祝辞 #毎週ショートショートnote
会場である都内の高級ホテルの宴会場には、日本全国の高校から、個性豊かな校長たちが集まっていた。
その数、10人。
日本における高校の数は、およそ4,700校と言われているので、選ばれた校長たちは、想像だにしない栄誉である。
興味深い経歴を持つ者、華々しい実績を積んだ者、改革を推し進めて教育環境をより良くした者、地域に多大な貢献をした者、さまざまな功績を携えた校長たちは一様に朗らかだった。
誰もが、不思議なことに、選ばれた理由を知らされていなかった。定刻になり、ブザーが鳴って、会場の照明が落とされる。壇上に大きなスクリーンが下りてきて、映像が流された。
笑顔の学生が映る。選出された校長たちが勤務している学校の生徒会長たちからのお祝いのビデオメッセージ……では、なかった。
「我が校では、校長の度重なる干渉により、校則の改悪がなされ…」
「生徒会活動の資金を、校長の趣味に使い込まれ…」
いくつものメッセージののち、壇上に上がった司会が、にこやかに告げた。
「ただいまから、黒幕甲子園の決勝戦を始めます!」
(450字)
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