看板 #毎週ショートショートnote
動物園といえども、来場客の減少には頭を悩ませていた。少子化の影響か、娯楽の多様化か、酷暑と呼ばれたその年の夏は、文字通り、特に酷かった。
ライオンに近づいていけるバスだってあるし、頭上のロープを渡るオランウータンだっているのに。
展示されている動物たちは、実際に暮らしている野生の環境に近づけたり、もぐもぐタイムはお客さんのそばで餌をやる。
映える動物園、なんてツイート、いやXか、もあったけれど、現実はなかなか厳しいものだ。
解決策を見出すべく、私は園内を歩いた。うんうん、今日もみんな元気そうだ。もしかしたら、人間のお客さんよりも動物たちの方が、人間をじっくり観察できているかも知れない。
「大きな声を出さないで」
「フラッシュ撮影禁止」
あれ?
もしかしたら、園内のあちこちにある「注意看板」が、評判悪い?上から目線?
お客様は、神様なのに。
私は気がついた。もっと腰を低くしなくては。お客さんの気分を害してはいけない。また来てもらうために。
「なるべくお静かに」
「なるべく手を出さないで」
「なるべく餌をあげないで」
いつからか「なるべく動物園」と呼ばれるようになった。
そして、来場者は日本一になった。
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