背負いたい音楽
人生の中で、”登場する”シーンというのはあまり多くありません。
華々しく名前を呼ばれ、颯爽と姿を表すようなことが、何度あるのでしょうか。きっと、何度もないでしょう。特に、僕のように凡庸で、光り輝く才能が溢れているわけでもない、ふつうの人には縁のないことです。
ともすれば、妖怪ぬらりひょんのように、知らぬ間にそばに居て、いつの間にか消え失せているような行動すらとっていることもあるくらいだから、登場する時のことなど微塵も考えたことがありませんでした。
僕の周囲のフォロワーさんが楽しそうに書いておられるので、ここはひとつ学生時代にジャズバンドにいた経歴を発揮できるかもしれないと、書き始めました。石元みとんさんの企画に参加します。 #わたしの登場曲
ひとつ、自分が登場するシーンで印象に残っているのは、結婚式の披露宴です。あれは「新郎新婦の入場です!」と呼び込みがあって、ドアが躊躇いなく開かれて、眩しい光に照らされて歩を進める。みんな僕たちを観にきているのだから、華々しい登場をするべき時なのでした。
いわゆるお色直しを経て2度目の入場をしたときは、平井堅のPOP STARをかけました。これは知っている人も多く、また曲想も明るいこともあって意外と盛り上がりました。
学生時代に、ジャズを演奏するビッグバンドサークルに所属していまして、演奏中によく”登場する”ことがありました。それは、曲中にソロがある時など、バンドの前に出ていってマイクに向かって吹いたり、客席に向けて吹いたりするときです。
その時、バンドの演奏を背中に背負っている気持ちがしたものです。バンドを背負って立つ、俺がソリストだ!…的な俺様精神ではなく、緊張しいの小心者でも、後ろにみんながいるから大丈夫だ、とそんなふうに思って吹いていました。
なかでも、長めのソロが続く、take the A train はとても好きなソロでもありました。後半にかけて盛り上がっていって、ソリストもバンドもテンションが上がっていく曲です。
ルイアームストロングの演奏で有名な、what a wonderful world は、大学卒業時のリサイタルで、僕のためにアレンジしてもらいました。それこそバンドを背にして吹いた思い出深い曲です。
もともと派手なことは苦手で、トランペットを吹いている割には、高音をキメるよりも、歌うほうが好みでした。そんなふうだったので、”味わい”などと評されたこともあり、老成した音を出す大学生でした。
長くなりました。
僕の登場曲を早く決めろって話ですよね。そうです、決まっているようで迷っているのですが、やはり僕の人生において、何百回も聞き続けていた曲があるのを紹介しないわけにはいきません。
それは、スキマスイッチの「全力少年」。
もうね、これ本当に何度も何度も聞きました。
特に聞いていたのは、新卒で入社した引っ越し屋さんのとき。ぜーんぜん休みがなくて(笑)通勤の時間はほとんどこれを聞いて、自分を励ましていました。
先輩社員もなかなかのポンのコツさんだったので、新入社員ながら、ほうぼうに頭を下げていました(クレーム対応に駆け回っていた日々…)。
おかげで、今の僕が、今の職場がある(転職への強い力となりました)のです。
感謝の気持ちと、そして背中を押してもらいたい希望を込めて。この曲を背負って、登場したいです。