オルガン #毎週ショートショートnote
「苦手な人のつけていた香水が、きっかけです」
学生時代に苦手な教授がいた。その教授が近づいてくると、独特の甘い臭いがして・・いや正直、臭くて・・。香水に興味がなかった私は、当時は知らなかった。あるとき、通りかかったショップで、教授と同じ香りがする店員がいて息が止まるようだった。声をかけ、香水のことを聞いてみると、目を丸くしていた。
店員の母親がパフューマーで、最期に調香した香水をつけているのだという。聞けば、有名なブランドだった。店員は、香りにロゴはつけられないからね、と笑っていたが、嬉しそうだった。
臭いの正体がわかって、香りに変わった。
「私のオルガンに加えておきましょう」
よく、パフューマーの褒め言葉は独特だと笑われる。オルガンとは楽器の名前だけれど、実際にはデスクだ。デスクを埋め尽くすように、階段状の棚に香りのサンプルが並んでいる。円筒形の瓶が何本も、いや数百本近く並んでいるから、その見た目からいつしかオルガンと呼ばれるようになった。
私のオルガンから生まれた香りが、誰かの背中を押せるように。
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