湯気 #毎週ショートショートnote
獲れたての師走は、湯にくぐらせると、柔くなって甘え。解禁された今が、いちばんよ。海ん中は、師走めがけてくる魚もいっから、そいつらとの戦いなんだよ。はははは。
豪快に笑う漁師。聞き間違いかと声を出したが、エンジン音にかき消された。風が冷たい。
シラ、いや師走は、曳網と呼ばれる漁だ。沖に出ると、並走する船は同時に網を入れ、互いにゆっくり離れていく。
探知機には水深1mほどの場所にモヤモヤと影が見える。師走の群れだ、弾む漁師の声。
引き揚げられた網に、透明な師走たちがキラキラと輝く。鮮度を保つため、すぐに港に戻り、用意されていた釜で茹で上げた。
掬い上げると、真っ白の師走が溶けていくように、白い湯気が猛然と立ち上る。その光景に、口の中では唾液が反応した。
ちょっと、食ってみっか?
欠けた茶碗に、無造作に盛られた熱々の師走が差し出された。
同僚の声で、ハッと目が覚めた。
「釜揚げ師走、食べたかった・・」
情けない声を出した俺に、冷めきったシラスのピザが差し出された。
(450文字)
アドベントカレンダーやってます!
昨日は、秋峰さん。数学に苦手意識のある人は少なくないはず。番組もさることながら、教えるのが上手い先生がいたらなぁ、なんて思いながら読みました。
冒頭のモン、売っていそうで売っていないんですよねぇ😭サンタさんにお願いしたい(笑)
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