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真実 #毎週ショートショートnote

「あの場所に、行ってはならん」

ひとつの村が、いや国が入るくらいの広大な土地の東の果てに、その塔はあった。屋敷に最も長く住まう”長老”が、これまでの穏やかな表情を一変させて、半ば怒ったように強く言った。

それでも、僕の昂った好奇心と正義感は収まることなく、ひとりきりの旅が始まった。

東西南北にそれぞれ大きな塔がある屋敷だが、なぜか東だけが誰も住まわず、近づくことさえ禁じられるようになっていた。それぞれの方角にある主要な建物に「方角に館」とつけるならわしの通り、その塔は東館と呼ばれていた。

何日か経って、ようやく東の果てにある塔らしきものが見えてきた。森の木の影から少しだけ見え隠れする様子は、やはり異様だった。おとぎ話の魔女の城や、野獣が住んでいそうな、朽ちているけれど何かの気配があるような、不気味さをまとっていた。

辿り着いた東館には、ツノがあった。正確には、ツノの生えた人間の亡骸が、安置されていた。僕は泣きながら、その骨に触れた。


「おとうさん・・・、おかあさん・・・、ただいま」

(440字)


#毎週ショートショートnote #ツノがある東館 #骨 #秘密

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