雑談　#毎週ショートショートnote

「やっぱり、君の笑顔それは嘘っぽいんだよなぁ・・もっと自然にできないの？」

もともと笑うのが得意じゃないから、作り笑いばかりだったけれど、いざ演技しろなんて言われても、ずっと演技だったっていうか・・。

「ちょっと休憩！」

近くにあった折りたたみ椅子に腰を下ろす。あの監督、厳しいけど作品できたら評価されんだよねー・・向かいに座った先輩俳優が苦笑いする。笑い方が上手なんだよなぁ。思わず、聞いてしまった。

俺、笑うの苦手なんすよね・・どうしたらいいすかね。

先輩は驚いて、目を丸くしていた。お前、なんでこのギョーカイ入ったんだよ・・。まぁ、そうだな、好きだってことは表情に出るからな。好きな人の前だぞーとか、このあと好きなもん食べるぞーとか、そういう単純なこと考えろ。

え、そういう単純な・・って。先輩は、好きなもの、なんすか？

俺か・・文字の並びが、大好きなんだ・・・トラネキサム酸。恍惚の表情で、虚空を見上げた先輩が答えた。

まさか、おなじ言葉が好きな人がいるなんて。
休憩が終わり、最高の笑顔で席をたった。

（450文字）

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