白く見たりすることができました。今回はその事をnoteに言語化してみることにします。

1.言葉で世界を切り取ることは難しい

 話を戻すと、世界は本当に多層的で連続的です。ことばはそのなかから一層だけを切り取り、それを、連続量ではなく離散量としてカテゴライズします。~〈中略〉~ 色についていえば、紫と赤の間というのは、世界の側では、そこにスパッと線が引かれているわけではないですよね。でも、私たちは、赤や紫ということばで、本来連続的に推移するものに線を引いて区別するわけです・

『ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか』著:為末大 今井むつみ

 世界で見えているものはグラデーションです。空の色でも、「水色」の言語一つで切り取ることはできないように思います。私は、子どもたちに安易に言語化するということを求めていましたが、この本を読んで、言語化するってすごく難しいなと思いました。そして、言語があるから、世界の連続性を切り取って、カテゴリーに分けることができるのだなと感じました。

2.言語は輪郭をとること

 たしか、元陸上選手の為末大さんがvoicyの中で語られていた中で、言語について「言語は輪郭をとること」のように表現されていました。「言語は世界を切り取る」と似たような表現ですが私の中で印象的でした。
 先日、教育活動の総括案を検討する会議に参加しました。そこでは、作られた総括案を読んで、推敲するということが行われました。そこでのやり取りがとても面白く、この「輪郭をとる」ってこういうことかと感じました。
 文章を作った人にはその人の思い描いている絵があって、それを言語で輪郭をとりながら表現する。それを読んだ人はその輪郭を見て、文を作った人
が描いている絵をイメージする。そのすり合わせだなと思ったのです。時には、その絵がよりはっきり分かるように輪郭をとり直す(文を修正する)。
 言葉でとった輪郭から、絵をイメージしてすり合わせていく作業がとても面白く感じました。

3.スラスラ話すからの脱却

 私は、子どもたちが自分の考えを話すときに「スラスラ」言えていることを評価してしまいそうになります。でも、言語化することって難しいと考えると、たどたどしく話す子どもたちは、自分の頭にある絵をなんとか言語化し、伝えようとしている。その「たどたどしさ」も大事なんだと思うようになりました。相手になんとか伝わるように、頭の中の考えを言語化する。そのチャレンジはその子にとって、学んでいることなんだと思えてきました。
 言語にすることは難しい。その難しさをたくさん味わう、語彙を獲得して、より的確に切り取る、言語化にチャレンジするって大事だなと感じます。

4.体育における「ふりかえり」はどうするか

 動作を言語にすることも非常に難しいことのように思います。体育で動きを子ども同士でアドバイスしている場面でよく「ここで、グッと力を入れて」、「バーンと蹴ってさ。」など擬音語や擬態語が使われています。なんとも言葉にしようのないものを言葉にしようとしているからかなと思います。体育における言語化は難しいが、体育には「ふりかえりカード」などで言語で振り返りをすることがあります。それは、子どもにとって非常に難しいことだと感じました。
 そこで、私の学校の研修に参加してくださる大学の先生に聞いてみました。その先生は体育が専門です。その答えは、「言語化って難しいですよね~。ふりかえりを言語にこだわらず、絵にするとかもありだと思います。今、これだというものを提示できませんが。」というような返答でした。
 動きを言語で切り取るって難しい。それを知っておくだけでも私は「ふりかえり」を考えるきっかけになりました。

 最後になりましたが、言語って難しいなと思いながら、言語って面白いと思っている最近です。また、学校で子どもたちと言語の難しさを感じながら成長していきたいです。


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